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第十話 皇帝の命令
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「大丈夫ですか?」
ベッドの上でぐったりしているレティシアに話しかけても、反応はない。
どうやら気を失ってしまったようだ。
クリストフは顔を上気させたまま意識をうしなったレティシアの唇にキスをする。
「……」
自分でもどうしてそういう行動に出たのか、クリストフには理解できなかった。
ただ、なんだか無性にレティシアが愛おしく感じられたのだ。
「おやすみなさい」
クリストフはそうささやいて、レティシアの体に布団をかけた。
レティシアが目を覚ましたとき、そこは自分の部屋ではなかった。
「私…どうなったんだっけ…?」
少しずつ頭が覚醒していくにつれ、レティシアはこのベッドの上で行われたことを思い出した。
意識を失う直前の記憶は、クリストフの手があの部分を触って、体が熱くなって…恥ずかしい声をあげていた…。
「あぁ…どうしよう…」
ベッドでの行為を思い出すと、顔が熱くなってくる。
あられもない姿で身を投げ出し、自分でも出したことのないような卑猥な声をあげていた。
そして…。
「あれが、イクってこと…?」
レティシアが経験したことがイクということなのだったら、確かに小説に書かれていた通りのことがおきた。
あんな経験は、レティシアが生まれてから初めてのことだった。
自分の意思とは無関係に声が出てしまい、体が震えてしまう…。
「陛下からもらったお茶がなければ、とても耐えられなかったわ…」
皇帝から贈られた茶は、レティシアの理性を半分吹き飛ばしてくれた。
(私だけじゃない…クリストフ様も…)
イッたのはレティシアだけではなく、クリストフもだった。
レティシアは恋愛小説で読んだのと同じようにして、クリストフを導いたのだった。
それが正しい方法かどうかも分からないまま、クリストフの体の中心のものをさわり続けているうちに、彼もイッたのだった。
そのことについては、良かったと思う。
でも……。
「また、最後までできなかったわ…」
皇帝から贈られた茶を飲んでも、やはりまた最後まですることはできなかった。
世の中の夫婦たちは、どうやってスムーズに初夜を終えているのだろう。
レティシアは、自分たちが越えられないハードルを軽々と越えているであろう、世の中の夫婦や恋人たちが、少し羨ましく感じた。
レティシアとの行為の後、クリストフは公務に戻っていた。
皇太子としての仕事は多岐にわたり、皇帝が言うようにゆっくりと休んでいる暇はなかった。
(それに、あのままレティシアと同じ部屋にいたら、またおかしな気分になってしまう)
眠っているレティシアに手を出してしまうかもしれない…そんな危機感から、クリストフは執務室に戻ってきたのだ。
「クリストフ、ちゃんと済ませたのか?」
皇太子が公務に戻ったと聞き、ルーデンが執務室にやって来た。
「父上、これは私たち夫婦の問題です。レティシアに小言を言ったり、妙な茶を送りつけるのはやめてください」
クリストフはレティシアから聞いた話を思い出して父に抗議した。
「しかしやることをやらねば、お前の体は…」
「当面は問題ありません。レティシアとは自然な流れでできれば良いと考えています」
「普通の夫婦は、初夜で済ませるものだぞ!」
悠長なことを言う息子の言葉に、気の短いルーデンはいらだった。
「世の中にはごまんと夫婦はいるのですから、私たちのように時間のかかる夫婦もいましょう」
「普通の夫婦ならそれでかまわない。お前の健康には、帝国の未来がかかっておるのだぞ!」
「分かっています」
「分かっておらぬではないか!今日は倒れたのだぞ!それだけ、お前の体の中の闇の支配が強まっているということだろう?」
今日倒れてしまったことをつつかれては、クリストフも言葉がなかった。
軍人として日々鍛錬に励み、鍛え抜いた体がそう簡単に倒れるはずがない。
こんなことが続けば、皇太子の健康を疑うものが出てくるだろう。
皇帝が心配するのも理解できる。
「とにかく、もう少しだけお待ちください」
「いや、待てぬ。今夜にはちゃんと済ませろ。これは皇帝としての命令だ。できないというのなら、それなりの処罰を覚悟しろ。お前だけではなく、皇太子妃もだ。このことは皇太子妃にも伝えておく」
「父上…っ…」
クリストフの反論を聞く気もないように、皇帝は執務室の扉を乱暴に閉めて出て行った。
ベッドの上でぐったりしているレティシアに話しかけても、反応はない。
どうやら気を失ってしまったようだ。
クリストフは顔を上気させたまま意識をうしなったレティシアの唇にキスをする。
「……」
自分でもどうしてそういう行動に出たのか、クリストフには理解できなかった。
ただ、なんだか無性にレティシアが愛おしく感じられたのだ。
「おやすみなさい」
クリストフはそうささやいて、レティシアの体に布団をかけた。
レティシアが目を覚ましたとき、そこは自分の部屋ではなかった。
「私…どうなったんだっけ…?」
少しずつ頭が覚醒していくにつれ、レティシアはこのベッドの上で行われたことを思い出した。
意識を失う直前の記憶は、クリストフの手があの部分を触って、体が熱くなって…恥ずかしい声をあげていた…。
「あぁ…どうしよう…」
ベッドでの行為を思い出すと、顔が熱くなってくる。
あられもない姿で身を投げ出し、自分でも出したことのないような卑猥な声をあげていた。
そして…。
「あれが、イクってこと…?」
レティシアが経験したことがイクということなのだったら、確かに小説に書かれていた通りのことがおきた。
あんな経験は、レティシアが生まれてから初めてのことだった。
自分の意思とは無関係に声が出てしまい、体が震えてしまう…。
「陛下からもらったお茶がなければ、とても耐えられなかったわ…」
皇帝から贈られた茶は、レティシアの理性を半分吹き飛ばしてくれた。
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そのことについては、良かったと思う。
でも……。
「また、最後までできなかったわ…」
皇帝から贈られた茶を飲んでも、やはりまた最後まですることはできなかった。
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レティシアは、自分たちが越えられないハードルを軽々と越えているであろう、世の中の夫婦や恋人たちが、少し羨ましく感じた。
レティシアとの行為の後、クリストフは公務に戻っていた。
皇太子としての仕事は多岐にわたり、皇帝が言うようにゆっくりと休んでいる暇はなかった。
(それに、あのままレティシアと同じ部屋にいたら、またおかしな気分になってしまう)
眠っているレティシアに手を出してしまうかもしれない…そんな危機感から、クリストフは執務室に戻ってきたのだ。
「クリストフ、ちゃんと済ませたのか?」
皇太子が公務に戻ったと聞き、ルーデンが執務室にやって来た。
「父上、これは私たち夫婦の問題です。レティシアに小言を言ったり、妙な茶を送りつけるのはやめてください」
クリストフはレティシアから聞いた話を思い出して父に抗議した。
「しかしやることをやらねば、お前の体は…」
「当面は問題ありません。レティシアとは自然な流れでできれば良いと考えています」
「普通の夫婦は、初夜で済ませるものだぞ!」
悠長なことを言う息子の言葉に、気の短いルーデンはいらだった。
「世の中にはごまんと夫婦はいるのですから、私たちのように時間のかかる夫婦もいましょう」
「普通の夫婦ならそれでかまわない。お前の健康には、帝国の未来がかかっておるのだぞ!」
「分かっています」
「分かっておらぬではないか!今日は倒れたのだぞ!それだけ、お前の体の中の闇の支配が強まっているということだろう?」
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「父上…っ…」
クリストフの反論を聞く気もないように、皇帝は執務室の扉を乱暴に閉めて出て行った。
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