28 / 378
work!
3
しおりを挟む
春さんの遠い目をうっとり見ていたら式のことを思い出した。
あれから式は数回だけバイトまでの道だったり、バイトからの帰り道だったりと送ってくれたことがあった。ぴったり張り付くのかと思いきや、思わぬタイミングで現れ、さらっとじゃあな、の一言で帰っていく。
「お前らの家が隣同士なの、送るの楽だけどなんか怖いわ」
と唯一彼が眉をひそめた点である。いいじゃんねえ仲良しで。
赤羽さんもいるみたいだけど一回も見たことがない。どうやっておれたち守られてるの?シフト制なの?と式に聞いても真顔で企業秘密と言われた。
彼らは忍者の素質もあるのかもしれない。
「うーん、それにしても先輩に会えない……」
「うわ、唯が彼女化してきた……いや、もともと女の子寄りだからいまさらか?」
メニュー片手にしょんぼりすれば秋にすぐからかわれた。言い返そうとすると入口のドアがベルを鳴らす。カウンターに向いていた身体をくるりと反転させて笑顔でお客様を迎えるのはもう体に馴染んだ所作だ。
「いらっしゃいませ。何名様でしょ…………う…………」
笑顔のまま表情が動かせなくて、ただ目の前の人を見つめてしまう。店員失格なんて言わないでくれ。だってしょうがないんだ。
「よお、楽しそうだな唯斗」
未だ聞きなれない低音ボイス。それでも聞き逃す事はない。驚いて持っていたメニューを落としそうだった。
「な、なんで……」
サングラスにファーのマフラー。黒のロングコートにスキニーパンツ。足元はさりげなく踵にスタッズがついたローファー。シンプルの中にデザインが組み込まれていて最高にオシャレだ。これがおれの彼氏かと思うとめまいがするほど痺れてしまう。獅之宮氷怜はサングラスを、ずらして不敵に笑う。
「なんだかバイトが楽しそうだったからね」
「そーよー、お客様なんだから構ってよね~~」
獅之宮先輩に続いて、手をひらひら振りながら天音舵先輩と豹原先輩が入ってきた。
天音蛇先輩は足首丈のトレンチコートに白のハイネックニット。タイトジーンズにゴツめのスポーツスニーカー。
豹原先輩はビックサイズのMA-1の下に膝丈のロングワイシャツ。黒スキニージーンズに革のショートブーツ。
ちらりとブランド物がしのばせてあって、痺れるほど最高にオシャレだ。なんの文句も付けられないほど似合っている。そもそも似合わないものなんてないのかもしれないが空いた口が塞がらないと言うのはこう言う時に言うんだろう。カフェの入り口だけ時が止まったように浮いている。おれはポケットに入れていたスマホを取り出しすぐさま写真に保存した。
「待ち受けにします!」
「唯、お前ってやつは……」
「優夜くんこんにちは」
「いらっしゃいませ。先輩」
いつのまにか優が後ろに来ていてため息をつかれる。なんだよ相変わらずクールに落ち着いちゃって。天音蛇先輩が綺麗に挨拶していた。先輩はおれがドキドキしちゃう甘ーい視線だが優は仕事仕事といつも通りのパターン。さすがだな。
でも優だって写メ欲しいくせに、あとで送ってやんないぞ。
もたつくおれ等に秋がどうした?とキッチンから顔を出す。
「うわ、え、先輩なんでここに」
「チャオ~~アッキー」
ガバリと豹原先輩に羽交い締めにされた秋は苦しいと叫んでプハ!と首をだした。秋の目の前に写メを見せてあげれば、クソカッケェ!と反応してくれる。さすが秋わかってるう。
「はい。終わり。唯早く先輩達案内してあげて」
「イエッサー!」
流石におれも店内の騒ぎには気づく。優は急いでカウンターに戻り会計へまわった。この小さなカフェではあまりにも目立ちすぎる先輩達。異質な3人に店内の女の子たちがざわめき始めてる。個室なんてないので、せめて後ろ姿だけになれば時間とともに落ち着きを取り戻すはずだ、と考えたおれは先輩達を案内する。
「えっと、カウンターへどうぞ!」
「随分と賑わってるな」
「それが、最近雑誌に載ったんですよ~」
「へぇ、それでか。……唯斗、お前そういう格好も似合うな」
「え!これおれらが選んだですよ~やった~」
嬉しくてくるりと回って見せたら、似合ってるといわれ、頭をポンと撫でられた。心臓きゅんときたわ。
獅之宮先輩の言う格好とは今着ているここの制服だ。春さんはやはり優しいので制服まで好きにさせてもらえる。そこでおれ達は季節毎にあった服にしようと言うことになり、今季の冬は黒のワイシャツにエプロンだ。女の子が喜ぶので腕まくりを忘れずに。
浮かれていたら早くも優が先輩達に注文を取っていた。
「オレねーロイヤルミルクティ~。あっまいのがイーナ」
「んーダージリンティーにしようかな」
「ブラックコーヒー頼む」
わかりやすく分かれた好みに納得しながら、名残惜しくもおれは他のお客様のオーダーを取りに行く。まだまだ人が減ることはない。
