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第四章
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郁己と朝食を食べるようになってもう直ぐ一ヶ月が過ぎる。
二週目の朝に鍵を渡した。
会う度に花びらが舞う。
もう無視することができない。
ひらひら落ちる花びらはその度に綺麗な波紋を作る。
それは俺を落ち着けた。
「開けるの邪魔くさいからさ…」と手に鍵を押し付けて言ったけどそうじゃない。
俺のことを一生懸命見てくる一途な瞳に惹かれた。
心に傷を負いながら人の事を思いやることができる素直な子だ。守ってやりたい。俺ができる事はしてやりたいと思った。
家に居たくないと思うなら安心して逃げられる場所を提供したかった。ここに来ることができると思うだけで、気持ちが楽になると思った。
こんなのいらない…そう言って突き返されたらどうしようか?なんて思ったけど、大事そうに制カバンに入れて「キーホルダー買わなきゃ」っていう顔は綻んでた。
良かった。喜んでくれた。早過ぎかとも思ったんだ。一週間で、なんて。でも、もうちょっと時間をかけて考えてもきっと気持ちは変わらないと思ったから、それなら早い方が良いだろ?
バイトがあるからか夜に来たことはない。土日も遠慮してか、用事があるのか来ることはなかった。
朝の一時間弱の時間では食べるのが先であまり会話はない。それでも少しずつお互いのことを話した。
郁己は学校での様子を、まるで母親に話すようにたわいもない話をする。夢中で話し続け、慌ててサンドイッチをコーヒーで流し込むなんてことも一度や二度ではなかった。
楽しそうに話すのを見ていると、こっちまで明るい気分になる。朝ごはんは食べる方が良いと聞くことはあったけど、別にどうでも良かった。食べても食べなくっても関係ないと思ってた。きっと、こんなふうに笑顔と会話の溢れる食卓なら食べた方がいいんだろうなと改めて思った。
家族の話はほとんどしない。母親は死んだと小さな声で言った。寝ぼけた時の悲痛な叫びが辛い。
コーヒーをブラックで飲めない郁己のために牛乳を常備するようになった。コーヒーフレッシュは嫌いだ。毎日コーヒーも嫌かと思い紅茶も買った。
自分のマグカップと箸を百均で買ったと持ってきた時、一緒に買いに行きたかったなと思った。
俺もそうだけど、郁己はなんでも自分で決めて、さっさと行動する。それはきっと相談する必要がないと言うより相談する相手がいなかったんだ。
自分のことは自分で決める。
当たり前のことだけど高校生ではなかなかできないだろう。例えば、レストランでメニューさえあれこれ迷って結局親にこれは?と聞かれてじゃあそれで…そんな会話を隣のテーブルで聞いた事もある。
郁己は違う。きっと進路さえ自分で…誰に相談することなく決めてしまうんだろう。俺には…俺には相談してくれるだろうか?
土曜の朝に電話をした。
「おはよう」
『俊一さん、おはよう。珍しいね』
俺からはあまり連絡はしなかった。朝は必ず来るし、郁己には郁己の時間がある。でも、もう少し俺ともその時間を一緒に過ごしてくれないだろうか?
「今日もバイトか?」
『うん』
「夜か?」
『そうだけど…何?』
「昼は空いてる?」
『うん』
「お昼一緒にどうかなって思って」
『えっ…ほんと?嬉しい』
今日はまだ家にいるのか、電話の奥は静かだった。
公園で待ち合わせた。外で会ったことはない。
二週目の朝に鍵を渡した。
会う度に花びらが舞う。
もう無視することができない。
ひらひら落ちる花びらはその度に綺麗な波紋を作る。
それは俺を落ち着けた。
「開けるの邪魔くさいからさ…」と手に鍵を押し付けて言ったけどそうじゃない。
俺のことを一生懸命見てくる一途な瞳に惹かれた。
心に傷を負いながら人の事を思いやることができる素直な子だ。守ってやりたい。俺ができる事はしてやりたいと思った。
家に居たくないと思うなら安心して逃げられる場所を提供したかった。ここに来ることができると思うだけで、気持ちが楽になると思った。
こんなのいらない…そう言って突き返されたらどうしようか?なんて思ったけど、大事そうに制カバンに入れて「キーホルダー買わなきゃ」っていう顔は綻んでた。
良かった。喜んでくれた。早過ぎかとも思ったんだ。一週間で、なんて。でも、もうちょっと時間をかけて考えてもきっと気持ちは変わらないと思ったから、それなら早い方が良いだろ?
バイトがあるからか夜に来たことはない。土日も遠慮してか、用事があるのか来ることはなかった。
朝の一時間弱の時間では食べるのが先であまり会話はない。それでも少しずつお互いのことを話した。
郁己は学校での様子を、まるで母親に話すようにたわいもない話をする。夢中で話し続け、慌ててサンドイッチをコーヒーで流し込むなんてことも一度や二度ではなかった。
楽しそうに話すのを見ていると、こっちまで明るい気分になる。朝ごはんは食べる方が良いと聞くことはあったけど、別にどうでも良かった。食べても食べなくっても関係ないと思ってた。きっと、こんなふうに笑顔と会話の溢れる食卓なら食べた方がいいんだろうなと改めて思った。
家族の話はほとんどしない。母親は死んだと小さな声で言った。寝ぼけた時の悲痛な叫びが辛い。
コーヒーをブラックで飲めない郁己のために牛乳を常備するようになった。コーヒーフレッシュは嫌いだ。毎日コーヒーも嫌かと思い紅茶も買った。
自分のマグカップと箸を百均で買ったと持ってきた時、一緒に買いに行きたかったなと思った。
俺もそうだけど、郁己はなんでも自分で決めて、さっさと行動する。それはきっと相談する必要がないと言うより相談する相手がいなかったんだ。
自分のことは自分で決める。
当たり前のことだけど高校生ではなかなかできないだろう。例えば、レストランでメニューさえあれこれ迷って結局親にこれは?と聞かれてじゃあそれで…そんな会話を隣のテーブルで聞いた事もある。
郁己は違う。きっと進路さえ自分で…誰に相談することなく決めてしまうんだろう。俺には…俺には相談してくれるだろうか?
土曜の朝に電話をした。
「おはよう」
『俊一さん、おはよう。珍しいね』
俺からはあまり連絡はしなかった。朝は必ず来るし、郁己には郁己の時間がある。でも、もう少し俺ともその時間を一緒に過ごしてくれないだろうか?
「今日もバイトか?」
『うん』
「夜か?」
『そうだけど…何?』
「昼は空いてる?」
『うん』
「お昼一緒にどうかなって思って」
『えっ…ほんと?嬉しい』
今日はまだ家にいるのか、電話の奥は静かだった。
公園で待ち合わせた。外で会ったことはない。
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