6 / 7
第六話 力技で解決?
しおりを挟む
結果から言うと、魔法はどうやら失敗したようだ。魅了されてやすやすと逃してくれると思っていたのだけれど……どうやら効きすぎたらしい。
後ろ手を縄でキツく縛られ、目隠しされ、昏倒させられて何処かへと移送されてしまった。今は薄暗く、窓が手の届かない高いところに一つあるだけの、四方が石でできていて、目の前には鉄格子のある部屋へと、押し込まれている。
もちろん、開きそうな鉄格子のドアには体当たりしてみたけど、びくともしなかった。
『ピンチじゃのぅ』
(そう思うんなら、助けてよ!!)
『いや、ワシ直接の干渉はできんのよ。じゃからお前さんという回りくどい方法、とっとるじゃろ?』
(何縛りゲーなのそれ?!)
『さてなぁ、ワシにもわからんの。一応様子は王子に知らせてくるわい』
(なんかもう、ツッコむの疲れた……いてらー……)
送り出す言葉を発すると、神様(仮)の気配が消えた。ほんとに助けを呼んで来てはくれそうだ。それだけでもだいぶ気持ちが楽になって、私はしょうがないからこの環境でもリラックスすることにした。何か起きた時に、体がガチガチじゃ動けないのだ。
見れば、ちゃんと一応トイレもあるし、ベッドもある。特にベッドはなぜかシーツが新品のようで……うん、考えないようにしよう。
魅了がかかりすぎるのも困ったものだあのクソジジイめ、と、力の加減具合を教えてくれなかった相手を責めることにした。
そして早々に、体力回復の意味も込めてトイレを済ませるとベッドに潜り込んで寝ることにしたのだった。
※
何時間寝ていたんだろう。
ふと、呼気が近くでして目を覚ます。
と、私の顔の前には捕まる時みたソレオレの、ちょうど唇がドアップで迫ってきていた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
私は悲鳴をあげると、手が後ろで縛られているとは自分でも思えないくらい素早く、ベッドから転げ出て立ち上がった。なるべく遠くなるよう、部屋角に置いてあったベッドから対角になる場所へと後ずさる。
「ああ、マリー。気恥ずかしいんだね。わかるよ、君はまだまっさらだ。けど大丈夫だよ。俺と一緒に大人になろう?」
言われ、ぞぞぞぞぞぉ、と背筋にひんやりと重々しい氷の様なものが通り過ぎた。
無理。無理無理無理無理無ー理ー!! いやだ、助け……
…………助けなんて来ない。いつも。
だから笑って。笑って。笑って。
けど今は、一応の力を少し、もらってる。やれる。
「……オーロラの力、そのひとかけを、我が手に!!」
ボムっという音とともに虹色の煙幕に私は包魔れる。私の服が光り輝き形状が変わっていく。煙幕がだんだんと薄くなると、ミニスカの露出が多く白とピンクと濃い紫で、レースにリボンと魔法陣モチーフのこてこて魔法少女服になった私が、爆誕していた。
「ファンタスティック☆まじかるマリー。あなたの心、満たしちゃうんだゾ」
決めポーズもばっちりだ。
♪~
あなたに出会うため 私は生まれた
そう ディステニーなの ドボン
あなた 首ったけ
私に フォーリンラブ
~♪
「きゅんしてドボン」を歌いながらソレオレの瞳を見て、ありったけの力を込めて歌越しに「ドボン」をかける。
今度はがっつりかかったようで、私の「鍵開けてほしーなぁー」のお願いも、快く引き受けてくれた。まだ歌いながらソレオレを後ろに従え、牢の様な場所を後にする。
どうやら半地下だったらしく、一階の牢へと続く階段の上にはオイコラがいたので、やっぱり歌ごしの「ドボン」をかけて無力化した。残るはリーダー格の「ゴブ」だけだ。
二人を連れて、一階へと上がると、どこかの家しかも結構な資産家というかお金持ちというかだったらしく、飾っている絵とか、壺とかが豪華になった。もしかしたら、大本命が動いたのかもしれない。慎重に、歩き進めていった。
少し歩いて。重厚そうで、家の中心っぽいところのドアが出てきたので、そっと開けてするりと入った。誰かの声が聞こえる。多分悪いやつというか、その中にゴブがいたからこれはやっぱり、依頼主も一緒にいるパターンだね☆とあたりがついた。
話が早い。
私の、歌を聞けぇぇぃぃぃい!!
♪~
私に出会うため あなたは生まれた
そう フォーチュンなの ドボン
あなた 沼ずぶん
私に 胸キュンラブ
~♪
突然の歌に、その場にいた全員がこちらを凝視する。ハマった。
私は「ドボン」をありったけの力で全員にかける。少しとろんとした目になったのを確認してから、歌うのをやめた。
バン!!
と同時に勢いよくこの部屋のもう一つあったドアが開いた。マルク様だ。王子は私を見るなり後続を入れずにドアを閉める。「ちょ、王子?!」「すまない、少し時間をくれ。すぐ合図する」そんなやりとりの後、こちらへとずんずん歩いてきた。
何事だろう――
そう思ったのもちょっとだけで、すぐに抱きしめられた。
なんで……
「全く、君って奴はっ……!」
「……アンナ様は、無事?」
「君が逃したからね」
「それならよかった」
「よくない。心配したんだ。しかもこの格好で、魅了も結構使ったでしょう?」
「使わないと、非力な女子は荒事できないんですぅー」
まだ抱かれたままで、けどなんだか少し責められてる気がしたから、ぶーたれながら返事をする。すると、少し王子の雰囲気が柔らかくなった、ような、気がした。気のせいかもだけど。
後ろ手を縄でキツく縛られ、目隠しされ、昏倒させられて何処かへと移送されてしまった。今は薄暗く、窓が手の届かない高いところに一つあるだけの、四方が石でできていて、目の前には鉄格子のある部屋へと、押し込まれている。
もちろん、開きそうな鉄格子のドアには体当たりしてみたけど、びくともしなかった。
『ピンチじゃのぅ』
(そう思うんなら、助けてよ!!)
