【R18】アムール

かのん

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クリスマスプレゼント③

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“ザザァン…”



「ふぅ~寒い…まだかな…」



美優は堤防に座りながら手をこすり合わせる。



時刻は20時



寒いから巧へと買った缶コーヒーがもう冷めていた――



“ザザァン…”



朝日が眩しかった。



美優の隣には冷え切った缶コーヒーが12本転がっていた…



“ジャリッ…”



「…遅いよ…」



「…ずっとここにいたのか?」



「…だってクリスマス絶対来いって言ってたじゃない…もう26日になっちゃったよ…」



「美優、あのさ――」



「これ、クリスマスプレゼント!寒いから早く開けてみて!」



美優が巧にプレゼントを渡そうとしたら、隣に置いていた缶コーヒーが手に当たり下に数本転がった。



「あ…ちょっと待って~」



美優は堤防からおり、缶コーヒーを拾い始める。



「美優…」



巧は缶コーヒーをひとつ握ると、氷のように冷たかった。



こんなに冷たくなるまで自分を待っていたのか…そう思うと胸が締め付けられた。



「お待たせ~」



美優が缶コーヒーを拾い終わり戻ってきた。



「美優にプレゼントがあるんだ…」



そういって巧が美優にキレイな箱を差し出す。



美優が開けると中にはダイヤがたくさんついてネックレスとイヤリングだった。



「こんなの貰えないよ!借金だって返してもらって、生活費だって…」



美優は箱を閉じて巧に返そうとした。








「美優、これを売って金にしろ。」









「………え?」



「本当のクリスマスプレゼントはこっちだ。」


「これは…」










「自由だ。」










「お前も俺も自由になるんだ。」









「…どう…して?」



巧は一度目をつぶり、自分に何か言い聞かせるかのようにもう一度目を開けた。



「もともと契約結婚で、お前は家事とかする約束で、俺はお前に金を用意する約束だったけど、今マスコミにお前のことバレて全然家事とかできてねぇし…」



「そうだけど…でも!」



「お前が好きになったら面白いって思ったんだけど、ゲーム感覚で恋愛したら結構意外に早くお前俺に惚れたから飽きたっつーか…」



「…」









「金で結婚したんだから、金で離婚しよう。」









美優――



俺を嫌いになれ



顔もみたくないくらい嫌いになれ



このまま一緒にいて



優しいお前が記憶が戻って自分のせいだって苦しむ姿みたくないんだ…



たとえ思い出したとしても俺のことを嫌いになれば



きっと苦しまないですむはず



俺のために悩む姿より俺と離れて笑っていてほしい



離婚したら最初はまた色々言われると思うけど



きっとすぐまた日常の生活に戻る



俺が選んだ女が誰かに非難されるのはもう嫌だ












――離婚届が俺の愛の形なのかもしれない――










美優のほうへ振り向き、どんな表情をしているか伺った。



美優はただただ静かに涙を流していた。



“ズキン…”



朝日にあたってキラキラと光る涙を流す美優と握っている缶コーヒーの冷たさに、一日かけて悩んだ答えが揺らいだ。



巧は缶コーヒーを潰れるぐらいにギュッと握り、自分の今の感情を必死に抑えた。



「…じゃあ。」



巧は美優のほうを一度見ず、そのまま美優のところから去った…



“ザザァン…”



さっきまで隣にいた巧はあっという間にいなくなってしまった。



どうせなら波と一緒に私の涙もさらっていってほしい…



そう思いながら美優はひたすら涙を流した…



「美優!」



ヒロが走って美優のところへやってきた。



「ずっと…あれからずっとここにいたの?」



ヒロは自分が着ていたコートを脱ぎ、美優の肩にかけてあげた。



「巧は?巧は来てないの?」



美優は何も答えず涙を流していた。



「…どうして泣いてるの?何があった?」



ヒロは美優が握っている封筒に目をやる。



「離婚届…」



「ヒロ…どうしてここに?」



美優がやっと口を開いた。



「家の鍵のことがあったから、愛と交代で家で待ってたんだけど帰ってこないし、連絡もつかないし、心配できたんだ。」



「そっか…鍵渡すの忘れてた…」



「美優…」



「三人でクリスマスパーティーしてた時間に戻れればいいのに…」



美優は今度は声をあげて泣き出した。




「帰ろう。」



ヒロは美優を自分の車に乗せて家へ送っていった。
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