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平凡吸血鬼のおれがアレを授かりまして
7-1-冬休みデート
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「ひょぇぇぇぇ、待って待って、これやばいかも、ほんとにやばいかも~~……!!!!」
柚木の情けない悲鳴が弱々しげに響き渡る。
そこは街中の商業施設内に期間限定で設置されたスケートリンク。
冬休みシーズンならではな遊び場はたくさんの客で賑わっていた。
「ここまで頑張っておいで、柚木」
初スケートでガクガクブルブル状態の柚木は涙目で前方を見る。
「ちゃんと受け止めるから」
ファーフードつきのモッズコートがどえらい様になっている、氷上で安定した立ち姿を難なく見せている比良が両腕を広げ、自分を待っていた。
……なにあれ、冬の天使?
……位の高い大天使さま?
柚木だけじゃない、他の利用客も見惚れている、黒髪長身の男前くんの胸に飛び込んでいきたくてウズウズする者までいた。
生まれ立ての小鹿や子馬のような危なっかしさで柚木は比良の元を目指す。
生者を求めるゾンビさながらに両手をフラフラ伸ばし、よろよろよろよろ、覚束ない足取りで、甘爽やかな笑顔を浮かべる比良の元へ……。
「あ、すみません!」
どんっ、シャーシャー滑る子どもにぶつかられて柚木はさらに体勢を崩す。
バランスを保てずにそのまま氷の上へ……。
「柚木っ」
氷の上へ倒れ込む前に柚木は比良に引き寄せられた。
そのままあったかい懐へ。
スケートリンクの一角、公衆の面前で紛れもないハグをしっかりされた。
「危なかった、大丈夫か?」
心配顔の比良に間近に覗き込まれ、何とも頼もしいその支えに柚木は顔をまっかっかにさせる。
謝ってくる年下の子どもに「大丈夫れす」と敬語で返事をし、ぬくぬく居心地のいい懐から離れようとしたら。
「わぁ……うらやまし……」
「もはやディズ●ープリンスじゃん」
周囲の声が聞こえてきて、さらに限界まで顔を赤くした。
自分がプレゼントした手袋をはめた、通学用のダッフルコートを着込んだ平凡男子に比良は頬を緩める。
「それなら柚木はディ●ニープリンセスになるのかな」
……畏れ多いの極み……。
『俺とデートしよう』
比良からメールでお誘いを受けたとき、柚木は携帯を落っことした。
怒涛のクリスマスから一夜明けてからの遣り取り。
当然、弓道場での出来事は柚木の頭に色濃く鮮明に残っていた……。
「柚木に怖い思いさせて悪かった」
「いやいや、おれがとろいばっかりに……ていうか比良くん、すごいね。スケートも完璧に滑れるなんて正に非の打ちどころがない」
「完璧じゃない。大袈裟だよ」
「いやいやいやいや……比良くんが完璧じゃなかったら、完璧なんてこの世の中に存在しません……」
スケートリンクがある商業施設内のレストランで柚木は比良とランチをとっていた。
「本当、柚木は面白いこと言うな」
あったかい店内でアウターを脱ぎ、オフホワイトのカットソーが眩い比良は、日当たりのいい窓際のテーブル席で僅かに声を立てて笑った。
「はわわ……」
「それも面白い。俺のこと見ながら時々口にしてるけど、どういう意味があるんだ?」
「意味なんかないです。称えてるんです」
クリームソースのパスタを食べていた柚木は、冬の日差しの中で穏やかに笑う比良を正面にし、太陽でも直視したみたいに目を細める。
……尊いとは正にこのことか。
……真正面よりも真後ろにいたい、後ろからずっと拝んでたい。
それにしても比良くんがおれと同じ吸血鬼だったなんて。
おれと同じ、っていうのも烏滸がましいけど。
だって、人としては当然なんだけど、吸血鬼的にもレベルが桁違いというか。
「デザートはどうしようか。別の店で食べようか」
……あー、かっこいいなぁ~、ほんとにキラキラしてる。
……トマトソースなのにどこも汚してないし、はぁ~、眼福~。
「柚木」
「あっ、ど、どこでもいい! 比良くんの行きたいとこでいい!」
比良にぽんやり見惚れていた柚木、無駄に大声が出て、はたと口を閉じたのだが。
向かい側につく比良が前屈みになったかと思えば、手にした紙ナプキンでほっぺたを拭われて「んごご……」と、また意味のない声を発した。
「ソースがついてた」
「面目ないです……」
「柚木は行きたい場所ないのか?」
「えっ……と……」
十二月下旬の週末でどこもかしこも浮き足立った冬の街。
柚木自身、こんなにも浮かれた冬休みを迎えるのは初めてのことだった。
「……比良くんが隣にいて、おしゃべりできるだけでもう十分だから、特には……」
……あれ、今の、質問の答えになってたかな……?
