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2.大人になって…
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「ぼくは"ダメ"だったんだよ。」
クルソル坊…いやもう坊やじゃないな。簡単に俺の身長を抜いていき、鼻筋が通ってて凛々しい黒い眉、ほどよく筋肉もついて周りからギリシア彫刻のようだと言われるほど美青年に育ったクルソルは片手に杯を持ち、中の酒を回しながら言った。
「次は小さな弟がぼくがやられたことをやられてる。」
長い睫毛から覗く茶色の瞳が色っぽい…。
「それでぼくは用無し。今は代筆の仕事を貰ってるよ。自分でも書いてるんだけど…詠んでもらったらいびつな文章なんだって。才能ないって言われたんだ…。」
彼の組まれた生足を周りの人間はバレないように見つめている。肉感と筋肉のバランスが良く、つるっとした美しい足だ。
「聞いてる?ウィンドゥス?」
俺の顔を覗きこんできた。しかめっ面だが可愛らしさがある。顔が良いと何をしても可愛い。
「聞いてるって。才能なんて言葉、成功しきった人を周りが後から言ってるだけだよ。」
「じゃあぼくも成功したら才能ある人になれるってこと?」
「そういうこと。」
にっこりして返事すると、クルソルはふふっと笑って酒を一口飲んだ。
俺はというと、数年前にご主人様が急死して新しいご主人様はその奥さまになった。以来、俺はわりと自由を与えられたんだ。こうやって友人と夜の交流会に参加して酒も飲めるほどに!
ここの酒はかなりお高めらしく飲んどかなきゃ損な気がしてついつい飲みすぎてしまった。鏡を見たらたぶん顔が真っ赤だと思う。
クルソルは多少頬が赤いものの酔ってる様子はなくいつものこいつのままだ。
そこへ艶っぽさにやられた男の一人がクルソルに近づき話しかけてきた。背が高くてコテで巻いたであろう洒落た髪型。いかにもイケてる男って感じ。こういうやつが俺は嫌いだ。だが大人なのでなるべく顔には出さないようにはしている。イケてる男は軽い口調でクルソルに声をかけた。
「なんで奴隷と二人で飲んでんの?俺と飲もうぜ!」
クルソルは目を泳がせた。人見知りで口下手、言葉を詰まらせてあたふたしている。
「大丈夫だって!楽しませてやるから!」
イケてる男はニコニコと手を差し伸べてくる。近づく手にクルソルは驚き、俺の服の袖を掴んで声を振り絞って答えた。
「ゆ、友人と来てますので…。」
そう言われた男は俺を一度見て、鼻で笑った。
イラッとしたが俺は大人で奴隷なので感情を抑える、ほんとは追い払いたい。
「友人なら俺にしろって。奴隷と話しても何も花は咲かないよ。」
「でも…。」
怯えるクルソルの手首を掴むとイケてる男は自分の方へと無理矢理引っ張り始めた。
「いっ…。」
「こっち来なって!大丈夫だから。」
クルソルは青ざめた顔で俺に助けての視線を送ってくる。俺はこいつの奴隷じゃないので本来は首を突っ込むべきではないのだが、友人として放っておけなくて間に割り込んだ。
「彼は断っています。無理矢理はいけないのではありませんか?」
「なんだお前。ほんと奴隷らしい奴隷だな。」
「なんだと…?」
「からくり人形みたいに決められたことだけしてるバカだってことだよ。」
「はぁあ?!」
俺の怒りが沸き上がって詰め寄りそうになった時、慌てたクルソルが俺を制止していけすかねぇイケてる男に言った。
「分かりました。でも、ぼくに酒の飲み合いで勝ったらです。」
イケてる男はふふんと余裕そうに顎を上げた。
「いいぜ。言っとくが俺はわりと強い方だぞ?」
「葡萄酒…ストレートでどうです。」
「いいだろう。」
俺は慌ててクルソルに駆け寄り、小声で喋りかけた。
「おい、ストレートなんてやめとけ。ぶっ倒れるぞ。ただでさえもう飲んでるのに…。」
「大丈夫だよ。たぶん。」
微笑む彼だが、不安で仕方がなかった。
しかし、それはいらん心配だったようで…。
何十杯も互いに飲んでぶっ倒れたのはイケてる男。杯を天に掲げ、勝利のポーズをとっているのはクルソルだったのだ…。
周りの人は二人の勝負に釘付けになり、勝敗が決まった今。クルソルに「バッカス(酒の神)に愛された男!」と拍手喝采が贈られている。
