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第五章
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二人で映画館に来たのは初めてだった。
暗闇の中で手を繋ぐのはドキドキした。暗闇とマフラーに隠れて隣の人には見えないところで繋がる手。
指先で俺の掌に円を描いたり、指を絡めたりする。
二人きりの部屋の中では普通に出来ることだけど、わざわざ外で繋がなくてもって思うけどいつでも触れていたい。
…いけないことをしている感じがドキドキ感を更に増していく。
男二人が横に並んでても誰も気にしないだろう。一人で観に来たか、俺たちの年齢差だと兄弟とか、叔父と甥。
「…郁己」
小さな声で呼ばれた。
映画はそろそろ終わる。
「俊、何?」
「愛してるよ…お昼は何食べる?」
誰にも聞こえないように俺の耳元で囁く。
それ、今要る?
一気に顔に熱が集まり映画に集中できない。あと少しで終わるのにどんな結末かわからなくなる。
映画は面白かった。
最後は全然集中出来なかったけど。
涼しい顔で隣に立ち、俺を見下ろす。
「寒くない?マフラー貸してやるよ」
外に出ると冷たい風が髪を踊らせる。首が寒く見えたのかな。
映画館の中で繋いだ二人の手を隠していたマフラーは今、俺の首を北風から隠すように巻かれた。
「えっ?いいよ。俊一さんが寒いだろ?」
「全然平気。行こっか?」
かっこいい。何さらりとキザなことをしてくれるの?
何度か一緒に来たことのある定食屋さんでお昼を食べた。友だちとならこんな渋いお店には入らないだろう。夜にはお酒も出すみたいで、一品料理も品数が多かった。
俺がお酒の飲める年になったらここで一緒に飲みたいな…。
少し買い物をしてマンションへ帰った。
冬休みのほとんどを俊一さんと過ごした。泊まったのはあの日だけ。必ず帰れと言うんだ。構わないのにさ…。
俊一さんの仕事の日には、バイトの時間を昼に変えられる時は変えてもらった。毎日は無理でも、少しだけでも一緒にいたい。
家にはおじいちゃんの顔を見るために渋々帰った。出かける時に部屋を覗くと、いつもと変わらない寝顔だった。
「行ってきます」
返事はないけど、頬がピクリと動きまるで「ああ、行っといで」と優しく送り出される気がする。
俊一さんの居ないマンションに入るのは慣れない。
『今日は少し遅くなるから来るなら先に部屋入ってて』
そんな連絡が来たのはバイトが無い日の昼休み。最初の頃なら『今日は遅くなるから…ごめんな』だった。これはもう来るなと暗に言ってる。でも、今は違う。そのメッセージの裏には『部屋で待ってて』って意味があると思う。
俊一さんは俺が一人で外で待つのを嫌がる。今は寒さもあるだろうけど、違う心配をするんだ。誰も襲わないさ!誰が見ても男子高校生だ。でも、心配されるのはこそばゆいけど、嬉しい。
「何、ニヤニヤしてんの?」
「えっ…ニヤニヤなんてしてないよ」
携帯を見ていたらいきなり声をかけられた。ニヤニヤしてたかも…。俊一さんからの連絡はあまり無い。あっても必要事項だけの簡素なものだ。でも、最初の頃に比べたら少し俺に対する感情が変わってると思うんだ。ぐふっ…これは嬉しいよね。
暗闇の中で手を繋ぐのはドキドキした。暗闇とマフラーに隠れて隣の人には見えないところで繋がる手。
指先で俺の掌に円を描いたり、指を絡めたりする。
二人きりの部屋の中では普通に出来ることだけど、わざわざ外で繋がなくてもって思うけどいつでも触れていたい。
…いけないことをしている感じがドキドキ感を更に増していく。
男二人が横に並んでても誰も気にしないだろう。一人で観に来たか、俺たちの年齢差だと兄弟とか、叔父と甥。
「…郁己」
小さな声で呼ばれた。
映画はそろそろ終わる。
「俊、何?」
「愛してるよ…お昼は何食べる?」
誰にも聞こえないように俺の耳元で囁く。
それ、今要る?
一気に顔に熱が集まり映画に集中できない。あと少しで終わるのにどんな結末かわからなくなる。
映画は面白かった。
最後は全然集中出来なかったけど。
涼しい顔で隣に立ち、俺を見下ろす。
「寒くない?マフラー貸してやるよ」
外に出ると冷たい風が髪を踊らせる。首が寒く見えたのかな。
映画館の中で繋いだ二人の手を隠していたマフラーは今、俺の首を北風から隠すように巻かれた。
「えっ?いいよ。俊一さんが寒いだろ?」
「全然平気。行こっか?」
かっこいい。何さらりとキザなことをしてくれるの?
何度か一緒に来たことのある定食屋さんでお昼を食べた。友だちとならこんな渋いお店には入らないだろう。夜にはお酒も出すみたいで、一品料理も品数が多かった。
俺がお酒の飲める年になったらここで一緒に飲みたいな…。
少し買い物をしてマンションへ帰った。
冬休みのほとんどを俊一さんと過ごした。泊まったのはあの日だけ。必ず帰れと言うんだ。構わないのにさ…。
俊一さんの仕事の日には、バイトの時間を昼に変えられる時は変えてもらった。毎日は無理でも、少しだけでも一緒にいたい。
家にはおじいちゃんの顔を見るために渋々帰った。出かける時に部屋を覗くと、いつもと変わらない寝顔だった。
「行ってきます」
返事はないけど、頬がピクリと動きまるで「ああ、行っといで」と優しく送り出される気がする。
俊一さんの居ないマンションに入るのは慣れない。
『今日は少し遅くなるから来るなら先に部屋入ってて』
そんな連絡が来たのはバイトが無い日の昼休み。最初の頃なら『今日は遅くなるから…ごめんな』だった。これはもう来るなと暗に言ってる。でも、今は違う。そのメッセージの裏には『部屋で待ってて』って意味があると思う。
俊一さんは俺が一人で外で待つのを嫌がる。今は寒さもあるだろうけど、違う心配をするんだ。誰も襲わないさ!誰が見ても男子高校生だ。でも、心配されるのはこそばゆいけど、嬉しい。
「何、ニヤニヤしてんの?」
「えっ…ニヤニヤなんてしてないよ」
携帯を見ていたらいきなり声をかけられた。ニヤニヤしてたかも…。俊一さんからの連絡はあまり無い。あっても必要事項だけの簡素なものだ。でも、最初の頃に比べたら少し俺に対する感情が変わってると思うんだ。ぐふっ…これは嬉しいよね。
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