妻×恋

かのん

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セックスレス④

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「こんな顔しているんだ……」


仕事を終え、幸にもらった下着を身に着け、ロッカーでグロスを久しぶりに塗った。最後にグロスを塗ったのは…もしかしたら一年前の今日だったかも。


鏡に映っている私の顔は、頬はほんのりピンクに火照っていて、目が潤んでいる。この顔、映画で見たことある。


要求不満の妻の顔だ。


指でワンピースの胸元を引っ張って、幸にもらったブラを見つめる。もし、今日も抱かれなかったら……私たちどうなるんだろう。


「あ……乗ります!」


閉まりかけのエレベーターに声をかけると、本田君が開くボタンを押してくれた。


「ありがとう」


軽く会釈してエレベーターに乗ると、本田君と2人きりだった。本田君とは仕事の話しかしたことがないから、密室で2人きりになると何を話せばいいのかわからない。


「あ……」


本田君の方を見ると、なぜか本田君と目が合って逸らしてしまった。別に目を逸らすことないのに。



「東野さん、こっち向いて」


「え?」


顔をあげると目の前に本田君が立っていて、頬に手を添えてきた。


「本田君!?ちょっと待っ……」


「グロス……はみ出てます。


「ありが……とう」


親指でそっとはみ出ていたグロスをぬぐってくれただけだった。
何か……期待していた自分がすごく恥ずかしい。


「じゃあ……お疲れ様でした」


エレベーターをそそくさと降りて、その場から早く離れたかった。
年下の男の子に、少しでも期待していたのが恥ずかしい。


雅人だったら……
雅人だったら、あの後キスしてくれたのだろうか。
セックスレスと同時に長くキスもしていない。


「あぁ~もうセックスレスのことは考えない!今日のお祝いのことだけ考えよう!」


「東野さん」


「えぇ!?はい!」


急に後ろから本田君に声をかけられて驚いた。
今の独り言…セックスレスって言葉聞かれていないよね?


「ど、どうしたの?」


「いや、こっちに用事があるんで」



「え?そうなの?」


「東野さんは、今日デートですか?」


「あ……うん。結婚記念日で」


「それで、泊まりなんですね」


キャリーバックを指さして聞いてきた。
キャリーバックを持っていたら、お泊まりってバレバレか……


「あ……うん。泊まったら2人でお酒飲めるかなって」


「酒はほどほどがいいんじゃないんですか?」


「え?」


「記念日のお泊まりなんでしょ?」


「あ……うん、そうだね」


お酒飲んだって、飲まなくなって…きっと雅人は私に手をだしてこない。お付き合いしている時に、お酒飲んだ後にしたことだってある。


「本田君は、家がこっちなの?」


話題を変えよう!そうしないとどんどん暗くなってしまう。


「今日は……っ」


「崇!遅い!」


本田君の後ろからいきなり抱き付いてくる女性。
巻き髪に真っ黒のコート、真っ赤なマニキュア。
本田君もイケメンだが、隣にこの女性が立つと美男美女で余計に眩しい。


「誰?」


「本田君と一緒の会社で働いている東野と申します。」


「崇と同じ会社っ…ちょっとっ!」


「じゃあ、東野さんお疲れ様でした。」


「うん、お疲れ様でした!」


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