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平凡男子のおれがアレを授かりまして
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しおりを挟むそんなわけで密かに混乱の坩堝に陥っていた柚木は藁にも縋る思いで一人神社へ向かった。
動揺して心乱れる余り、誰かに行き先を告げる余裕もなく。
街よりも深い暗闇にあっという間に呑まれる山林の道を極端に少ない外灯を頼りに進んで。
件の神社へ。
「暗い……」
恐ろしく人気のない境内。
一ヶ所のみに設置された古臭い常夜灯の覚束ない明かりが却って不気味な雰囲気を漂わせている。
普段の柚木なら回れ右必須だが、今の柚木はそんなことどうでもよく、何か手がかりはないかと必死になって暗く寒い境内をうろうろしまくった。
……手がかりってなんだろう。
……突然、女の子のアレができちゃった、その原因がわかる手がかりって……なんなのさ……自分で探しておきながら何一つわからない……。
「うう……どうしよ……」
とうとう泣き出した柚木。
傍目にはヤバイ奴だ。
そんなヤバイ奴にゆっくりとかけられた声。
「柚木、大丈夫か……?」
草ぼーぼーな境内の隅っこにしゃがみ込んで絶望の余りグスグス泣いていた柚木は振り返った。
携帯するのに便利なミニ懐中電灯を手にした比良が立っていた。
今は明かりを消して、様子を窺うような眼差しで柚木のことを見つめていた。
「泣いてるのか?」
「ひ……比良くん、どうしているの……?」
「お前が一人でフラフラ外に出るの見かけて、気になって、追いかけてきた」
比良の優しさに柚木の涙腺は崩壊した。
ちなみに青少年としてちょびっと持ち合わせていたプライドも崩れ落ちた。
「ひっ、ひっ、ひっ……!!」
まともに「比良くん」とも呼べずに柚木は比良にしがみついた。
ぎゃん泣きした。
もしも下の歩道に通行人がいたら怖くなって走り去りそうなくらいのぎゃん泣きぶりだった。
比良は。
自分のダウンをぎゅうぎゅう握り締め、鼻水までだらだらさせて泣き喚く柚木の好きなようにさせた。
震える背中をポンポン叩いて安心させた。
ぎゃん泣き柚木を何にも言わずに受け入れた。
「落ち着いたか?」
「うん……ほんとありがと、比良くん、そしてごめん、ダウンに鼻水つけて」
「何があったのか聞いていいか」
「……」
「誰かにひどいこと言われたのか?」
社殿へと連なる苔むした短い階段。
比良と並んで座っていた柚木はぎょっとした。
「まさかっ、それはないっ」
「じゃあ、どうして?」
「……えーと……」
いくら比良くん相手でも言えるわけがない。
女の子のアレがいきなり生えてきました、なんて。
「えーーーと」
「そんなに俺には言いたくないか」
しどろもどろな柚木はそーーっと隣へ視線をやった。
前方を見据えたままの比良。
その横顔に見慣れない彼の感情を見つけ、はっとした。
怒りでも不快感でもない。
それは、淋しさ、だった。
だ……大豆(飼い犬)だ……。
大豆とおんなじ顔してる……。
受験勉強に集中して遊んであげられなかったときの大豆だ……。
比良くんにこんな顔させるなんて、おれって、なんて罰当たり……。
「……誰にも言わないって約束してくれる?」
膝を抱いた柚木へ比良も視線を移し変えた。
「誰にも言わない」
「う、うん……まぁ誰も信じないと思うけど……おれさ……」
「うん」
「ほんっと……突然過ぎて意味わからないんだけど、今日……」
「うん」
「今までなかったモノが……は……生えてきたっていうか……」
「生えてきた?」
「生えてきたっていうか……芽吹いたっていうか……授かったっていうか……」
「?」
「だ、だよね、その反応すごくわかる……おれも比良くんの立場だったらそうなるよ……うん」
「?」
「えーーーとね……ほら、アレですよ、アレ……女の子の……」
「女の子のアレ?」
「うん……女の子のアレ……いきなりできちゃった……」
しどろもどろな柚木をまじまじと凝視したまま比良は言う。
「ニキビでもできたのか?」
ニキビでぎゃん泣きするわけないだろーーーー!!
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