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平凡吸血鬼のおれがアレを授かりまして
2-1-放課後
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友達は当然ながら家族にも打ち明けられずに吸血鬼特有の悩みを持て余し気味な柚木は。
「柚木君、三科目で追試とは由々しき事態ですよ」
二学期の期末テストで赤点をとりまくった。
「だ……誰かおれのこと退治してぇ……」
「ゆずくん、ご乱心」
「ちゃんと現実と向き合って楽しい冬休み迎えよ?」
「う、うんっ……冬休みのために頑張る、おれ……っ」
十二月に入って行われた追試。
最後の科目は放課後に実施され、終わればすでにとっぷり日が暮れていた。
運動部も活動を終えていて静かな校舎。
マフラーをぐるぐる巻いた柚木はお腹をぐぅぐぅ鳴らしながら下校しようとしたのだが。
「グワアアアアアアア」
えっ!?
なに今の!?
校門を抜ける直前のタイミングだった。
学校の敷地内、どこからともなく聞こえてきた怪しげな鳴き声。
スクールバッグの取っ手を両手で握り締めた柚木は、辺りをきょろきょろ見回し、追試勉強のストレスで幻聴が聞こえたのかもしれないと思い、改めて校門を抜けようとした。
「ガアアアアアア」
ひぇぇ……やっぱり何か聞こえる、何か鳴いてる……。
「せ、先生呼んでこよっかな……?」
柚木は回れ右した。
鳴き声のした方へ恐る恐る向かった。
誰もいない校庭沿いに進んで、消灯された体育館を通り過ぎ、常緑樹の連なる敷地内の隅っこへ。
弓道場の裏手の方へ……。
「グワッ」
なななな、なんかいる、なんかいる。
黒い、でっかいのが、ばさばさって……。
「カラス……?」
一つだけ設置された外灯が照らす先にソレはいた。
カラスだ。
これまでに見たこともない、くそでかカラスだった。
「な、なんだなんだ……怪我してるとか……?」
茂みの中で蹲るようにしてじっとしているカラスに柚木はおっかなびっくり近づこうとした。
「……柚木……?」
くそでかカラスの元へ到着する前に柚木はピタリと足を止める。
振り返れば比良が立っていた。
「……比良くん……」
新聞の記事で見た黒一色の弓道着を身に纏う、薄闇の中でもキラキラ瞬いて見える彼を前にし、柚木は無意識に呟く。
「……おいしそう……」
呟いた後、一瞬にして青ざめた。
「おいしそう?」
「あっ……ああああ、あの、おれ、あの、えーと」
「柚木も食べたいのか?」
「ええっ? ええええっ? ええええええ?」
「これ」
片手に持っていたパンの袋を比良に翳されて、数秒間フリーズした柚木、壊れたみたいにコクコクコクコク頷いた。
「た、食べたい、おいしそう、コッペパン」
「購買で買ったパン。あの子のために」
夕闇の迫る宵の口。
外灯の覚束ない明かりの中、比良は袋を開封すると半分に千切ったコッペパンをカラスの方へ投げた。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!
うわぁ……カラスってこんな激しい食べ方するの……すごく怖いんですけど……。
「柚木君、三科目で追試とは由々しき事態ですよ」
二学期の期末テストで赤点をとりまくった。
「だ……誰かおれのこと退治してぇ……」
「ゆずくん、ご乱心」
「ちゃんと現実と向き合って楽しい冬休み迎えよ?」
「う、うんっ……冬休みのために頑張る、おれ……っ」
十二月に入って行われた追試。
最後の科目は放課後に実施され、終わればすでにとっぷり日が暮れていた。
運動部も活動を終えていて静かな校舎。
マフラーをぐるぐる巻いた柚木はお腹をぐぅぐぅ鳴らしながら下校しようとしたのだが。
「グワアアアアアアア」
えっ!?
なに今の!?
校門を抜ける直前のタイミングだった。
学校の敷地内、どこからともなく聞こえてきた怪しげな鳴き声。
スクールバッグの取っ手を両手で握り締めた柚木は、辺りをきょろきょろ見回し、追試勉強のストレスで幻聴が聞こえたのかもしれないと思い、改めて校門を抜けようとした。
「ガアアアアアア」
ひぇぇ……やっぱり何か聞こえる、何か鳴いてる……。
「せ、先生呼んでこよっかな……?」
柚木は回れ右した。
鳴き声のした方へ恐る恐る向かった。
誰もいない校庭沿いに進んで、消灯された体育館を通り過ぎ、常緑樹の連なる敷地内の隅っこへ。
弓道場の裏手の方へ……。
「グワッ」
なななな、なんかいる、なんかいる。
黒い、でっかいのが、ばさばさって……。
「カラス……?」
一つだけ設置された外灯が照らす先にソレはいた。
カラスだ。
これまでに見たこともない、くそでかカラスだった。
「な、なんだなんだ……怪我してるとか……?」
茂みの中で蹲るようにしてじっとしているカラスに柚木はおっかなびっくり近づこうとした。
「……柚木……?」
くそでかカラスの元へ到着する前に柚木はピタリと足を止める。
振り返れば比良が立っていた。
「……比良くん……」
新聞の記事で見た黒一色の弓道着を身に纏う、薄闇の中でもキラキラ瞬いて見える彼を前にし、柚木は無意識に呟く。
「……おいしそう……」
呟いた後、一瞬にして青ざめた。
「おいしそう?」
「あっ……ああああ、あの、おれ、あの、えーと」
「柚木も食べたいのか?」
「ええっ? ええええっ? ええええええ?」
「これ」
片手に持っていたパンの袋を比良に翳されて、数秒間フリーズした柚木、壊れたみたいにコクコクコクコク頷いた。
「た、食べたい、おいしそう、コッペパン」
「購買で買ったパン。あの子のために」
夕闇の迫る宵の口。
外灯の覚束ない明かりの中、比良は袋を開封すると半分に千切ったコッペパンをカラスの方へ投げた。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!
うわぁ……カラスってこんな激しい食べ方するの……すごく怖いんですけど……。
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