昭和のおっさんタロウの異世界物語は東の国から

うしさん

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第3章 西の大陸

第25話 脱出

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 名前: 佐藤 太郎
 年齢: 18
 種族: 人族
 加護: なし
 状態: 普通
 性別: 男
 レベル:63
 HP 7512/7512 MP:7301/7301
 攻撃力:7980 防御力:7870 素早さ:7131
 魔法: 火(8)・水(8)・土(7)・風(7)・氷(2)・雷(2)・闇(2)・光(2)・召喚(5)空間(2)
 技能: 刀(6)・剣(4)・槍(2)・弓(2)・料理(8)・採集(3)・解体(6)・回避(6)・遮断(4)・錬成(9)・研究(7)
 耐性: 熱・風・木・水・雷・身体異常
 スキル:【亜空間収納】Max【複製】Max【変身】8【無限再生】2【痛覚無効】Max【思考倍速】3【悪魔召喚】1【収納BOX】0【鑑定】0【再生】0
 ユニークスキル:【那由多】【盗む】【クロスランド】
 称号: 東の国の冒険者
 従者: ソラ・ココア・ノア・ミルキー(アトム・ドレミ)


 目覚めると、昨夜の最後のスキル統合が気になり確認してみた。
 寝る間際に長々と統合されたので現実逃避して無理やり寝たのだが、やはり自分の事だから気になるのは当たり前だ。
 そして、確認した結果。変わっていたのは【鑑定】が無くなっていた事と【クロスランド】が増えていた事だった。

 【鑑定】はしっかりと使えるようなので【那由多】に統合されたのだろうが、一度しか統合されたようには感じなかったのに、ケンジ君から頂いた【鑑定】まで無くなっているのには疑問が浮かんだ。
 【鑑定】自体はパワーアップした状態で使えるし、これ以上は考えても分からないし意味も無いので、あるものを使いこなすしかないだろう。
 今は他にやるべき事があるので、追々試しながら自分のものにすればいいだろう。

 子供達より先に目覚め確認を終わらせると、昨夜同様に道で朝食を作りに表へ出た。
 朝食が出来上がる頃には匂いに釣られたのか、疎らに子供達が建物から出て来た。
 全員が揃うまで待たせておいて、皆が揃ったら朝食にすると言ったら、何人かの子が率先してまだ来ていない子を呼びに走った。
 すると、それに釣られて他の子達も呼びに走る。皆、中々素直でいい子達だと思う。まだ時折怯えは見せているが、家に帰れれば少しずつ改善されて行くんではないだろうか。待っている家族達も暖かく迎えてあげてほしいと願ってしまうな。

 来た順に食べさせてもよかったのだが、このあたりは古い日本人の性なのか、全員で一緒に「いただきます」をしたいと思ってしまうのだ。
 普段からソラやココア達とも皆で一緒に食事をするのもその性のせいかもしれない。
 外で食べる事も多いのに、見張りも立てずに全員で一緒に食事を摂るのもどうかと思わなくも無いが、ノアケルベロスミルキーもいるのだ、見張りの必要も無いだろう。

「さて、子供達が揃うまでに、盗賊達の様子でも見てくるか」

 料理の方も粗方終わっているので、ココアとミルキーに任せ、ノアの待つ盗賊達の建物に向かった。
 昨日のままグルグル巻きにされた状態で値転がされている。私達が出て行く時に、この盗賊どもの処理を考えなければならないが、私はこのまま放置しようと考えている。
 人を殺すという行動には忌避感は覚えるが、悪党共を殺すのには罪悪感も感じなくなっている。
 だからと言って、誰でも彼でも殺しまくるのは人として違うと感じている。私は執政官でも無ければ神でも無いのだから。人を裁くのは他の誰かの仕事だ、私の仕事ではない。

