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最終話 もう一度、君と — Once More, With You
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白い壁と機械の低い電子音。
花の香りも、薬品の匂いに押しつぶされてしまうほど無機質な病室の空気。
個室のドアを開けた瞬間、悠斗は足が止まった。
「……瑛司」
ベッドに横たわる彼は、額に白い包帯を巻かれ、腕には点滴の針が刺さっていた。
電話口で匠真さんから「命に別状はない。軽い脳震盪と打撲だから、念のための検査入院だ」と聞いていた。
頭では分かっていたはずなのに、実際に弱々しく横たわるその姿を目の当たりにすると、全身の血の気が引いていく。
もし、ほんの少し車のスピードが速かったら。
もし、頭の打ちどころが悪かったら。
最悪の可能性が頭をよぎり、呼吸が浅くなる。
言葉よりも先に喉が震え、ベッドのそばへ駆け寄っていた。
「大丈夫、なの……? 怪我は……」
その声に、瑛司がゆっくりと目を開ける。焦点が合うまでに数秒かかったのか、何度か瞬きを繰り返した後、黒い瞳が真っ直ぐに悠斗を射抜いた。
その視線はいつもと同じ熱を持っているのに、顔色はひどく悪い。
「……大したことない。青信号を渡ってたら、前方不注意の車にぶつかられてな。倒れたときに頭を打っただけだ」
努めて明るく言う声は、微かに掠れていた。
「医者が心配性で、三、四日ここで大人しくしてろってさ」
その気遣いが、逆に胸を締めつける。
俺が突き放したから? 俺のことで、考え事をしていたから……?
後悔と罪悪感が押し寄せ、言おうと思っていた言葉とは違う言葉が、思わず零れ落ちた。
「心配して、来てしまった……もう、二度と会わないって決めてたのに」
瑛司の唇の端が、ほんの少しだけ緩んだ。
弱々しいのに、その笑みはひどく優しい。
「どんな理由でもいい。おまえが来てくれたことが、嬉しいよ」
その一言で、張り詰めていた糸が切れたように涙が溢れた。
もう意地を張っていることなんてできなかった。
――やっぱり、俺はこの人から逃げられない。
椅子に腰を下ろし、シーツを握りしめる自分の指先を見つめたまま、悠斗はようやく口を開いた。声が、自分のものではないみたいに震えていた。
「……俺さ、昔……付き合ってたやつに、裏切られたことがあるんだ」
瑛司は何も言わない。ただ、その視線が俺の一挙手一投足を見守っているのが、空気の張り詰めるような密度で分かった。
「最初に告白してきたのは、向こうだった。すごく大事にされてるって、愛されてるって……本気で信じてた。でも、気づいたら、いつの間にか俺のほうが必死になってて……。会いたいって、しつこく言われるのが重かったのかもしれない。気づいたら、そいつは……俺じゃない、他の誰かと付き合ってた」
絞り出すように言葉を吐くたび、胸の奥で瘡蓋になっていたはずの傷口が、じくじくと開いていくようだった。思い出すだけで、今も息が詰まる。
「俺と会ってるのと同じ顔で、笑ってたんだ。信じてたもの全部が、足元から崩れていく音がした」
だから決めたんだ、と続ける。
「もう本気で誰かを好きになるのはやめようって。セフレなら、裏切るも裏切られるもない。傷つかずに済むって……。でも、瑛司と会って、身体を重ねるうちに、ダメだった。おまえのことを、本気で好きになってた。好きになればなるほど、あの時と同じ痛みが蘇ってきて……また裏切られるんじゃないかって、怖くてたまらなくなって……だから、逃げたんだ」
