sweet!!

仔犬

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rival!

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式は邪魔にならないようにその辺で待ってると言って少し離れた場所に座っている。ずっと榊さんを見ているようだけど、やっぱり式はまだ榊さんを認められないというかライバル視してるのかな。負けたくない相手か乗り越えなきゃいけない壁か。

おれはと言えば攫われたことより先輩達の事を悪く言ってた事で最初は先輩の事分かってもらう!と意気込んだけど、何となくでも榊さんの人となりが見えてくると気持ちが収まってしまった。優は色々されたからツンツンモード炸裂だけど、今おれは彼の初恋の人が気になる。

麗央さんは相手をもう知ってるんだろうか。そんなことを考えながらおれは麗央さんに似合う色を抜粋し並べていく。すると麗央さんがぽつりと話し出す。

「……いつも自分にやるの?」

「へ?!」

まさか質問までもらえるとは思わなくて大っきい声が出てしまった。はじめて麗央さんにちゃんとした会話をされていると思うと感動で泣きそう。

「うるさい」

「ご、ごめんなさい!えっと、普段は自分にはメイクはしないんですけど……いやたまに色々あってしたりはするんですが、とにかく良いものをみんなに伝えたくて試すんです。椎名とかにもやったりします」

「椎名?」

「あ、母親です!」

「名前で呼んでるの……?変わってる」

わ、笑った!笑ったぞ!秋、優!麗央さんおれに笑ったよ!椎名って呼んでて良かった!
でもこんな時こそ変に反応してはダメだ、控えめな反応でいかないとまた麗央さんに怒られてしまう。動作はそのままにして叫び出したい気持ちを抑える。でも嬉しいことを隠すっておれには難解で顔に出てしまった。

「何気持ち悪い顔してるの」

「バッサリなとこも好きですうぅ」


マッサージしなくても輝くお肌は今日どころかいつ見ても完璧だった。流れとしてケアから始めてるけど要らないくらいだ。

それにやっぱり麗央さんは可愛い。笑った時の天使さは抜群に可愛い。おれの目に間違いはないって言い切れる。

「麗央さん、絶対に今回のコンセプトにこれ以上はないってほど可愛くなるのでお楽しみに」


「……あっそ」


そっけない返事だけど、そもそも返事をくれる事が大進歩。もう嬉しい、いつも以上に気合いも出る。
ノリノリでメイクしていると、テーブルに置いていた大きな鏡越しにカレンちゃんが覗いていた。まだ寒そうに飲み物を両手で持って彼女は近くのメイクさんに話しかけた。

「あの、もし自由が効くなら私のメイクもあの子の通りにして欲しいの」

「今回の指示は全部柚さんだから好きにして良いらしいわよ」

「本当に?!お願いします~。ねえ、唯斗くん?で良いかな?今日少し貧血で冷えちゃって、その、血色が悪くて……君のメイクすごく可愛いし私にもしてくれないかな、それかメイクさんに教えて貰えれば」

「そんな顔色でどんな自己管理してる訳。ここにきた以上、血色くらいなんとかしてきてよ」

カレンさんにもちろん良いですよと答える前に麗央さんが突然鏡越しに睨んで話し始めた。麗央さんの言葉は鋭いのだ、それは絶対に間違いのない言葉だから。

ああでも、同じ雑誌のモデルである麗央さんならカレンさんと親しい仲なのかも。

「あ、ごめんね……えっと、君麗央くん、だよね?他の子が休んで私まで休んだら仕事に穴が……」

「こうやって誰かが穴は埋めるんだから、無理してそんな顔色でくる方が迷惑」

あ、そんな親しくなさそうでした。そして凄い勢いでスタジオの空気が凍りました。でもおれにはその小さな声が聞こえてしまった。

「まあ春服にこのスタジオも寒すぎるけど、だいたい女性に部屋の温度合わせるなんて当然でしょ……」

うん、もう降伏したいくらい尊敬するわ。女性応援団長として感激です。

そして言ったら怒られちゃうだろうけどこの人ちょっと不器用なんだ。ならおれが出来る事って分かりやすい、中和剤なら大得意。

柚さんだけは面白そうにこちらを見ているので手を振って彼を呼ぶ。


「柚さん、もうセット終わってたらカレンちゃんがあったまるもの何か持ってきてもらえませんか?膝掛けとかストーブ、とかは無いかー……」

「あーあるある!悪いなー今日ドタバタしてて環境整ってないんだわ!」

ちょっと待っててと言って柚さんが駆けていく。

「お願いしまーす!あ、あと少しで麗央さんのメイクも終わるので、カレンちゃんのもやらせて下さい。あの、少しお手伝いお願いしても良いですか?」

「え、ええもちろん」

メイクさんに突然話しかけて驚かせてしまったけど、プロの意見も聞きたいし何よりもっと良いものにしたい。柚さんが戻ってくると小さなヒーターと膝掛けを両手に担いでいた。

「はいはい、カレン座ってー」

「あの、ごめんなさい私」

「根性見せたんなら俺は何も怒る事ないぜー?つか寒がってんのも気が付けなくて悪かったな!」

ニカッと笑った柚さん。
ポッと赤くなるカレンちゃん。
柚さんはいつも通りだけどカレンちゃんのあの目におれはピンときた。

「え、あれは」

恋バナで花を咲かそうと思ったら麗央さんは2人を見て眉間にシワを寄せた。

「見事なまでの片想い……自分見てる気分でいやんなってきた」

「ち、ちょおおっと麗央さんそういう事言う!?」

「良いから早く終わらせて」

「は、はい!」

今日も麗央さん絶好調、おれは無意識に背筋を伸ばしてメイクを最終段階へ向けて集中。そんなおれたちを見てメイクさんは微笑ましそうに笑った。

「君たち友達なの?」

「ミジンコほどもあり得ない」

「麗央さーん!!」


まだまだ認めてはもらえないらしい、えぐえぐと泣きながらもメイクは完成。

「どうでしょうか、直して欲しいところがあれば言ってください」

麗央さんが美人と言われる主な要因は輪郭だと思うのだ。すっと流れるようにシャープで誰もが羨むほど、でもそれを今回少し丸顔に近づけさせた。たったそれだけでも印象がかなり違う。元々目も大きくてまつ毛も長いからイメージを強くするのではなく色を淡く乗せる程度に。ただしラメと唇は印象的に。

「やっぱりアゲハさんとも話してたんですけど、麗央さんもう最高に可愛いんですよ」

足元にしゃがんだおれは麗央さんを眺める。青い目も少し彫りの深いところがお人形のような顔も、笑うと本当に嬉しそうに目を細めるところも可愛いって胸が高鳴るのだ。

完成して麗央さんは鏡を前に少し固まる。あれ、もしかしてダメだったのだろうか。不安になっていると小さな声がした。


「……ありがとう」

「え?!」


2度は言ってくれないらしい。すぐに立ち上がってカレンに早くしてあげてと言って榊さんの方に向かってしまった。

でももうその一言だけで十分だ。
よしっと小さくガッツポーズをして今度はカレンちゃんの元へ。


「カレンちゃん、お待たせしました」


女の子のお手伝いもできて、麗央さんとも少しだけ仲良くなれたような気もして、撮影も楽しみだし、なんて今日はいい日なんだ。

そしてやっぱりこう言う時に彼に会いたくなるのは、何故なんだろう。












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