オレの魂はいずれドラゴンかアイツに食われるらしいが死んだ後のことに興味はない。

仔犬

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12.おにぎり、サンドイッチ、オレの魂

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屋上でレイガはオレに初めての姿を見せてくれた。なかなか綺麗で格好良いの。
似合っていると告げると驚いた後に安堵するように眉を下げたレイガがやけに記憶に残る。

だいぶ時間も遅くなったのでその日は家が近いレイガのうちに泊まって不満げなスターと一度解散。

朝を迎えた今日は改めて2人の話を聞くことになった。オレは別にわざわざ掘り進めて話すこともないんだけど、2人は何となく自分を知って欲しそうだったので、じゃあ公園でのんびり日向で話したいと申し出たのだ。

一旦家に戻って着替えて、約束よりも前の時間に公園で読書を始めたオレにいち早く気づいたスターがオレの側に降りてくる。白い身体、青い目、しっぽがフリフリ。

「おはよ」

「お、おはよう?」

何故かぎこちなく挨拶を返すスターに首を傾げると、スターが苦笑したように見える。

「人に挨拶するの、久しぶりなんだ」

「ふうん?」


ドラゴンはドラゴン同士で挨拶するってことか。
この世界で他のドラゴン見た事ないけど。

スターはゆっくりと体制を整えてオレを囲むように寝そべる。この公園だといつもそうだ。スターの柔らかいお腹が気持ちよく背中に当たる。

「いやあ。いい腹だ」

「な、なんかデブって言われてる気分……」

「んー?ドラゴンって体型気にするの」

「もちろん!見た目は大事。だから光合成しすぎないようにしないとなあ」

あ、やっぱり食事は光合成なのか、良く日当たりいいところで寝てるもんな。




「まじ?お前らいつもそんな事してたの?」

いつのまにかレイガが到着している。みんな集まるの早いな、本読もうと思ってたのに。
パーカーをかぶって少し大きめのリュックを背負い何か不満そうな顔でレイガがオレの足をつつく。


「いつもっていうかオレがこんな風に本読んでると良く飛んできたよな」

なあ?とスターに聞くと大きな頭がうんと頷いた。その鼻先を撫でると気持ちよさそうに目を閉じる。今日もドラゴンは可愛いな。


「いちゃいちゃしてんなよ!!」


これをいちゃいちゃと言うなら世界のペットを家族に持つ人たちは一緒のベットに寝たりとか洗ってあげたりとかしてるからレイガにとっては大変な世界だ。


「取り敢えず座ったら。てかなにその荷物」

「ん?昼飯」



おっきい四角い黒リュック、一時期流行ってみんなそれ背負ってた気がするけど最近見なくなったな。そんなんレイガ持ってたんだと思ったら昔買ったのを引き摺り出したと言う。

「わざわざ良いのに」

「だって公園で昼っつったら、ピクニックだろ。まあお前が昼に予定作ると食べないから作っただけだけど」

「相変わらずオレの母さんよりオレに献身的だなぁレイガ」

レイガって器用で基本的に何でもできる。運動も勉強もそして料理も、この前は簡単な朝食作ってくれたけど今日のピクニック弁当は主婦以上かも知れない。映えるお弁当セット、オリジナルブレンドの紅茶まで。

「うまそう」

まぁねとドヤ顔のレイガの視線の先にはスターがいる。当然のように2人はすぐに火花を散らし始めた。


「お前は食べなくても良いよなぁ別に」

「はあ?君だってそれ食べなくても生きていける癖に」


へえ、レイガ普通に食って飲むけど食べなくてもいけんのか。もしやレイガも光合成タイプ?それはちょっとウケる。

「おれは人間寄りだから食ったほうがエネルギー取りやすいんだよ、って知ってるだろそんくらい」

「当たり前でしょ、ワザと言ってるに決まってるじゃん」


今日も元気だなぁ2人とも。
オレはお弁当見てたらお腹空いてきたから先に食べ始めよ。マヨ卵サンドイッチ、ポテサラ、タコさんウィンナー、たまごそぼろおにぎり、卵焼き、唐揚げもある。
主食多いな。てゆかおっきいお弁当に洋食と和食半分ずつって豪華すぎじゃないか。オレの好きな卵もすんごい入ってて至れり尽くせり。

もぐもぐ食べながら2人の言い合いを見守る。ポットの紅茶おにぎりにも合う味で最高。


「ふん!これだから人型は軟弱で困るよね。そんなんでツバサの魂食べれるの?!」

「それこそ当たり前だろ……!!おれがどれだけコイツの……」

「レイガ……」

「あ?……あ、ツバサ、あの、今のは……」



2人の視線が一気にオレに向かってくる。やってしまった、言ってしまった、やばい、どうしよう。そんな顔で今にも倒れそうな2人の顔。

しかも数秒経ってもなにも言ってくれないし、これなに。オレの返事待ちか。まだオレ口に頬張ったおにぎり入ってんの。

一回飲み込んで紅茶をゆっくりと堪能する。うま。

そんでようやく喋れそう。



「で?デザートにオレでも食うの?」







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