おさななゆうしゃ

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ラルゴ

突風

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ギルドのお姉さんに北の門集合と言われたから、入ってきた門の逆方向へアステルと一緒に向かう。

やっと町についたからとりあえず宿探して寝ようとか思ってたのにアステルに巻き込まれて俺までちゃっかり参加してるし。マジで俺偉すぎ。
誰か俺の事褒めてくれて全然いいよ。

「フィン?大丈夫?」
「ん?全然余裕だけど?」

体はね?ベッドじゃないとは言え寝てはいるからね、元気っちゃ元気よ。
でもベッドで寝てないから心は疲れてるよ。
うん全然疲れてるというかしんどいというか。


「注目ーー!!!!」


ざわざわと集まって好き勝手喋ってた人もつい傾聴してしまった。


「勇敢なる諸君、よく集まってくれた!
これから我らの過ごす町を脅かす魔物たちに、我々の強さを見せつけようではないかー!!!」

「「「うぅぉぉおおおおおお!!!!」」」


いや待ってついていけない。
さっきこの町に来たばかりの新参者をここに巻き込まないで欲しい。場違い間違いありえない。

「いつもよりも数が多く、危険も計り知れない!!…くれぐれも死ぬんじゃねぇぞおまえらぁあああああ!!!、!」

「「「うぅぉぉおおおおおお!!!!!!」」」


もういいやほっとこう。

「アステル、俺らは…」

ここから離れようなんて言えなかった。


腰に下げた、村の誰からのか知らん剣を握りしめて真剣な表情のアステル。


「アステル、俺らは勝手に最前線にでも行くか。」

「フィン…?!」


メラメラとやる気と闘志に燃えるアステルの隣で、その熱で灰になりそうな俺。

なんでこうなるんだ。

行きますよ、勇者様ー。

ーーー
ーー


今更、本当に今更なんだけど。
最前線までってもちろん徒歩なわけないよね?


北の門を抜けて見えたのは立ってるだけでも感じる地響と共に大きな砂煙。


砂煙上がってるんだけどなにあれ。
魔物に驚く前に砂煙に圧倒されてるんだけどなんなの?

てか魔物ってなんなの。

くそっ、魔導書じゃなくて魔物図鑑とかそういうの読むべきだったんじゃない?

あの砂煙に向かって俺たちは進むの?まじ?本気?正気か?


いやでもこうやって考えるより今から歩けばいい感じの場所で戦闘することになるんじゃね?


そう考えてアステルを見るとアステルも同じように俺を見てた。


「よし、とりあえず行くか。」
「うん。ねぇ、フィン…」
「大丈夫。」


アステルの声が少し震えながら俺の耳に届く。


「なんのために黒の魔法使いブラックカラーになったと思ってんだ。」

俺がビビってちゃ笑えねぇ。


俺は肉眼で敵対生物の様子を探る。
なんだろうな、狼とか?くまより小さいね。

夜の散歩ナイトウォークで足音消して、ゆっくり確実に足を前へ進める。

一歩前に足を出してしまえば無意識に歩みを止めることなく進む。

太陽ってこんなに眩しいんだなぁ。


アステルも俺につられて前に進んでる。


町のハンターたちが気づく頃には俺たちはかなり前に進んでる。


はぁなんで俺こんなことに巻き込まれてんの。
恐怖を乗り越えて俺は怒りを抱えていた。

「あぶねーぞ!!!戻れ!!」


危ないことなんか承知の上だわ!!
俺はただ宿のベッドで寝たかっただけで、アステルの身分証作るかとか言って寄り道しただけでこんなことに巻き込まれ点だよこっちは!!

「行くぞ、アステル!走れ!!!突っ込むぞ!!」
「了解!」


ナイトウォークを解除してアステルより前へ。もちろん全速力で走りながら杖を使って魔法を構築する。
細かい魔法なんか使ってられるかよ、敵の位置が特定できねぇ!!あと走ってるから無理!!


もっと大きく、強くて大雑把な簡単なやつ!!そんでもってアステルを巻き込まないように、もっとはやく走れよ俺!!頑張れ俺!!


だぁぁくそぉぉぉ!!!!
ぜんっぜん思いつかねぇぇ!あとアステル足速いし、疲れて無さそうだしなんなんもう。同じ人間よね?

「くそがぁあああ!!!呪縛カースバインド!!!端まで届けぇぇ!!!!うぉ!?めっちゃエネルギー持ってかれる!?!?」


最前列だけ足止めしてどうするっていうんだよ!
一体ずつ足止めしてたりゃ日が暮れちまうって。
俺のエネルギーももたないって。


「アステル!!動き止めたやつを頼んだ!!」

「うん。」

アステルがまだ距離のあるオオカミさゆたちの方へ走り出した。
あいつ足速いんだよなぁ、。

動き止めたやつを乗り越えて来るやつがアステルと衝突する前に…ねぇちょっと待って俺本当に魔法使い?魔法使いってもっと後方からわちゃわちゃやるんじゃないの!?前線出すぎじゃね!?

でも近い方が早いし操作しやすいし、俺じゃ魔法が届かねぇんだよぉぉ。。


悩んだ時間は1秒くらい。


もぉぉぉどうにでもなれぇぇぇ!!!



考えることをやめた俺は止めてた足を再び動かして走り出す。
足の速いアステルより遅く出発したから俺は全力の全力を出さねばならない。


「うぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!」


肺がちぎれる!?無くなる!?なんか血とか吐きそうだし呼吸するだけで喉が焼けてるみたいで上手く呼吸出来ない!!
足とか途中で取れちゃうんじゃない!?

