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work!
3
春さんの遠い目をうっとり見ていたら式のことを思い出した。
あれから式は数回だけバイトまでの道だったり、バイトからの帰り道だったりと送ってくれたことがあった。ぴったり張り付くのかと思いきや、思わぬタイミングで現れ、さらっとじゃあな、の一言で帰っていく。
「お前らの家が隣同士なの、送るの楽だけどなんか怖いわ」
と唯一彼が眉をひそめた点である。いいじゃんねえ仲良しで。
赤羽さんもいるみたいだけど一回も見たことがない。どうやっておれたち守られてるの?シフト制なの?と式に聞いても真顔で企業秘密と言われた。
彼らは忍者の素質もあるのかもしれない。
「うーん、それにしても先輩に会えない……」
「うわ、唯が彼女化してきた……いや、もともと女の子寄りだからいまさらか?」
メニュー片手にしょんぼりすれば秋にすぐからかわれた。言い返そうとすると入口のドアがベルを鳴らす。カウンターに向いていた身体をくるりと反転させて笑顔でお客様を迎えるのはもう体に馴染んだ所作だ。
「いらっしゃいませ。何名様でしょ…………う…………」
笑顔のまま表情が動かせなくて、ただ目の前の人を見つめてしまう。店員失格なんて言わないでくれ。だってしょうがないんだ。
「よお、楽しそうだな唯斗」
未だ聞きなれない低音ボイス。それでも聞き逃す事はない。驚いて持っていたメニューを落としそうだった。
「な、なんで……」
サングラスにファーのマフラー。黒のロングコートにスキニーパンツ。足元はさりげなく踵にスタッズがついたローファー。シンプルの中にデザインが組み込まれていて最高にオシャレだ。これがおれの彼氏かと思うとめまいがするほど痺れてしまう。獅之宮氷怜はサングラスを、ずらして不敵に笑う。
「なんだかバイトが楽しそうだったからね」
「そーよー、お客様なんだから構ってよね~~」
獅之宮先輩に続いて、手をひらひら振りながら天音舵先輩と豹原先輩が入ってきた。
天音蛇先輩は足首丈のトレンチコートに白のハイネックニット。タイトジーンズにゴツめのスポーツスニーカー。
豹原先輩はビックサイズのMA-1の下に膝丈のロングワイシャツ。黒スキニージーンズに革のショートブーツ。
ちらりとブランド物がしのばせてあって、痺れるほど最高にオシャレだ。なんの文句も付けられないほど似合っている。そもそも似合わないものなんてないのかもしれないが空いた口が塞がらないと言うのはこう言う時に言うんだろう。カフェの入り口だけ時が止まったように浮いている。おれはポケットに入れていたスマホを取り出しすぐさま写真に保存した。
「待ち受けにします!」
「唯、お前ってやつは……」
「優夜くんこんにちは」
「いらっしゃいませ。先輩」
いつのまにか優が後ろに来ていてため息をつかれる。なんだよ相変わらずクールに落ち着いちゃって。天音蛇先輩が綺麗に挨拶していた。先輩はおれがドキドキしちゃう甘ーい視線だが優は仕事仕事といつも通りのパターン。さすがだな。
でも優だって写メ欲しいくせに、あとで送ってやんないぞ。
もたつくおれ等に秋がどうした?とキッチンから顔を出す。
「うわ、え、先輩なんでここに」
「チャオ~~アッキー」
ガバリと豹原先輩に羽交い締めにされた秋は苦しいと叫んでプハ!と首をだした。秋の目の前に写メを見せてあげれば、クソカッケェ!と反応してくれる。さすが秋わかってるう。
「はい。終わり。唯早く先輩達案内してあげて」
「イエッサー!」
流石におれも店内の騒ぎには気づく。優は急いでカウンターに戻り会計へまわった。この小さなカフェではあまりにも目立ちすぎる先輩達。異質な3人に店内の女の子たちがざわめき始めてる。個室なんてないので、せめて後ろ姿だけになれば時間とともに落ち着きを取り戻すはずだ、と考えたおれは先輩達を案内する。
「えっと、カウンターへどうぞ!」
「随分と賑わってるな」
「それが、最近雑誌に載ったんですよ~」
「へぇ、それでか。……唯斗、お前そういう格好も似合うな」
「え!これおれらが選んだですよ~やった~」
嬉しくてくるりと回って見せたら、似合ってるといわれ、頭をポンと撫でられた。心臓きゅんときたわ。
獅之宮先輩の言う格好とは今着ているここの制服だ。春さんはやはり優しいので制服まで好きにさせてもらえる。そこでおれ達は季節毎にあった服にしようと言うことになり、今季の冬は黒のワイシャツにエプロンだ。女の子が喜ぶので腕まくりを忘れずに。
浮かれていたら早くも優が先輩達に注文を取っていた。
「オレねーロイヤルミルクティ~。あっまいのがイーナ」
「んーダージリンティーにしようかな」
「ブラックコーヒー頼む」
わかりやすく分かれた好みに納得しながら、名残惜しくもおれは他のお客様のオーダーを取りに行く。まだまだ人が減ることはない。
