聖なる王女はベッドの上で帝国を救う

梵天丸

文字の大きさ
5 / 61

第五話 こんなことをするの?

しおりを挟む
ヴァリス帝国の宮殿にある図書室は、リステア王国の王立図書館とは比べものにならないほど豪華で広く、蔵書の種類も豊富だった。
堅苦しいものばかりではなく、レティシアが探していた恋愛小説も豊富に取りそろえられていた。

「妃殿下、こちらなどはいかがでしょう?」

ナタリアがレティシアの役に立ちそうな恋愛小説を見繕って渡してくれる。
図書室の司書によると、蔵書は申告せずに自由に部屋に持ち帰って読んでもかまわないらしい。
ナタリアが渡してくれた恋愛小説の中には、タイトルを口に出すのも恥ずかしい作品もあったので、申告無しで借りられるのはありがたいことだった。
たとえばーー。

『ある日の午後の情事』
『淫らな注文』
『あなたの熱い棒で貫いてーー』
『ベッドが揺れる夜』
『あなたの指先が私の体に火をともす』

(絶対に、誰にも見つからないように読まないといけないわね…)

レティシアは周囲を見回し、誰も見ていないのを確認してから、選んだ10冊程度の恋愛小説をナタリアが持ってきたバスケットの中に入れた。
恋愛小説だけを借りていくのは気持ちが引けたので、レティシアはバスケットの中に帝国の歴史や伝説に関する本も入れておいた。

必要なものを手に入れた満足感を感じながらレティシアが部屋に戻ろうとすると、クリストフが歩いてくるのが見えた。

「図書室へお出かけでしたか?」
「はい」
「良い本は見つかりましたか?」

そう聞かれたので、レティシアは平静を装いながら答える。

「はい、帝国の歴史に関する本などを借りてきました」
「そうですか。分かりやすい帝国の歴史に関する本なら、いくつか分かりやすいものを持っていますから、お持ちしましょうか?」
「ええ、そうしていただけると助かります」

結婚式翌日だというのにクリストフは公務が忙しいようで、少し立ち話をしただけで仕事に戻っていった。
レティシアにもさまざま公務はあるのだろうが、まずは帝国に慣れることが先ということで、公務は徐々に覚えていくことになっている。


部屋に戻ったレティシアは、さっそく借りてきた恋愛小説を読み始めた。
そこに書かれていた内容は、レティシアがこれまで生きてきた中で触れたことのないような衝撃的なものばかりだった。

(え? ど、どうしてそんなことをするの…?)

…と思うような行為も豊富に描かれていた。
たとえば、愛し合う男女が、互いの大事なところを舌で舐めるという行為。
性教育で習ったのは、男性の大事なものを女性絵の大事なところに入れるということに終始していた。
そして入れたもので女性の大事なところを擦り揚げていくうちに、男性は女性の体の中に子どもが生まれる元となる種を注ぎ込む。
そして、未来の帝国の皇帝となる子どもが生まれるのだという。
その性教育の内容は、子孫を残し帝国を維持していくために必要なもので、大切な行為だと思えた。
しかし、相手の体を舐めるという行為は、帝国の維持に必要なのだろうか…。
皇太子妃の仕事として、必要なものなのだろうか…。

ただ、登場人物の男女のどちらも満足していたのだから、そうすることがセオリーなのかもしれない。

(そういえば…クリストフ様に胸を触られたとき、体が変な感じになった…)

レティシアは昨夜の行為を思い出し、顔が熱くなるのを感じた。

(あのまま続けていれば、小説に出てくるヒロインのように「イク」ということが起こるのかしら…)

女性は「イク」瞬間、激しく体を震わせ、堪らずに声をあげてしまうのだという。
そんな経験を、これからレティシアはすることになるのだろうか…。

(これは小説の中のお話だもの…実際には違うかもしれないし…)

自分がこの小説のヒロインのようになってしまうということは、レティシアにとって現実感の湧かない話だった。

「ふぅ…今日はこれぐらいにしておきましょう。なんだか顔が熱くなってきたわ…」

小説を閉じたとき、部屋に侍女のポーラが飛び込んできた。

「妃殿下、大変です! 皇太子殿下がお倒れになりました!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu
恋愛
 人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて…… 「オレを好きになるまで離してやんない。」

処理中です...