余計なことを考えながら魔法を次々と構築していく。

俺の得意なフィールドにしちゃえ!


夜の世界カリスペラ!!!」


走りながら杖を地面に一突き。
すると広がる夜の世界。

範囲指定の限定的な夜の世界が作られていく。

太陽はなんか知らないけど俺苦手なの!
魔法にエネルギーめっちゃ持ってかれるの!


はぁ呼吸が楽…な気がする。

昼間走るより夜の方がいいよね。
気持ちの問題かな?

俺はまだ全力の全力で走っている。


カースバインドは未だに継続中。
でも呼吸で魔法のエネルギーが回復していくのを感じる。
俺マジで夜と相性いいんだな。

これでカースバインド維持しながら魔法が使える。


「ふぅーーー」


アステルもオオカミさんの方に向かって走っているためデタラメな範囲を選択するとアステルも巻き込まれる。

俺は今走りながらアステルがオオカミさんの最前列に到着するまでの時間と、先頭の動けないオオカミさんを乗り越えて進んでくる集団の数と、俺の魔法の構築時間と効果範囲、発動時間について考えてる。

一瞬だけあるはずなんだよ。

オオカミに最大の被害を与えられて、アステルがギリギリ巻き込まれない瞬間が。


あ、ここだ。

俺の直感への信頼120%

考えるより先に杖を持った手が動いていた。


約2秒前に魔法構築が終わって、発動を待つだけの杖が地面目掛けて降下する。

常闇の世界エターナル・ダークネス。」


一昨日のクマさんに使ったものよりも範囲が広く一瞬にして俺の視認して指定した範囲のオオカミさんたちが姿を消した。

地面に現れた闇にオオカミさんが吸い込まれ終わった頃にアステルがオオカミさんたちの最前列に到着した。

あとはバラけてしまった動けるオオカミさんから優先的に…と考えたところで町のハンターさんたちが俺たちの所へ駆け寄ってくれた。



あとは任せろと言って、ハンターたちが俺の肩や背中を叩いて俺より前へ進んでいく。

俺はカッコ悪くも杖を地面に着いた瞬間に、足を杖に絡めてしまいそのまま転倒していた。
あと一瞬魔法の名前を言わなかったら発動しなかったんじゃない?無詠唱なんてやったことないからわかんねぇよ。

でも良かった、正直俺の脳と肺と喉と足は限界よ。


と、油断してたら目の前に一際大きなオオカミさん。

えっとこれは…まずいっと。

逃げようにも足は限界。
脳みそはパンク。
魔法のエネルギーはもう多分底が見えてる。


ガルルルルルルル!!グルァァァァァ!!!



「ぎゃぁああああああ!!うそうそうそうそうそー!!!?!?」

一際大きなオオカミさんこんにちは、いいお天気(砂煙)ですね、ご機嫌いかがですか?


ああいないと思うけど神よ、俺は何故こんなことになっているのですか。


「…フィンに触れるな。」


襲って来ようとしたオオカミさんから俺を守るように前に出たアステル。

てかまずくない?このオオカミさん大きいよ?

「アステル逃げろよ!はやく!」

「フィン、よく見て。ほかのオオカミは町のハンターたちがやってくれてる。」


そう言われて見ると町のハンターたちがあちこちで戦ってる。


まぁ大多数消したしね。俺が。


え、やだ。もしかして俺天才ってやつ?


そんなことを考えてたらアステルが狼の首を落としてた。


俺は地面に尻もち着いたまま。

「フィン。」
「あぁ、ありがとう。」


フィンに手を伸ばされ、素直に応じ
そのまま立ち上がり町の方へ進む。


「「「うぉぉおおおおおお!!英雄だー!!!」」」
「「「勇者様ー!きゃー!!」」」


そしてすごい歓声を浴びる。
もう一生分浴びたんじゃないかな。
英雄であり勇者様は俺じゃないんだけどね。
俺の隣ね。

全速力で走り抜けた門の前の平地をアステルに支えられながらゆっくり歩いていく。
もう俺の出した夜は明けていた。

俺いつ解除したんだろう?


そして討伐も終わり町の人たちにそれはもう、もみくちゃにされ、酒を飲まされ飯を食わされどんちゃんして夜に。
あれよあれよと色々あったが俺は目的達成を目前としている。


「ベッドだーー!!!!」

念願のダイブ…!、
の前に風呂だな。アステル誘っていこっと。

まだ動けるうちに大衆浴場へいくのだ。


目の前でお預けしんど。


アステルー!!どこにいるだー!


ーーー
ーー



そしてようやく俺は目的を達成しベッドに包まれている。


アステルも同じ部屋だが別のベッド。
俺が奥の窓際を陣取ってやったぜ。


はぁ今日本当に1日長かった。

「ねぇ、フィン。」

睡眠の狭間にいた俺は意識を若干浮上させる。


「ん?」

「フィンは昔から……よね。」

「なに?なんの話し?」


「なんでもないよ。じゃ、おやすみ。」


「ふーん、おやすみ。」


え?何どういうこと?
俺がなんか悪いことしたのかな?
もっと会話広げられる人間になれってこと?
えこれは無理じゃない?


そんなこと考えていたけど風呂と念願のベッドでどっと体の疲れ襲ってきてそのまま眠りについた。







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