俯いたままの悠斗の肩が、小さく震えている。点滴スタンドに手をかけ、瑛司はゆっくりとベッドから身を起こした。傷の痛みに顔をしかめるのも構わず、椅子の前に立つ。
「俺は裏切らない」
静かだが、腹の底から響くような声だった。
「……あいつも、言ってたんだよ」
悠斗は顔を上げないまま、か細い声で呟く。
「俺だけを愛してるって、何度も。でも結局、裏切った。言葉なんて、簡単に嘘になる」
重く垂れ込める沈黙。
その沈黙を破るように、瑛司の声が、今度は頭上から低く響いた。
「じゃあ、四年間――おまえを探し続けた俺の時間は、それでも信用できないのか?」
その言葉は、まるで雷のように悠斗の胸を撃ち抜いた。
ハッと顔を上げると、真っ直ぐに見下ろす瑛司の瞳とぶつかる。その瞳には、怒りでも呆れでもなく、深い痛みと揺るぎない愛情の色が宿っていた。
四年という歳月。その途方もない重み。
忘れようと思えば忘れられたはずの時間。他の誰かを見つけることだってできただろうに、この男は、俺だけを探し続けていた。
その事実が、悠斗の心の奥底に凍りついていた不信感を、激しく揺さぶる。
失う恐怖と同時に、胸の奥で小さな声が囁く。
――信じてみても、いいんじゃないか。
そのとき、初めて悟った。
本当に怖いのは、裏切られることじゃない。
この瞳に映る愛情も、俺を求める腕も、声も、そのすべてを失ってしまうことの方が、もっとずっと怖い。
「……こわい、んだ。瑛司を、失うのが……」
ようやく絞り出した声は涙で濡れ、言葉にならなかった。
その瞬間、瑛司の腕が伸びてきて、強く、けれど壊れ物を扱うように優しく、椅子から引き寄せられる。気づけば、薬品の匂いが混じる逞しい胸の中に、すっぽりと包まれていた。
「やっと捕まえた」
耳元で囁かれた声が、震えている。
「もう二度と、離さない」
瑛司はそっと悠斗の体を離すと、涙で濡れた頬に手を添え、その顎を優しく持ち上げた。
そして、触れるだけの、けれど何よりも雄弁なキスを落とす。それは、四年間分の焦がれた想いと、これから先の永遠を誓うような、深く、優しい口づけだった。
******
退院の日。
悠斗は荷物を抱え、病院の玄関で待っていた。
瑛司を見た瞬間、悠斗の胸の奥に安堵が広がった。
タクシーに揺られて彼のマンションに着くと、玄関の空気が一気に懐かしさで満たされる。
置きっぱなしの合鍵。消せなかった記憶。すべてがつながるように思えた。
ベッドに腰を下ろした瑛司は、悠斗を引き寄せる。
唇が触れた瞬間、体の奥が熱を帯びた。
包帯があるからと気遣う余裕は、すぐに溶けていった。
もつれるようにシーツに倒れ込み、互いの衣服を剥ぎ取っていく。露わになった肌に唇を這わせながら、悠斗は震える声で尋ねた。ずっと心の底にあった、最後の恐怖を振り払うために。
「……本当に、裏切らないんだな」
「裏切るくらいなら死んだ方がましだ」
真剣な声で言い切った瑛司は、囁きと同時に、熱い口づけを落とした。それはもう、言葉はいらないという合図だった。
指が肌をなぞるたび、甘い痺れが背筋を駆け上がる。瑛司の指は、悠斗の身体のすべてを記憶に刻みつけるように、執拗に、そして丁寧に愛撫していく。それは、四年間触れたくても触れられなかった渇望そのものだった。
「……ぁ、えいじ……っ」
悠斗もまた、逞しい背中に腕を回し、その肌の熱を確かめる。指先が額の包帯にそっと触れると、瑛司が愛おしそうに目を細めた。
「悠斗……」
名前を呼ばれるだけで、身体の奥が疼く。
これまでとは違う。これは、ただ欲望をぶつけ合うだけの行為じゃない。空白だった時間を埋め、互いの魂の輪郭を確かめ合うための、神聖な儀式にも似ていた。
瑛司は焦らすように悠斗の身体を隅々まで味わい尽くし、悠斗が完全に自分に身を委ね、甘い声で彼の名前を呼ぶまで、決して先を急ごうとはしなかった。
「もう、我慢できないか?」
耳元で囁かれ、悠斗はこくりと頷く。
ゆっくりと、けれど確かな熱を持って、二つの身体が一つに繋がる。隙間なく満たされる感覚に、思わず安堵のため息が漏れた。
「愛してる」
律動の合間に、瑛司が何度も繰り返す。
「離さない。絶対に」
その言葉が、過去の傷を洗い流していくようだった。悠斗はただ、声を上げ、その首に強く縋りつく。応えるように腰を揺らし、もっと深く、もっと奥まで瑛司を求める。
互いの匂い、汗の味、深く刻まれていく感触。そのすべてが、「愛されている」という揺るぎない証拠になっていく。
やがて、身体の芯が灼けるような熱を帯び、視界が白く染まる。瑛司の腕の中で激しく痙攣し、すべてを解き放った瞬間、瑛司もまた、咆哮のような声を上げて悠斗の奥深くへと注ぎ込んだ。
荒い呼吸を整えながら、汗ばんだ額を寄せ合う。
夜が更けても、二人の熱は途切れなかった。何度も、何度も互いを求め合い、まるで失われた四年間の夜を取り戻すかのように、夜明けまでお互いの存在を貪り合った。
*******
――数週間後。
瑛司のマンション。
段ボールを手に、悠斗はふっと笑った。
「これで全部かな」
カーテン越しに差す午後の光。
その光に照らされる瑛司の横顔を見て、胸がじんと温かくなる。
もう逃げない。
もう隠さない。
もう一度、君と――ここから始める。
「なに笑ってるんだ」
「べつに。……なんでもない」
肩を抱かれ、額を重ねる。
初々しい照れと幸福が混ざり合い、二人は小さく笑った。
<完>
************
瑛司と悠斗の物語は、いったん完結です。
ご愛読ありがとうございました!
次は、6歳年下のモデル攻めが、頭固めなサラリーマン受けをぐいぐい責める「陽翔 × 悠真」 編の予定です。
今回の物語「もう一度、君と — Once More, With You」は、YouTubeの楽曲をベースに作成したものです。良かったら、楽曲の方も聴いてみてくださいね♫
YouTubeで配信中の「もう一度、君と — Once More, With You」はこちら⇒https://youtu.be/Mna1d1GiGjU
花の香りも、薬品の匂いに押しつぶされてしまうほど無機質な病室の空気。
個室のドアを開けた瞬間、悠斗は足が止まった。
「……瑛司」
ベッドに横たわる彼は、額に白い包帯を巻かれ、腕には点滴の針が刺さっていた。
電話口で匠真さんから「命に別状はない。軽い脳震盪と打撲だから、念のための検査入院だ」と聞いていた。
頭では分かっていたはずなのに、実際に弱々しく横たわるその姿を目の当たりにすると、全身の血の気が引いていく。
もし、ほんの少し車のスピードが速かったら。
もし、頭の打ちどころが悪かったら。
最悪の可能性が頭をよぎり、呼吸が浅くなる。
言葉よりも先に喉が震え、ベッドのそばへ駆け寄っていた。
「大丈夫、なの……? 怪我は……」
その声に、瑛司がゆっくりと目を開ける。焦点が合うまでに数秒かかったのか、何度か瞬きを繰り返した後、黒い瞳が真っ直ぐに悠斗を射抜いた。
その視線はいつもと同じ熱を持っているのに、顔色はひどく悪い。
「……大したことない。青信号を渡ってたら、前方不注意の車にぶつかられてな。倒れたときに頭を打っただけだ」
努めて明るく言う声は、微かに掠れていた。
「医者が心配性で、三、四日ここで大人しくしてろってさ」
その気遣いが、逆に胸を締めつける。
俺が突き放したから? 俺のことで、考え事をしていたから……?