 しっかりと拘束できている事を確認すると、ノアと共に食事場に戻った。もうノアが見張るまでも無いと判断したためだ。
 但し、窓やドアはシッカリと閉ざしておく。
 盗賊の物であったであろう短剣を刺して開かないように固定しておいた。
 しっかりと根元まで刺したから簡単に抜く事はできないだろう。私なら簡単だろうが……
 いつの間にか、私の力も人間離れして来たのだなと痛感もした。少し力を入れて握っただけで、短剣の柄も変形してしまったのだから。
 それからすると『東の国』で作られた武器は、柄の部分も含めて相当しっかりと作られていたのだなと感心するのであった。

 食事場としている道まで戻ってみると、子供達は全員集まったようで、それぞれ渡された食事を持って待っていた。
 机が用意できなかったので地面に置いてある状態だが、子供達は早く食べたいとウズウズしている様子だ。
 座っている場所はマチマチだが、全員が見える位置にいるのでそこはヨシとしよう。全員が友達というわけでも無いだろうからな。

「もう揃ったようだな」
「はい、全員に行き渡っております」
「そうか、ありがとう。待たせて悪かった」
「いえ、こちらもちょうど配り終えたところですから待ってなどおりません」
「そうか。では、ソラ。頼んだ」
「はーい。では、いただきますー!」
「「「いただきます」」」

「「「????????????」」」

 いただきます。と復唱したのは私達のメンバーだけ。子供達はキョトンとして頭に?マークを浮かべていた。

「ん? どうした? 『いただきます』して食べていいぞ』

 子供達に声を掛けたが、皆無言でこちらを見つめている。何人かは首を傾げている子もいた。

「どうした? 食べないのか?」
「その言葉って言わないといけないのですか?」

 ……!! そうか。こっちでは『いただきます』と言う習慣が無いのだな。

「いや、別に言わなくとも構わない。それぞれの風習に合わせてくれていい。私の故郷では食べる前には『いただきます』。食べ終わったら『ごちそうさま』という習慣だっただけだ。好きに食べてくれていいぞ」

 そう答えると、質問をして来た子は何か安心したように小声で祈り始め、祈り終えると食べ始めた。
 他の子達もその様子を見て、それぞれに祈りを捧げたり、そのまま食べ始めたりと色々だが、ようやく食事が始まった。

 昨夜は余裕が無くそれぞれに配って思い思いに食べてもらったので分からなかったが、色々な習慣があるものだな。

 朝食を終えると子供達に集まってもらって説明をした。

「君達の中には知ってる子もいるかもしれないが、ここはダンジョンの中だ。それで、今からこのダンジョンを出て君達を町まで送ってあげようと思っている」

 未だ半信半疑なのか顔は明るくなったが声を発さない。まだ囚われてた時の心のダメージが残っているのだろう。早く連れ帰ってやりたいと思うが、安全面が確保できないからな。何か言い策は無いものか。

「大人しく聞いてくれてるようだから話を続けるが、このダンジョンのある場所は森の中だ。しかもこの森には魔物が多く生息している。私の仲間達は強く、この森の魔物にも負けないが、君達を護りながらとなると厳しい移動となる。弱い者を護りながら戦うというのは難しいのだ」

 そこで言葉を止め、チラッとココア達に目をやると、ココアはモジモジしてるしノアとミルキーは頭の後ろを掻いて、「いやぁ~、それほどでも~」って雰囲気を醸し出していた。
 普段からあまり褒めてはいないとは思うが、それでもそんなに褒められなれてないのか? これは反省だな、もっと普段から褒めるようにしよう。

「それでも君達を護り森を抜けようと思う。今のところ、それしか方法がないのだから。だから君達にも協力して欲しい。絶対に私達の言う事を聞いて欲しいのだ。皆がバラバラになると護り難くなるからな。子供の君達の体力面も考慮して出来る限り休憩も多く取るようにはするが頑張って付いて来て欲しい」

 あえて難しい言い方をした。事の重大さを分かってもらいたいがためたっだ。
 静かに私の言葉を聞いていた子供たちだったが、自分達が魔物の跋扈する森にいると知り、少し綻びかけていた表情が暗くなってしまった。子供とはいえ、この世界に住む子供達だ、魔物の恐ろしさは知っているのだろう。

