sweet!!

仔犬

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そもそも、最近では断ったところで誰かしらが迎えに来るし、過保護だなとは思いながらも当たり前になりつつあるのでそれ自体は良いのだ。

でも暮刃先輩の笑顔とそれに相反する硬い声質に目を見張った。そして、静かに聞いていた優がスコーンを指先で持ちながら口を開ける。

「暮刃先輩」

「君が言ったんだ」

「……やっぱりバイト終わったらすぐ帰るよ」

「え、ゆう、ちょ」

おれの言葉を遮って優が立ち上がった。

「ごちそうさまです」

空いたお皿を持ち上げキッチンに運びそのまま二階に上がってしまう。優が好きなベーグルは手もつけられていない。よく見たら進んでいたのは飲み物ばかりだ。

片膝を立てた氷怜先輩がついに2人に口を出した。

「随分、大人気ねぇな暮刃」

「暮ちんのへそ曲がりー」

「2人だって昨日の事は叱ったでしょう」

「それだけじゃねえんだろ」

少し強めの口調で氷怜先輩が言うと暮刃先輩がここで初めて笑顔を解いた。彼もまた殆どパンに手をつけていない。

「俺だって不可抗力を理不尽に怒ったりしないよ。それに普段だって自由でいて欲しいのは本心だ。ただ、根本的な話になって……」

「根本的?」

「……この話をすると全員同じ事で悩むから一旦話すのは止める、そう言う話し合いで昨日は終わったよ」

「ナニソレ」


氷怜先輩と瑠衣先輩が首をかしげる中でおれは静かにその会話を聴いていた。

優って理論的に考えられる頭がある、だからしっかり話し合うし、適当な事は言わない。

君が言ったと、そう言った暮刃先輩に優は口を出さなかった。


「うん、なるほど……」

根本的な話をしちゃったら確かに優の性格じゃこうなったのも頷ける。でもおれ達はおれ達としてしか生きれない。先延ばしにしかできないならおれはぶち当たる方を選ぶよ。

なんせ男だから。


「唯、手が止まってる」

「うん」


まずはパンを掴んでしっかり噛んで飲み込む、それを繰り返し優の分まで秋と一緒に食べ進める。暮刃先輩の朝食全てを胃に投げ込んだ。美味しいけどお腹はちきれそう。

だけど、これは腹が減ってはなんとやら。

「暮刃先輩!」

「今日も美味しかったです」

手を合わせてご馳走様。
そして驚いた顔の暮刃先輩に向き直る、氷怜先輩にも瑠衣先輩にもしっかり目を合わせて。

我儘でごめんなさい、でもホントはみんな我儘なんだ。


「そして今日はやっぱりスタジオに行きます」

「え?」

「迎えもいりません!ちなみにこれは当分!」


気合を入れすぎて笑ってしまって、そしたら秋までつられて笑って。ぽかんとする先輩たちにこう言うのだ。


「欲望に忠実になりましょう?」


わがままを突き通すか、折り合いをつけるのか。
お姫様は一夜限りなのだから、今日からははちゃめちゃで良い。



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