あれから式は数回だけバイトまでの道だったり、バイトからの帰り道だったりと送ってくれたことがあった。ぴったり張り付くのかと思いきや、思わぬタイミングで現れ、さらっとじゃあな、の一言で帰っていく。
「お前らの家が隣同士なの、送るの楽だけどなんか怖いわ」
と唯一彼が眉をひそめた点である。いいじゃんねえ仲良しで。
赤羽さんもいるみたいだけど一回も見たことがない。どうやっておれたち守られてるの?シフト制なの?と式に聞いても真顔で企業秘密と言われた。
彼らは忍者の素質もあるのかもしれない。
「うーん、それにしても先輩に会えない……」
「うわ、唯が彼女化してきた……いや、もともと女の子寄りだからいまさらか?」
メニュー片手にしょんぼりすれば秋にすぐからかわれた。言い返そうとすると入口のドアがベルを鳴らす。カウンターに向いていた身体をくるりと反転させて笑顔でお客様を迎えるのはもう体に馴染んだ所作だ。
「いらっしゃいませ。何名様でしょ…………う…………」
笑顔のまま表情が動かせなくて、ただ目の前の人を見つめてしまう。店員失格なんて言わないでくれ。だってしょうがないんだ。
「よお、楽しそうだな唯斗」
未だ聞きなれない低音ボイス。それでも聞き逃す事はない。驚いて持っていたメニューを落としそうだった。
「な、なんで……」
サングラスにファーのマフラー。黒のロングコートにスキニーパンツ。足元はさりげなく踵にスタッズがついたローファー。シンプルの中にデザインが組み込まれていて最高にオシャレだ。これがおれの彼氏かと思うとめまいがするほど痺れてしまう。獅之宮氷怜はサングラスを、ずらして不敵に笑う。
「なんだかバイトが楽しそうだったからね」
「そーよー、お客様なんだから構ってよね~~」
獅之宮先輩に続いて、手をひらひら振りながら天音舵先輩と豹原先輩が入ってきた。
天音蛇先輩は足首丈のトレンチコートに白のハイネックニット。タイトジーンズにゴツめのスポーツスニーカー。
豹原先輩はビックサイズのMA-1の下に膝丈のロングワイシャツ。黒スキニージーンズに革のショートブーツ。
ちらりとブランド物がしのばせてあって、痺れるほど最高にオシャレだ。なんの文句も付けられないほど似合っている。そもそも似合わないものなんてないのかもしれないが空いた口が塞がらないと言うのはこう言う時に言うんだろう。カフェの入り口だけ時が止まったように浮いている。おれはポケットに入れていたスマホを取り出しすぐさま写真に保存した。
「待ち受けにします!」
「唯、お前ってやつは……」
「優夜くんこんにちは」
「いらっしゃいませ。先輩」
いつのまにか優が後ろに来ていてため息をつかれる。なんだよ相変わらずクールに落ち着いちゃって。天音蛇先輩が綺麗に挨拶していた。先輩はおれがドキドキしちゃう甘ーい視線だが優は仕事仕事といつも通りのパターン。さすがだな。
でも優だって写メ欲しいくせに、あとで送ってやんないぞ。
もたつくおれ等に秋がどうした?とキッチンから顔を出す。
「うわ、え、先輩なんでここに」
「チャオ~~アッキー」
ガバリと豹原先輩に羽交い締めにされた秋は苦しいと叫んでプハ!と首をだした。秋の目の前に写メを見せてあげれば、クソカッケェ!と反応してくれる。さすが秋わかってるう。
「はい。終わり。唯早く先輩達案内してあげて」
「イエッサー!」
流石におれも店内の騒ぎには気づく。優は急いでカウンターに戻り会計へまわった。この小さなカフェではあまりにも目立ちすぎる先輩達。異質な3人に店内の女の子たちがざわめき始めてる。個室なんてないので、せめて後ろ姿だけになれば時間とともに落ち着きを取り戻すはずだ、と考えたおれは先輩達を案内する。
「えっと、カウンターへどうぞ!」
「随分と賑わってるな」
「それが、最近雑誌に載ったんですよ~」
「へぇ、それでか。……唯斗、お前そういう格好も似合うな」
「え!これおれらが選んだですよ~やった~」
嬉しくてくるりと回って見せたら、似合ってるといわれ、頭をポンと撫でられた。心臓きゅんときたわ。
獅之宮先輩の言う格好とは今着ているここの制服だ。春さんはやはり優しいので制服まで好きにさせてもらえる。そこでおれ達は季節毎にあった服にしようと言うことになり、今季の冬は黒のワイシャツにエプロンだ。女の子が喜ぶので腕まくりを忘れずに。
浮かれていたら早くも優が先輩達に注文を取っていた。
「オレねーロイヤルミルクティ~。あっまいのがイーナ」
「んーダージリンティーにしようかな」
「ブラックコーヒー頼む」
わかりやすく分かれた好みに納得しながら、名残惜しくもおれは他のお客様のオーダーを取りに行く。まだまだ人が減ることはない。
56
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる