sweet!!

仔犬

文字の大きさ
334 / 378
rival!!!

7

しおりを挟む


「リ・オンソ……?」

「あ?」




思った通り椎名はあっという間にみんなと仲良くなっていく。椎名の話し方って歳の差を感じさせないしなんならおれたちと同い年のノリが通用する。そのおかげでミーハーな椎名はチームの人たちと聞いても、普通の人なら驚くような話も楽しそうに聞いていた。溶け込むのが早いっておれでも感動する。


そのまま嬉しそうにおれのところまでくるとキャッキャと話だした。


「みんな良い子~、唯斗恵まれてるのね~ママチーム入りたいくらい!」

「えええ」


それは息子として止めた方が良いのだろうか。
悩みながらも李恩の隣のカウンター席を引いて椎名を座らせる。


「あ、でもチームにサクラさんって言う超絶美人さんがいてね!椎名と絶対に気が合うよ」

「え?!絶対会いたい!!」

輝く椎名の目。
椎名の方がサクラ姉さんよりも年上だと思うけど、こんな感じなのでお姉さん感はサクラ姉さんの方がある。でも、春さんに微笑む母さんが少し違った雰囲気を見せた。



「春さん、こんばんは」

「いらっしゃいませ」


微笑む2人はなんだか落ち着いていて、これはもう確実なのではないだろうかと口走りそう。でもまだ2人が何も言わないと言うことはそう言うことなのかもしれない。気づかないふりをなんとか保って李恩さんと麗央さんを紹介していく。

なんとも言えない引き攣った顔の李恩と可愛く微笑んだ麗央さん。


「2人とも、こちら母の椎名です。椎名、こちらは麗央さんと李恩だよ」

「初めまして、椎名で……可愛いわ……!しかも、あなた!!!」



かっと開いた目が麗央さんを捉えて、しかも李恩を目にすると立ち上がった。おれも追えない速さで李恩の顔をぎゅっと両手で包んだ椎名、春さんも予想外の行動にカップを掴んだまま固まっている。一番目を点にして驚いているのは手で顔を挟まれている李恩だ。


「え?!椎名?!」

「そ、そっくり……!」

「へ?!」  



誰に?



「リ・オンソよ……!」

「……ん?」


なにそれ、李恩の親戚か。
首をかしげたおれに母さんの目がキラッと光るとおれそっくりな顔で力説が始まった。


「リ・オンソは秋ちゃんママと優ちゃんママと一緒に見てる先週始まったばかりの韓ドラに出てくる新人俳優なの!それが最初はもう冷たい役なんだけど、本当は素直になれないだけの愛おしい役でもう第一話から号泣で」

「わーーわーー、椎名!わかったから離してあげて李恩!」


もう何が何だか分からず固まる李恩、そしてその後ろで今にも呼吸困難で死にそうな麗央さんがテーブルに伏せている。もちろん、爆笑しているせいで。


「……ぶふっ、り、おん、そ……っあはは……ふっはは……」


泣いてる、麗央さん笑いすぎて泣いてる。ヒビキさんの家でも笑ってたけど今はそれ以上だ。椎名凄い、やっぱりおれの母親凄いって、あの麗央さんがこんなにツボってる。


「は!ごめんね!あまりにもそっくりだったから」


両手を合わせて謝る椎名。
ママさん世代の話題ってたしかにカフェでもドラマにハマってるとは聞くが自分の母親もそうだったとは知らなかった。もともとミーハーというか最新の話題に目がない、おれが美容に目がないのとそっくりだからその熱量は分からなくはないけど。


「良かったねぇ、李恩」


穏やかに笑う春さん、と思ったけどおれは見逃さなかった。あの春さんまで口元を手で隠して笑いを堪えている。しかも直視できないのか視線は横を向いたままだ。


「本当にそっくりでカッコいいからびっくりしちゃった!それに……やっぱり優しそう」



ようやく落ち着いたのか、すとんと椅子に腰を下ろした椎名は李恩を見て微笑む。おれも今なら椎名が彼のことを優しいと言うのに賛同だ。なんだかんだ人を見ているし、自分が決めたことはきっちり守る。



「……そんな事は、無いな」



椎名の言葉にはっとしたように反応した李恩は自嘲気味に笑った。


「優しくねぇよ、あんたの息子にはそれなりな事してる」

「え?」


なんでわざわざそんなことを教えるのか。おれは別にもうそんな事良かったんだけど李恩は気にしていたのかもしれない。椎名は少し驚いた顔をしておれを見る。


「何も無かったよ」

「おい、別に隠す必要は……」


笑って返したおれに李恩が眉を釣り上げた。でも別に彼自身が企てた事だとしても、傷つけられたわけでもなかった。あの誘拐だってお金が絡んだとは言え第三者が行動しなければ成り立たない。あ、でも優にキスしたのはまた別として。

なんというか、彼くらいの力があるなら簡単に出来る事をしないし、それに確実な悪意とも言えない彼の行動。
なんと説明していいか分からず悩むがおれが答える前に椎名が話し出した。


「私は唯斗の事、一番近くで見てるつもりなの。ちっちゃい頃からずっとね、どんな人の隣にいるのかもなんとなく想像出来るわ。今日だって、やっぱりみんな良い子で母親としては鼻が高いくらい」

おれを見て椎名が微笑んだ。

「そしてね李恩くん、あなたが唯斗の隣にいるのもなんだか想像がつくの」


微笑む椎名を前に李恩の鋭い目つきが少し泳いだ。椎名の言っていることがよく分からない感情なのか、伺うように問う。


「……だからって、それだけで信じるのか?」



おれが椎名の事を親として尊敬するだけじゃなくて、人としても大好きなところってたくさんある。その中でもちゃんと意思を持った力強い答えを出すところだ。しかもそれが暖かくて自分もこうなろうと思えるから。



「だって、こうしてあなたの前で笑ってる唯斗を見たら私が口を出す事なんて一つもないもの」



にっこり微笑む椎名に、この人にはまだまだ敵わないと息子は思うのだ。




しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

人気アイドルが義理の兄になりまして

BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...