後悔と罪悪感が押し寄せ、言おうと思っていた言葉とは違う言葉が、思わず零れ落ちた。
「心配して、来てしまった……もう、二度と会わないって決めてたのに」
瑛司の唇の端が、ほんの少しだけ緩んだ。
弱々しいのに、その笑みはひどく優しい。
「どんな理由でもいい。おまえが来てくれたことが、嬉しいよ」
その一言で、張り詰めていた糸が切れたように涙が溢れた。
もう意地を張っていることなんてできなかった。
――やっぱり、俺はこの人から逃げられない。
椅子に腰を下ろし、シーツを握りしめる自分の指先を見つめたまま、悠斗はようやく口を開いた。声が、自分のものではないみたいに震えていた。
「……俺さ、昔……付き合ってたやつに、裏切られたことがあるんだ」
瑛司は何も言わない。ただ、その視線が俺の一挙手一投足を見守っているのが、空気の張り詰めるような密度で分かった。
「最初に告白してきたのは、向こうだった。すごく大事にされてるって、愛されてるって……本気で信じてた。でも、気づいたら、いつの間にか俺のほうが必死になってて……。会いたいって、しつこく言われるのが重かったのかもしれない。気づいたら、そいつは……俺じゃない、他の誰かと付き合ってた」
絞り出すように言葉を吐くたび、胸の奥で瘡蓋になっていたはずの傷口が、じくじくと開いていくようだった。思い出すだけで、今も息が詰まる。
「俺と会ってるのと同じ顔で、笑ってたんだ。信じてたもの全部が、足元から崩れていく音がした」
だから決めたんだ、と続ける。
「もう本気で誰かを好きになるのはやめようって。セフレなら、裏切るも裏切られるもない。傷つかずに済むって……。でも、瑛司と会って、身体を重ねるうちに、ダメだった。おまえのことを、本気で好きになってた。好きになればなるほど、あの時と同じ痛みが蘇ってきて……また裏切られるんじゃないかって、怖くてたまらなくなって……だから、逃げたんだ」
俯いたままの悠斗の肩が、小さく震えている。点滴スタンドに手をかけ、瑛司はゆっくりとベッドから身を起こした。傷の痛みに顔をしかめるのも構わず、椅子の前に立つ。
「俺は裏切らない」
静かだが、腹の底から響くような声だった。
「……あいつも、言ってたんだよ」
悠斗は顔を上げないまま、か細い声で呟く。
「俺だけを愛してるって、何度も。でも結局、裏切った。言葉なんて、簡単に嘘になる」
重く垂れ込める沈黙。
その沈黙を破るように、瑛司の声が、今度は頭上から低く響いた。
「じゃあ、四年間――おまえを探し続けた俺の時間は、それでも信用できないのか?」
その言葉は、まるで雷のように悠斗の胸を撃ち抜いた。
ハッと顔を上げると、真っ直ぐに見下ろす瑛司の瞳とぶつかる。その瞳には、怒りでも呆れでもなく、深い痛みと揺るぎない愛情の色が宿っていた。
四年という歳月。その途方もない重み。
忘れようと思えば忘れられたはずの時間。他の誰かを見つけることだってできただろうに、この男は、俺だけを探し続けていた。
その事実が、悠斗の心の奥底に凍りついていた不信感を、激しく揺さぶる。
失う恐怖と同時に、胸の奥で小さな声が囁く。
――信じてみても、いいんじゃないか。
そのとき、初めて悟った。
本当に怖いのは、裏切られることじゃない。
この瞳に映る愛情も、俺を求める腕も、声も、そのすべてを失ってしまうことの方が、もっとずっと怖い。
「……こわい、んだ。瑛司を、失うのが……」
ようやく絞り出した声は涙で濡れ、言葉にならなかった。
その瞬間、瑛司の腕が伸びてきて、強く、けれど壊れ物を扱うように優しく、椅子から引き寄せられる。気づけば、薬品の匂いが混じる逞しい胸の中に、すっぽりと包まれていた。
「やっと捕まえた」
耳元で囁かれた声が、震えている。
「もう二度と、離さない」
瑛司はそっと悠斗の体を離すと、涙で濡れた頬に手を添え、その顎を優しく持ち上げた。
そして、触れるだけの、けれど何よりも雄弁なキスを落とす。それは、四年間分の焦がれた想いと、これから先の永遠を誓うような、深く、優しい口づけだった。
