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平凡吸血鬼のおれがアレを授かりまして
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しおりを挟む落っことしたケーキは幸いにも大して崩れずに箱の中で綺麗なかたちを保っていた。
「よかった~。全部無事だ~」
「柚木の落とし方がきっと上手だったんだ」
「そ、そうかな……あれ、でもフォークとかないよ?」
「手掴みで食べよう」
一台しかないソファに並んで座って昼下がりのおやつを始めた二人。
「わわっ。ブルーベリー落ちそ……」
……手掴みでケーキ食べるとか、ワイルドというか、比良くんにしてはお行儀悪い感じがする。
ブルーベリーのタルトを手掴みで食べるのに四苦八苦していた柚木は、隣に座る比良を横目で窺ってみた。
比良はイチゴのショートケーキを食べていた。
一口がかなり大きい。
あっという間に一つ目を食べ終えると、指についた生クリームをぞんざいに舐め取った。
……はわわわわわわわわわわわわわ……。
ランチではクリームパスタをお行儀よく食べていた比良の大胆な食べっぷりに柚木は目を奪われる。
二つ目のチーズケーキも速やかに平らげた彼は、食べかけの一つ目を持ったまま口に運ぼうとすらしない柚木に笑みを零した。
「やっぱりフォークがないと食べづらいな」
「あ、うん……そだね」
「柚木が食べるの、俺が手伝おうか」
同級生の介護でもするつもりなのかと首を傾げかけた柚木は、手にしていたタルトを優しく奪っていった比良に目を丸くさせる。
より近づいて密着してきた彼が自分の口元にタルトを運んできた際には、ぶわわわわっ、ド赤面した。
「自分で食べれますけど!?」
「遠慮しないで」
「いやいやいやいや、恥ずかしいし逆に食べづらいし!」
「ほら」
「ううう……」
「あーん、して?」
食べづらぁ……!!!!!!
一瞬でぽっかぽかになった柚木、渋々、比良の手からケーキを食べた。
「柚木は一口が小さいな。小動物の赤ちゃんみたいで可愛い」
「……それ、前にも言われたよーな気がします」
「ケーキを食べてる柚木、可愛い」
「……え、餌付けじゃん、こんなの……おれ小動物でも赤ちゃんでもないのにぃ……」
タルトをもごもご食べ終えれば二つ目のチョコレートケーキまで比良に食べさせられた。
正直、味はあんまりわからなかった。
不慣れにも程があって照れくさくて恥ずかしいし、緊張もあるし。
「ケーキを食べてる柚木、おいしそう」
ずっと自分を見つめながら「可愛い」だの「甘そう」だの繰り返す比良に胸やけしそうだった。
「せっかく比良くんが買ってくれたケーキなのにぃぃ……こんなの食べた気がしなぃぃ……」
「柚木、クリームがついてる」
「ッ……ッ……ッ……ほっぺた舐めないでぇぇ……ふぇぇ……」
やっとの思いでケーキを完食すれば。
比良にキスされた。
チョコレートの味がする、胸やけ大爆発必須の甘いキスだった。
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