波紋

茉莉花 香乃

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第三章

04

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隣の部屋を見るとベッドがあった。

ドキンと心臓が跳ねた。
キスもしたことないし、男同士の準備もわからない。女の子と付き合ったこともなかった。

でも、ここで…。
そう思うと顔に熱が集まる。布団に潜り込み目を閉じた。


『あんたの母親は本当にロクでもない女だったさ。男をたぶらかして。友だちの車で事故なんかしてさ。焼身自殺なんかして大迷惑なんだよ』

「おい、郁己!起きろ」

夢を見た。ばあさんが母さんを罵倒する夢。

「そんなことない。お母さんはそんな人じゃない。お母さんが悪いんじゃない」
「郁己!」
「えっ?あっ…ここは」

あの人のベッドで寝てしまってた。凄く安心したんだ。これから…って思うとドキドキはしたけど、凄く落ち着けた。それなのに…。

「大丈夫か?」
「俺…」
「夢でも見たのか?送って行くよ」
「俺を買ってくれるんじゃなかったのかよ?」

家には帰りたくないんだ。腕を掴み抱きついた。離れたくない。温もりが欲しい。

「大人ぶったってキスもしたことないガキだろ?」
「じゃあ、教えてくれよ。貴方が…」
「俊一。俺の名前、永岡俊一」
「俊一さん…が教えてくれたら、大人になれる?」
「大人になってどうするんだ?」
「一人で稼いで、一人で生きていく」

あんな家にはいたくない。

俺の居場所なんかない。

「俺には?授業料でも払ってくれるのか?」

別に身体を売って生活したい訳じゃない。
俊一さんの温もりが欲しい。

「出世払いでいい?」
「ちゃんと学校行って勉強しろ!」

ばあさんを見返すために勉強は頑張ってるんだ。

「……誰でも…誰でも良かったんだろ?違う奴に頼め。俺に構うな。リビングに一万円置いてる。それ持って、出て行け」

誰でもいいわけない。
そんな悲しそうな顔しないで欲しい。俊一さんだから。強く抱きしめたまま顔を押し付た。

「…貴方だけだった。俺が公園にいる時、貴方だけが俺を見てくれた」
「俊一だよ」

キスしてくれた。

背中に腕を回し離れないようにする。

「俊一さん」
「郁己」

二度目のキス。俊一さんの舌が唇をなぞる。

「んっ…はぁ…」

緊張で歯を噛み締める。舌が歯に触れた。途端に離れる身体に不安になる。

「…続きは?」
「ここまでだ」

もっと触れたい。

「こんなの俺でもできるよ」
「今日は帰れ」

それって、心配してくれてるのか?
今日は…?明日は来ても良いの?そんな訳ないか…。

「誰も心配しないって言ってるだろ?」
「また、来たらいいから」
「えっ?」

良いの?
俺の心の声が届いたのかと思った。

「ここに、いつでも来たらいいから」
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