******
退院の日。
悠斗は荷物を抱え、病院の玄関で待っていた。
瑛司を見た瞬間、悠斗の胸の奥に安堵が広がった。
タクシーに揺られて彼のマンションに着くと、玄関の空気が一気に懐かしさで満たされる。
置きっぱなしの合鍵。消せなかった記憶。すべてがつながるように思えた。
ベッドに腰を下ろした瑛司は、悠斗を引き寄せる。
唇が触れた瞬間、体の奥が熱を帯びた。
包帯があるからと気遣う余裕は、すぐに溶けていった。
もつれるようにシーツに倒れ込み、互いの衣服を剥ぎ取っていく。露わになった肌に唇を這わせながら、悠斗は震える声で尋ねた。ずっと心の底にあった、最後の恐怖を振り払うために。
「……本当に、裏切らないんだな」
「裏切るくらいなら死んだ方がましだ」
真剣な声で言い切った瑛司は、囁きと同時に、熱い口づけを落とした。それはもう、言葉はいらないという合図だった。
指が肌をなぞるたび、甘い痺れが背筋を駆け上がる。瑛司の指は、悠斗の身体のすべてを記憶に刻みつけるように、執拗に、そして丁寧に愛撫していく。それは、四年間触れたくても触れられなかった渇望そのものだった。
「……ぁ、えいじ……っ」
悠斗もまた、逞しい背中に腕を回し、その肌の熱を確かめる。指先が額の包帯にそっと触れると、瑛司が愛おしそうに目を細めた。
「悠斗……」
名前を呼ばれるだけで、身体の奥が疼く。
これまでとは違う。これは、ただ欲望をぶつけ合うだけの行為じゃない。空白だった時間を埋め、互いの魂の輪郭を確かめ合うための、神聖な儀式にも似ていた。
瑛司は焦らすように悠斗の身体を隅々まで味わい尽くし、悠斗が完全に自分に身を委ね、甘い声で彼の名前を呼ぶまで、決して先を急ごうとはしなかった。
「もう、我慢できないか?」
耳元で囁かれ、悠斗はこくりと頷く。
ゆっくりと、けれど確かな熱を持って、二つの身体が一つに繋がる。隙間なく満たされる感覚に、思わず安堵のため息が漏れた。
「愛してる」
律動の合間に、瑛司が何度も繰り返す。
「離さない。絶対に」
その言葉が、過去の傷を洗い流していくようだった。悠斗はただ、声を上げ、その首に強く縋りつく。応えるように腰を揺らし、もっと深く、もっと奥まで瑛司を求める。
互いの匂い、汗の味、深く刻まれていく感触。そのすべてが、「愛されている」という揺るぎない証拠になっていく。
やがて、身体の芯が灼けるような熱を帯び、視界が白く染まる。瑛司の腕の中で激しく痙攣し、すべてを解き放った瞬間、瑛司もまた、咆哮のような声を上げて悠斗の奥深くへと注ぎ込んだ。
荒い呼吸を整えながら、汗ばんだ額を寄せ合う。
夜が更けても、二人の熱は途切れなかった。何度も、何度も互いを求め合い、まるで失われた四年間の夜を取り戻すかのように、夜明けまでお互いの存在を貪り合った。
*******
――数週間後。
瑛司のマンション。
段ボールを手に、悠斗はふっと笑った。
「これで全部かな」
カーテン越しに差す午後の光。
その光に照らされる瑛司の横顔を見て、胸がじんと温かくなる。
もう逃げない。
もう隠さない。
もう一度、君と――ここから始める。
「なに笑ってるんだ」
「べつに。……なんでもない」
肩を抱かれ、額を重ねる。
初々しい照れと幸福が混ざり合い、二人は小さく笑った。
<完>
************
瑛司と悠斗の物語は、いったん完結です。
ご愛読ありがとうございました!
次は、6歳年下のモデル攻めが、頭固めなサラリーマン受けをぐいぐい責める「陽翔 × 悠真」 編の予定です。
今回の物語「もう一度、君と — Once More, With You」は、YouTubeの楽曲をベースに作成したものです。良かったら、楽曲の方も聴いてみてくださいね♫
YouTubeで配信中の「もう一度、君と — Once More, With You」はこちら⇒https://youtu.be/Mna1d1GiGjU
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