柚木の情けない悲鳴が弱々しげに響き渡る。
そこは街中の商業施設内に期間限定で設置されたスケートリンク。
冬休みシーズンならではな遊び場はたくさんの客で賑わっていた。
「ここまで頑張っておいで、柚木」
初スケートでガクガクブルブル状態の柚木は涙目で前方を見る。
「ちゃんと受け止めるから」
ファーフードつきのモッズコートがどえらい様になっている、氷上で安定した立ち姿を難なく見せている比良が両腕を広げ、自分を待っていた。
……なにあれ、冬の天使?
……位の高い大天使さま?
柚木だけじゃない、他の利用客も見惚れている、黒髪長身の男前くんの胸に飛び込んでいきたくてウズウズする者までいた。
生まれ立ての小鹿や子馬のような危なっかしさで柚木は比良の元を目指す。
生者を求めるゾンビさながらに両手をフラフラ伸ばし、よろよろよろよろ、覚束ない足取りで、甘爽やかな笑顔を浮かべる比良の元へ……。
「あ、すみません!」
どんっ、シャーシャー滑る子どもにぶつかられて柚木はさらに体勢を崩す。
バランスを保てずにそのまま氷の上へ……。
「柚木っ」
氷の上へ倒れ込む前に柚木は比良に引き寄せられた。
そのままあったかい懐へ。
スケートリンクの一角、公衆の面前で紛れもないハグをしっかりされた。
「危なかった、大丈夫か?」
心配顔の比良に間近に覗き込まれ、何とも頼もしいその支えに柚木は顔をまっかっかにさせる。
謝ってくる年下の子どもに「大丈夫れす」と敬語で返事をし、ぬくぬく居心地のいい懐から離れようとしたら。
「わぁ……うらやまし……」
「もはやディズ●ープリンスじゃん」
周囲の声が聞こえてきて、さらに限界まで顔を赤くした。
自分がプレゼントした手袋をはめた、通学用のダッフルコートを着込んだ平凡男子に比良は頬を緩める。
「それなら柚木はディ●ニープリンセスになるのかな」
……畏れ多いの極み……。
『俺とデートしよう』
比良からメールでお誘いを受けたとき、柚木は携帯を落っことした。
怒涛のクリスマスから一夜明けてからの遣り取り。
当然、弓道場での出来事は柚木の頭に色濃く鮮明に残っていた……。
「柚木に怖い思いさせて悪かった」
「いやいや、おれがとろいばっかりに……ていうか比良くん、すごいね。スケートも完璧に滑れるなんて正に非の打ちどころがない」
「完璧じゃない。大袈裟だよ」
「いやいやいやいや……比良くんが完璧じゃなかったら、完璧なんてこの世の中に存在しません……」
スケートリンクがある商業施設内のレストランで柚木は比良とランチをとっていた。
「本当、柚木は面白いこと言うな」
あったかい店内でアウターを脱ぎ、オフホワイトのカットソーが眩い比良は、日当たりのいい窓際のテーブル席で僅かに声を立てて笑った。
「はわわ……」
「それも面白い。俺のこと見ながら時々口にしてるけど、どういう意味があるんだ?」
「意味なんかないです。称えてるんです」
クリームソースのパスタを食べていた柚木は、冬の日差しの中で穏やかに笑う比良を正面にし、太陽でも直視したみたいに目を細める。
……尊いとは正にこのことか。
……真正面よりも真後ろにいたい、後ろからずっと拝んでたい。
それにしても比良くんがおれと同じ吸血鬼だったなんて。
おれと同じ、っていうのも烏滸がましいけど。
だって、人としては当然なんだけど、吸血鬼的にもレベルが桁違いというか。
「デザートはどうしようか。別の店で食べようか」
……あー、かっこいいなぁ~、ほんとにキラキラしてる。
……トマトソースなのにどこも汚してないし、はぁ~、眼福~。
「柚木」
「あっ、ど、どこでもいい! 比良くんの行きたいとこでいい!」
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向かい側につく比良が前屈みになったかと思えば、手にした紙ナプキンでほっぺたを拭われて「んごご……」と、また意味のない声を発した。
「ソースがついてた」
「面目ないです……」
「柚木は行きたい場所ないのか?」
「えっ……と……」
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