 誰からも異論は出ず、かといって賛同する声も出ない。子供だから仕方が無いとは思うが、ちゃんと言う事を聞いて付いて来てくれるのだろうか。イマイチ心配だ。

 その後はグループ分けをした。流石に七〇人一纏めにしては統率が利かない。
 十人の七グループに分かれてもらい、七人のリーダーを決めてもらった。
 予想通り、時間が掛かりそうだったので、グループ分けは子供達だけに任せて、私達は盗賊の建物に向かった。
 流石にあのまま放置すれば死んでしまいそうだから、生きるための術ぐらいは施しておこうと思ったのだ。

「今から縄を解く。抵抗するならこちらも容赦はしない」

 そう断りを入れた後、盗賊達の縄を切って回った。
 そして盗賊達の前に立ち、説明を続けた。仲間は四人とも私の隣に並んでいる。

「こいつらをどうした方がいいと思う?」
 軽い相談のつもりで言ったのだが、その言葉を聞いた途端、うちの達の気配が変わる。

 むっ、ヤバい! 四人とも殺気を放ち出した。

「先に言っておくが、斬るなよ。殺さない方向での相談だ」

 そんなにがっかりすることか? 四人とも、あからさまにガックリしているではないか。
 それともなにか? 殺したかったのか? それは魔物だから仕方が無い事なのか? 今のところは私の命令に従ってくれているが、この四人は魔物だからな。人の姿に変化しているので自分の考えと同じだと錯覚してしまうが、今後も気をつけて見ておかねばならないようだな。
 やはりこいつらには相談できなかったかと少し気を削がれたが、気を取り直してこれからの事を盗賊達に伝えた。


「この建物は封鎖して行く。解除するには時間が掛かるようにしてだ。お前達の武器はこの建物の外に置いて行くので、ダンジョンから出る時に使うといいだろう」

 一様にホッと息をつく盗賊達。自分達は殺されないと安堵したのだろう。

「だが、もし外に出るのなら自首する事を勧める。お前達の事は冒険者ギルドにも報告はするから手配も回るだろうしな」

 冒険者ギルドに連絡して、どう対処するのかは知らないが、こう言っておけば楔にはなるだろう。

 それからドアの下側と床を縫うように数本のナイフで刺し、私達は窓から出て外から槍を何本も刺し、鉄格子のように仕上げた。これで窓を壊したからと言って出られない。ドアの内側のナイフを抜かない限り建物からは出られないだろう。

 短時間で処置を済ませ子供達の所に戻った。
 すでにグループ分けも済んでいるようで、七つの集団が出来上がっていた。
 七人のリーダーを呼び、ココア達も入れて十三人でこれからの相談をした。

「どうやら奥に地上へと出られる魔法陣があるようだ。そこから外へ脱出した後、町を目指して森を行く事になる。そこで、君達リーダーの役割は自分のグループの者が広がり過ぎないように、できるだけ固まって移動するように管理する事だ」

「「「……」」」

 私の話はキチンと聞いてるようだが、返事はしないのだな。これも捕らえられていた環境の影響か。

「森に行ってからでも声を掛け合ったり返事をするのは大事な事だ。だから、分かったらキチンと返事をする事。分かったか?」

「「「は…はい…はい!」」」

 ま、今のところはこれでいいか。おいおい慣れて行ってくれる事を願おう。

「私とミルキーが先頭を行く。ノアが中央より少し前でソラが中央より少し後ろ、ココアが殿を頼む」

「「「はーい」」」
「……」

 この返事もどうかとは思うが、まぁいいだろう。今は時間が惜しいしな。

 子供達を二列に並べて手を繋がせて整列させた。
 先頭にリーダーが一人、その後ろに班員が六人。その六人に手を繋がせて、先頭のリーダーには班員が付いて来る事を確認しつつ、前の班と離れないように気を配ってもらう。
 七〇人、十班だから結構な数だ。流石に子供達の協力無しに護れる数では無い。
 今は、囚われていた時に受けていた酷い扱いで萎縮しているだろうが、解放されたと信じきれた時にそれぞれが自由な行動を取られると護ってやれるかどうか……
 命に関わる事だ、しっかりと言い聞かせておかないとな。

