波紋

茉莉花 香乃

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第七章

01

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「俊一さん、起きて!遅刻するよ」
「んっ?郁己、おはよう」

郁己だ!と頭の中で繰り返す。

帰ってきてくれた。
俺のとこに。

「郁己、愛してるよ」

起こそうと頑張ってる郁己の腰をがっちりホールドして、ベッドへ倒す。

「ちょ、俊…寝ぼけてるの?月曜日ですよー」
「もうちょっと…」

もうちょっと…寝たいわけじゃない。もうちょっと…郁己を抱きしめてたいんだ。

俺がこんなに何かに依存?執着?したことはなかった。郁己だけ。俺がおかしくなるのは郁己の事だけなんだ。

あの衝撃の手紙を受け取り一年。俺は頑張った。まあ、実際に何をした訳じゃない。郁己と食べる前は朝食を食べてなかったけど、一人になってもちゃんと食べた。食べない日もあったけど、郁己を思い出してサラダは食べた。あたふたしながら水切りするのを思い出し、人が見てたら気持ち悪いと思われるだろうけど、知らずと笑ってしまう。でも、そこに郁己がいないのを実感して寂しくなるんだ。

何度探しに行こうと思ったか。大野くんに、もし連絡があったら些細なことでもいいから教えて欲しいとお願いしておいた。大野くんは二、三ヶ月に一度連絡をくれた。

元気にしてるみたい。
勉強頑張ってるみたい。

…みたい、とは大野くんもメッセージが送られてくるだけで、電話はなかった。

きっと、俺が学校に行ったかとか聞きたくなかったんだ。『来てないから、手紙渡してない』と聞きたくなかったんだ。きっと…。

郁己がいない間に拓真に会いに行った。

手紙の中の『拓真の代わり』という言葉は衝撃だった。拓真と言う名の義理の弟が居ると言ったことはあったけど、郁己は違う捉え方をしていた。

俺の気持ちがかつて拓真を恋しいと思っていたことに気付いてたのか?

俺は何か失敗していたのか?

それを問いただすこともなく、受け入れてくれていた。きっと傷付けてしまった。

久しぶりに会うと、今までとは違い弟としてみていることに驚いた。郁己を愛して、郁己には感じた愛しい気持ちが拓真には違うものだとはっきりした。

拓真は結婚を考えてる恋人がいるんだと嬉しそうに話す。結婚式には絶対来てねと写真を見せてくれた。可愛らしい笑顔で写ってる。

親父と義母さんは、俺が家を出てから直ぐにギクシャクし出したらしい。義母さんはやはり俺の事を結婚直前まで聞かされてなく、親父を信用できないと喧嘩ばかりし出したらしい。
…知らなかった。
拓真はそんな二人を見て、怒ったそうだ。兄さんが寂しい思いをしていたのは喧嘩別れするためなのか?と。兄さんが可哀想だ。こんなことで喧嘩したことも許せない。こんな喧嘩をしていたことも兄さんには黙っていた方が良い…と。

話し合って今は仲良く二人で暮らしている。今度一緒に行こうと誘われた。義母さんが会いたがっていると言う。親父は素直じゃない。子どものようなところがある。だから、俺を…小さい頃の俺を持て余してたんだ。

きっと会いたがってるよ、と拓真は言った。
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