『いや、ワシ直接の干渉はできんのよ。じゃからお前さんという回りくどい方法、とっとるじゃろ?』
(何縛りゲーなのそれ?!)
『さてなぁ、ワシにもわからんの。一応様子は王子に知らせてくるわい』
(なんかもう、ツッコむの疲れた……いてらー……)
送り出す言葉を発すると、神様(仮)の気配が消えた。ほんとに助けを呼んで来てはくれそうだ。それだけでもだいぶ気持ちが楽になって、私はしょうがないからこの環境でもリラックスすることにした。何か起きた時に、体がガチガチじゃ動けないのだ。
見れば、ちゃんと一応トイレもあるし、ベッドもある。特にベッドはなぜかシーツが新品のようで……うん、考えないようにしよう。
魅了がかかりすぎるのも困ったものだあのクソジジイめ、と、力の加減具合を教えてくれなかった相手を責めることにした。
そして早々に、体力回復の意味も込めてトイレを済ませるとベッドに潜り込んで寝ることにしたのだった。
※
何時間寝ていたんだろう。
ふと、呼気が近くでして目を覚ます。
と、私の顔の前には捕まる時みたソレオレの、ちょうど唇がドアップで迫ってきていた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
私は悲鳴をあげると、手が後ろで縛られているとは自分でも思えないくらい素早く、ベッドから転げ出て立ち上がった。なるべく遠くなるよう、部屋角に置いてあったベッドから対角になる場所へと後ずさる。
「ああ、マリー。気恥ずかしいんだね。わかるよ、君はまだまっさらだ。けど大丈夫だよ。俺と一緒に大人になろう?」
言われ、ぞぞぞぞぞぉ、と背筋にひんやりと重々しい氷の様なものが通り過ぎた。
無理。無理無理無理無理無ー理ー!! いやだ、助け……
…………助けなんて来ない。いつも。
だから笑って。笑って。笑って。
けど今は、一応の力を少し、もらってる。やれる。
「……オーロラの力、そのひとかけを、我が手に!!」
ボムっという音とともに虹色の煙幕に私は包魔れる。私の服が光り輝き形状が変わっていく。煙幕がだんだんと薄くなると、ミニスカの露出が多く白とピンクと濃い紫で、レースにリボンと魔法陣モチーフのこてこて魔法少女服になった私が、爆誕していた。
「ファンタスティック☆まじかるマリー。あなたの心、満たしちゃうんだゾ」
決めポーズもばっちりだ。
♪~
あなたに出会うため 私は生まれた
そう ディステニーなの ドボン
あなた 首ったけ
私に フォーリンラブ
~♪
「きゅんしてドボン」を歌いながらソレオレの瞳を見て、ありったけの力を込めて歌越しに「ドボン」をかける。
今度はがっつりかかったようで、私の「鍵開けてほしーなぁー」のお願いも、快く引き受けてくれた。まだ歌いながらソレオレを後ろに従え、牢の様な場所を後にする。
どうやら半地下だったらしく、一階の牢へと続く階段の上にはオイコラがいたので、やっぱり歌ごしの「ドボン」をかけて無力化した。残るはリーダー格の「ゴブ」だけだ。
二人を連れて、一階へと上がると、どこかの家しかも結構な資産家というかお金持ちというかだったらしく、飾っている絵とか、壺とかが豪華になった。もしかしたら、大本命が動いたのかもしれない。慎重に、歩き進めていった。
少し歩いて。重厚そうで、家の中心っぽいところのドアが出てきたので、そっと開けてするりと入った。誰かの声が聞こえる。多分悪いやつというか、その中にゴブがいたからこれはやっぱり、依頼主も一緒にいるパターンだね☆とあたりがついた。
話が早い。
私の、歌を聞けぇぇぃぃぃい!!
♪~
私に出会うため あなたは生まれた
そう フォーチュンなの ドボン
あなた 沼ずぶん
私に 胸キュンラブ
~♪
突然の歌に、その場にいた全員がこちらを凝視する。ハマった。
私は「ドボン」をありったけの力で全員にかける。少しとろんとした目になったのを確認してから、歌うのをやめた。
バン!!
と同時に勢いよくこの部屋のもう一つあったドアが開いた。マルク様だ。王子は私を見るなり後続を入れずにドアを閉める。「ちょ、王子?!」「すまない、少し時間をくれ。すぐ合図する」そんなやりとりの後、こちらへとずんずん歩いてきた。
何事だろう――
そう思ったのもちょっとだけで、すぐに抱きしめられた。
なんで……
「全く、君って奴はっ……!」
「……アンナ様は、無事?」
「君が逃したからね」
「それならよかった」
「よくない。心配したんだ。しかもこの格好で、魅了も結構使ったでしょう?」
「使わないと、非力な女子は荒事できないんですぅー」
まだ抱かれたままで、けどなんだか少し責められてる気がしたから、ぶーたれながら返事をする。すると、少し王子の雰囲気が柔らかくなった、ような、気がした。気のせいかもだけど。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる