sweet!!

仔犬

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Peace!

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幸せなデートを終え、遅刻しながらも着替えて学校に登校。車で学校まで送ってくれた先輩達が優雅にそのまま帰宅するというのでおれたちは流石にブーイング。

それならおれたちも休んじゃえば良かったと言えば氷怜先輩に痛くないデコピンをくらった。

「だめ」

その二文字にどんだけの色気詰めるんですかと呆気にとられひらりとかわされてしまったのだ。ずるい。

帰りに桃花と式を迎えに行かせるとだけメッセージをもらったのでクラブに向かう予定が決まった。

放課後になりクラブに行く前に式が部活で用事があるというので秋と優がそれを待ち、早めに着いた桃花との約束を果たすために学校近くの公園に来ていた。一人分しか作ってないし先に食べちゃおうということになった。


備え付けのベンチとテーブルの上に丸いお弁当箱。
桃花は少食らしいので女の子サイズだ。

「はい、桃花。卵焼きね」

「わあ!ありがとうございます!」


超喜んでくれる桃花だがすでに約束を忘れられている。ガクッと足から力が抜けてしまったが気を取り直して桃花の箸がお弁当に着く前に取り上げる。

「敬語!」

「あ……」

すっかり忘れていた顔をした桃花は困った顔をする。しかもお弁当に視線がいってしょんぼり。桃花がだいぶ表情が豊かになってきてからおれは耳が見えてくるようになった。今日はうさぎだな。

「そんな顔しなくてもおれに敬語取れっていったのと同じなのにー」

「あれは付き人としては自信があるというか……」

「ええ、おれも式みたいに気軽な感じが嬉しいなぁ」

「う……」


意外とこれに関しては頑固なのかいい返事がなかなか貰えない。そして時間が経つにつれ耳がどんどん垂れていく気がした。

「い、いじめてる気分……じゃあさ、1日3回から始めよ?」

「3回?」

「1日3回だけはどんな言葉でもいいから敬語をとる」

「それは……」

もう一度お弁当を桃花の前に置くと一回だけ黒い瞳を迷わせる。背が高いのに猫背で小さくなって、そしてついにおれをみた桃花の口が遠慮がちに薄く開いた。


「お弁当ありがとう……」


すぐに1回目です!と付け足された。
ちょっと上目遣いの言葉にこちらが恥ずかしくなってしまうほど可愛い。
これだからイケメンは心臓に悪いよねぇ。

「桃花って小動物的な可愛さがあるよね……」

「……可愛いのは唯斗さんですけど」

なぜかむくれてしまった桃花に首をかしげながらもサービスにお茶も渡してずいっとお弁当を前に出す。

「そうかなぁ、まあ、ほらほら食べて!」

「はい!」


にこにこと食べ始める桃花は卵焼きを一直線に選んだ。桃花好きなものを1番に食べるタイプなんだ。
卵焼きだから肉じゃがとシャケを焼いてお浸しと言う超和食お弁当。
卵焼きを口に入れた桃花が幸せそうで何より。

「美味しい?普通の和食あんまり得意じゃないんだけど……」

「美味しいです!これで得意じゃないって……むしろなにが得意なんですか?」

「女の子が思わずSNSに投稿したくなる感じのやつかなぁ」

「……それはそれですごいですよ」


おれはそんな桃花にお土産をつけてあげた。公園にいるしお散歩みたいで可愛い。黒くて長毛の可愛い子。ギョッとした桃花が思わず頭を触る。

「何ですかこれ……」

「ボーダーコリー!」

「ぼ……え?」


犬耳をつけた桃花が珍妙な顔をした。
式にも買いたかったけど、多分怒ってつけてくれないからクッキーにした。
赤羽さんはなんだかんだつけてくれそうだからミニチュアピンシャーが頭に乗ってるやつを買ったので次にあった時に頭につけてあげよう。

あれ、そうだ、デートの話を報告しよう思っていたんだった。


「これをさみんなでつけたの!」

「ゲホっ」

お茶を詰まらせた。とりあえずタオルを渡すと律儀にありがとうございますと言って受け取る桃花。すぐにそうじゃなくて!と少し大きめの声を出した。

「これ、氷怜さん達これつけたんですか?」

「うん首輪と」

「……」

「しかもおれ色々あって酔っちゃって、先輩達ホテル取ってくれてみんなで泊まったの!超広いしお風呂も最高だしさ~」

「それは……」

お箸でおかず掴んだまま固まってしまった。
落ちちゃうよ?卵焼き。

おれの目線にハッと気付いて卵焼きを口に運びもぐもぐと噛んで飲み込んだ。次に肉じゃがを選んでまたしっかり噛んで飲み込む。
桃花食事にめっちゃ時間かけるタイプだ。

これは少食になるよね。ダイエットとしては女の子にはぜひやってほしいオススメのひとつ。
それを繰り返して桃花がまた遠慮がちに聞いてきた。


「……泊まる予定じゃなかったんですよね?」

「え、うん。そうだと思う」


おれが酔わなければ帰っていたはずだ。桃花は下がっている犬耳の代わりに眉を下げ、ボソッと低い声を出した。


「氷怜さん相当我慢しただろうな……」

「え、なに。よく聞こえなかった。あ、ねえ、桃花も泊まり行こうよ、あんなすごいとこは無理だけどみんなでお泊まり楽しいよねぇ」


にこにこ笑ったおれに桃花が弟を心配する姉のような顔でこう言うのだ。


「…………もう少し警戒心をつけるべきだよ」

「あ、タメ語2回目!えへへ~」



喜んだおれとは対照的に桃花はため息をついた。






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