俺はまさか彼がこんなに酒に強いと知らなかったので呆気にとられ、
「化けもんだ…。」
と呟いていた。
クルソル坊…いやもう坊やじゃないな。簡単に俺の身長を抜いていき、鼻筋が通ってて凛々しい黒い眉、ほどよく筋肉もついて周りからギリシア彫刻のようだと言われるほど美青年に育ったクルソルは片手に杯を持ち、中の酒を回しながら言った。
「次は小さな弟がぼくがやられたことをやられてる。」
長い睫毛から覗く茶色の瞳が色っぽい…。
「それでぼくは用無し。今は代筆の仕事を貰ってるよ。自分でも書いてるんだけど…詠んでもらったらいびつな文章なんだって。才能ないって言われたんだ…。」
彼の組まれた生足を周りの人間はバレないように見つめている。肉感と筋肉のバランスが良く、つるっとした美しい足だ。
「聞いてる?ウィンドゥス?」
俺の顔を覗きこんできた。しかめっ面だが可愛らしさがある。顔が良いと何をしても可愛い。
「聞いてるって。才能なんて言葉、成功しきった人を周りが後から言ってるだけだよ。」
「じゃあぼくも成功したら才能ある人になれるってこと?」
「そういうこと。」
にっこりして返事すると、クルソルはふふっと笑って酒を一口飲んだ。
俺はというと、数年前にご主人様が急死して新しいご主人様はその奥さまになった。以来、俺はわりと自由を与えられたんだ。こうやって友人と夜の交流会に参加して酒も飲めるほどに!
ここの酒はかなりお高めらしく飲んどかなきゃ損な気がしてついつい飲みすぎてしまった。鏡を見たらたぶん顔が真っ赤だと思う。
クルソルは多少頬が赤いものの酔ってる様子はなくいつものこいつのままだ。
そこへ艶っぽさにやられた男の一人がクルソルに近づき話しかけてきた。背が高くてコテで巻いたであろう洒落た髪型。いかにもイケてる男って感じ。こういうやつが俺は嫌いだ。だが大人なのでなるべく顔には出さないようにはしている。イケてる男は軽い口調でクルソルに声をかけた。
「なんで奴隷と二人で飲んでんの?俺と飲もうぜ!」
クルソルは目を泳がせた。人見知りで口下手、言葉を詰まらせてあたふたしている。
「大丈夫だって!楽しませてやるから!」
イケてる男はニコニコと手を差し伸べてくる。近づく手にクルソルは驚き、俺の服の袖を掴んで声を振り絞って答えた。
「ゆ、友人と来てますので…。」
そう言われた男は俺を一度見て、鼻で笑った。
イラッとしたが俺は大人で奴隷なので感情を抑える、ほんとは追い払いたい。
「友人なら俺にしろって。奴隷と話しても何も花は咲かないよ。」
「でも…。」
怯えるクルソルの手首を掴むとイケてる男は自分の方へと無理矢理引っ張り始めた。
「いっ…。」
「こっち来なって!大丈夫だから。」
クルソルは青ざめた顔で俺に助けての視線を送ってくる。俺はこいつの奴隷じゃないので本来は首を突っ込むべきではないのだが、友人として放っておけなくて間に割り込んだ。
「彼は断っています。無理矢理はいけないのではありませんか?」
「なんだお前。ほんと奴隷らしい奴隷だな。」
「なんだと…?」
「からくり人形みたいに決められたことだけしてるバカだってことだよ。」
「はぁあ?!」
俺の怒りが沸き上がって詰め寄りそうになった時、慌てたクルソルが俺を制止していけすかねぇイケてる男に言った。
「分かりました。でも、ぼくに酒の飲み合いで勝ったらです。」
イケてる男はふふんと余裕そうに顎を上げた。
「いいぜ。言っとくが俺はわりと強い方だぞ?」
「葡萄酒…ストレートでどうです。」
「いいだろう。」
俺は慌ててクルソルに駆け寄り、小声で喋りかけた。
「おい、ストレートなんてやめとけ。ぶっ倒れるぞ。ただでさえもう飲んでるのに…。」
「大丈夫だよ。たぶん。」
微笑む彼だが、不安で仕方がなかった。
しかし、それはいらん心配だったようで…。
何十杯も互いに飲んでぶっ倒れたのはイケてる男。杯を天に掲げ、勝利のポーズをとっているのはクルソルだったのだ…。
周りの人は二人の勝負に釘付けになり、勝敗が決まった今。クルソルに「バッカス(酒の神)に愛された男!」と拍手喝采が贈られている。
俺はまさか彼がこんなに酒に強いと知らなかったので呆気にとられ、
「化けもんだ…。」
と呟いていた。
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