おれがアレを授かりまして

石月煤子

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平凡DKのおれがアレを授かりまして

3-2

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「突然、ごめん」


自分が不審者であるかのような挙動不審ぶりで玄関ドアを開けた柚木に、比良は、開口一番すまなさそうに詫びた。


「い……いや、別にいーんだけど……でも急にどしたの? ていうか、よくウチの場所知ってたね?」


両足にサンダルを突っかけて玄関床に立つ柚木が尋ねれば。


「柚木にプレゼント」


そう言って、手にしていたコンビニ袋をガサリ、二人の間に掲げてみせた。


「ぷ……ぷれぜんと?」
「肉まん」
「に……にくまん?」
「好きだったろ?」


セーターの上にネイビーのコートを羽織った比良は人当たりのいい笑顔を浮かべた。


「本当は柚木が一番好きなエビ天、買いたかったんだけど。コンビニになかったから肉まんにしたんだ」


……笑顔がキラキラ眩しい……。


「……あれ、エビ天が好きって比良くんに言ったっけ、あっ、こらっ」


柚木の足の間から大豆が飛び出してきた。


「この子が大豆?」


教えた覚えのない飼い犬の名を口にした比良は、柚木にコンビニ袋を手渡すと、その場にしゃがみ込んだ。

人懐っこい大豆を両手で撫でる。

きゃんきゃん鳴かれると「すごく可愛い」と笑顔を深めた。


……大豆と比良くんの組み合わせ、プライスレス……。


ドアにもたれ、微笑ましいにも程がある光景に思わず見入っていた柚木は。

わざわざ肉まんいっこをプレゼントしに自宅まで来てくれた比良におずおずと声をかける。


「比良くん、あの……せっかく来てくれたんだし、ウチに……上がってく……?」


抱っこした大豆が懐で嬉しそうに身悶えるのを見下ろしていた比良は柚木の方をぱっと見た。


「いいのか?」


急な訪問に驚く余り、ずっと避けていたはずの比良を家の中へ招いたことを、その瞬間、柚木は後悔した。


……そんな最上級の笑顔向けられ続けたら、心臓もアソコも持ちませんよ、おれ……。







「もしかして昼寝するところだったか?」


なんてこたぁない地味マイルームへ比良を招き入れたところで柚木はハッとした。


大慌てでカーテン全開、ついでに窓も開けて空気入れ替え、ベッドに置きっぱなしにしていたバスタオルを丸めて隅っこへ押しやった。


「ど、どうぞ、コチラへ」


勉強デスクの回転イスへ促すと、羽織っていたコートを脱いで背もたれにかけ、比良は腰かけた。


「ありがとう」


あれ、おれのイスがどえらく高級品に見える、気のせいかな。


「えっと、飲み物どうしよ、麦茶かあったかいお茶かコーヒー牛乳か、」
「お茶、自分のがあるからいい」
「あ、そう……そっか……」


しーーーーーーーーん


一階で寝かしつけてきた大豆のイビキが聞こえてきそうなくらいの静寂が押し寄せてきて、柚木は、自分の部屋だというのに不審者みたいにウロウロした。


「柚木も座ったら?」


比良に声をかけられてベッドにあたふた腰掛ける。


せっかく来てくれた彼に失礼があってはならないと、不快な思いをさせてはだめだと、そういえば正にコミュニケーションに適した話題があったことを柚木は思い出した。


「比良くん、今日、平岡さんにプレゼントもらってたよね」


比良は窓が全開にされてやたら風が吹き込んでくる部屋の中を見渡していた。


「なんか映画とかマンガみたいですごかった、二人、すごくお似合いだった」
「プレゼントはもらってないよ」


落ち着きなく制服ズボンの膝のところを捏ねていた柚木は目をパチクリさせた。

前屈みになって両手を組んだ比良は、微苦笑し、続ける。


「後で平岡さんに返した」
「えっっっ」
「本当は、ああいうの困るんだ。なるべく貰わないようにしてる。今回は教室で周りの目があったから、その場で返すのは本人に悪い気がして受け取った。でもホームルームの前に呼び出して返したよ」


う、わ、ぁ……。
呼び出されたら、絶対、期待しちゃうじゃん……。
それでプレゼント返されるって……。
失恋地獄の幕開け……。


「ヒくか?」


自信満々だっただろうモテ女子の心境を慮っていた柚木は、返事に困って、固まった。


「プレゼントって。好きな人からじゃないと意味なくないか?」


うわぁぁぁ、一度でもいーから言ってみたーい。
おれなんか友達からでも余裕で嬉しいけどね。
親からでもねーちゃんからでもガチで嬉しいけどね。


「冷えるから食べた方がいい」
「えっ?」
「肉まん」
「あ……そだね、うん、比良くんありがと、いただきます……」


……いやいや、食べづらい。

……比良くんに見られながら、おれだけ肉まん食べるの、拷問並みにしんどいです。


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