あれから式は数回だけバイトまでの道だったり、バイトからの帰り道だったりと送ってくれたことがあった。ぴったり張り付くのかと思いきや、思わぬタイミングで現れ、さらっとじゃあな、の一言で帰っていく。
「お前らの家が隣同士なの、送るの楽だけどなんか怖いわ」
と唯一彼が眉をひそめた点である。いいじゃんねえ仲良しで。
赤羽さんもいるみたいだけど一回も見たことがない。どうやっておれたち守られてるの?シフト制なの?と式に聞いても真顔で企業秘密と言われた。
彼らは忍者の素質もあるのかもしれない。
「うーん、それにしても先輩に会えない……」
「うわ、唯が彼女化してきた……いや、もともと女の子寄りだからいまさらか?」
メニュー片手にしょんぼりすれば秋にすぐからかわれた。言い返そうとすると入口のドアがベルを鳴らす。カウンターに向いていた身体をくるりと反転させて笑顔でお客様を迎えるのはもう体に馴染んだ所作だ。
「いらっしゃいませ。何名様でしょ…………う…………」
笑顔のまま表情が動かせなくて、ただ目の前の人を見つめてしまう。店員失格なんて言わないでくれ。だってしょうがないんだ。
「よお、楽しそうだな唯斗」
未だ聞きなれない低音ボイス。それでも聞き逃す事はない。驚いて持っていたメニューを落としそうだった。
「な、なんで……」
サングラスにファーのマフラー。黒のロングコートにスキニーパンツ。足元はさりげなく踵にスタッズがついたローファー。シンプルの中にデザインが組み込まれていて最高にオシャレだ。これがおれの彼氏かと思うとめまいがするほど痺れてしまう。獅之宮氷怜はサングラスを、ずらして不敵に笑う。
「なんだかバイトが楽しそうだったからね」
「そーよー、お客様なんだから構ってよね~~」
獅之宮先輩に続いて、手をひらひら振りながら天音舵先輩と豹原先輩が入ってきた。
天音蛇先輩は足首丈のトレンチコートに白のハイネックニット。タイトジーンズにゴツめのスポーツスニーカー。
豹原先輩はビックサイズのMA-1の下に膝丈のロングワイシャツ。黒スキニージーンズに革のショートブーツ。
ちらりとブランド物がしのばせてあって、痺れるほど最高にオシャレだ。なんの文句も付けられないほど似合っている。そもそも似合わないものなんてないのかもしれないが空いた口が塞がらないと言うのはこう言う時に言うんだろう。カフェの入り口だけ時が止まったように浮いている。おれはポケットに入れていたスマホを取り出しすぐさま写真に保存した。
「待ち受けにします!」
「唯、お前ってやつは……」
「優夜くんこんにちは」
「いらっしゃいませ。先輩」
いつのまにか優が後ろに来ていてため息をつかれる。なんだよ相変わらずクールに落ち着いちゃって。天音蛇先輩が綺麗に挨拶していた。先輩はおれがドキドキしちゃう甘ーい視線だが優は仕事仕事といつも通りのパターン。さすがだな。
でも優だって写メ欲しいくせに、あとで送ってやんないぞ。
もたつくおれ等に秋がどうした?とキッチンから顔を出す。
「うわ、え、先輩なんでここに」
「チャオ~~アッキー」
ガバリと豹原先輩に羽交い締めにされた秋は苦しいと叫んでプハ!と首をだした。秋の目の前に写メを見せてあげれば、クソカッケェ!と反応してくれる。さすが秋わかってるう。
「はい。終わり。唯早く先輩達案内してあげて」
「イエッサー!」
流石におれも店内の騒ぎには気づく。優は急いでカウンターに戻り会計へまわった。この小さなカフェではあまりにも目立ちすぎる先輩達。異質な3人に店内の女の子たちがざわめき始めてる。個室なんてないので、せめて後ろ姿だけになれば時間とともに落ち着きを取り戻すはずだ、と考えたおれは先輩達を案内する。
「えっと、カウンターへどうぞ!」
「随分と賑わってるな」
「それが、最近雑誌に載ったんですよ~」
「へぇ、それでか。……唯斗、お前そういう格好も似合うな」
「え!これおれらが選んだですよ~やった~」
嬉しくてくるりと回って見せたら、似合ってるといわれ、頭をポンと撫でられた。心臓きゅんときたわ。
獅之宮先輩の言う格好とは今着ているここの制服だ。春さんはやはり優しいので制服まで好きにさせてもらえる。そこでおれ達は季節毎にあった服にしようと言うことになり、今季の冬は黒のワイシャツにエプロンだ。女の子が喜ぶので腕まくりを忘れずに。
浮かれていたら早くも優が先輩達に注文を取っていた。
「オレねーロイヤルミルクティ~。あっまいのがイーナ」
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わかりやすく分かれた好みに納得しながら、名残惜しくもおれは他のお客様のオーダーを取りに行く。まだまだ人が減ることはない。
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