 子供たちには練習も兼ねて、奥に向かって二列縦隊で間隔を開けずに歩いてもらう。
 手を繋がせたのが良かったのか、問題なく階層の奥まで辿り着いた。
 子供の足でもあるし、練習も兼ねての事だったのでゆっくり歩いたせいで三〇分も掛かった。
 もう少し早く歩けたとしても、このペースでは森を出るのに何日掛かる事か……ふむ、やはり何か対策を取らねばならないな。

「これが転移魔法陣か」
「そうですね、この魔法陣に入ると入口へと転送されるはずです」

 そう答えてくれたのはミルキーだ。ミルキーはダンジョンにも詳しいのだろうか。

「私は別の場所ですが、何度かダンジョンに入ってますので知っているのです」
「そうか、では経験者であるミルキーと私が最初に行くから、その後は三人で子供達を誘導してくれるか?」
「はい、わかりました」
「わかったのじゃ」
「わかったー」

 ソラとノアには一抹の不安を覚えるが、ココアがいてくれるから大丈夫だろう。

「ところでミルキー。その隣にある大きな魔石のようなものは何なのだ?」

 過去のゲームで見たような、縦二メートル、幅五〇センチほどの細長くダイヤのようにカットされたクリスタルのようにも魔石のようにも見える美しい鉱石が少し浮かんでゆっくりと横回転していた。

「それはダンジョンコアです」
「ダンジョンコア? という事は、これがダンジョンの心臓部なのか?」

 ゲームや小説ではそうなっていたが、実際もそうなのだろうか。

「はい、回収しますか?」
「回収? 回収しても大丈夫なのか?」
「はい、回収すればダンジョンの成長が終わるだけです。魔物や宝箱や罠が出なくなるだけで、洞窟としては残りますので、回収しても問題ありません」

 そうなのか。回収していきなり崩落が始まったりするのではないかと懸念したが、そうはならないのか。
 ここのダンジョンで有意義なのは最下層の居住区のような空間だけだったな。森へも影響を与えるぐらいの魔物が居ついていた割に魔物も弱く宝箱も無かった。ならば回収した方がいいか。
 そう判断してダンジョンコアを【亜空間収納】へと回収した。

「では念の為、私とミルキーが先に入るから、問題なければ順番に子供達を送り出してくれ」

 三人が了解を確認すると、ミルキーと視線を合わせ同時に魔法陣に入った。

―――魔法陣の解析……データ不足のため完全には解析できませんでした。

 むっ!? 失敗? 大丈夫か!? と、心配したが、一瞬で景色が変わったため、心配が杞憂で済んだようでホッと胸を撫で下ろす。
 無事にダンジョン入口へと転移できたと確認できたからだ。そこは見覚えのあるダンジョンの入口だった。
 何を失敗したのだろうか。魔法陣の解析と聞こえたようだが……

―――不足していたデータを取得。転移魔法陣を修得しました。

 不足分か…入口と出口で一対……いや、後にしよう。今は後続がどんどん来る予定だから、場所と周囲の安全確保だ。

「ミルキー。私はここで子供達が出て来る順に移動させるから、ミルキーは子供達を一纏めにして見張ってくれ」
「わかりました。では、この辺に集めます」

 現在位置はダンジョン入口の前、ゴーレムのいた場所だ。
 森の中ではあるが、周辺には樹々が無く少し拓けている。だが、子供とはいえ七〇人からいるのだ、少し余裕をもって移動させておこう。
 あとは連絡だな。【クロスランド】の機能の中に【念話】があったはずだ。従者となったものと心の中で会話ができるという能力。この際だし、試してみるか。

『みんな、聞こえるか』
『あれー? ご主人様~?』
『え? え? ご主人様ですか? ご主人様の声が……ポッ』
『ほー、念話なのじゃ』
「ご主人様、念話を会得されたのですね」

 それぞれの感想が聞こえて来る。ミルキーは直接声を掛けて来たが、こちらの念話は届いていたようだ。
 ソラとココアは初めてなのか戸惑った様子を見せるが、ノアとミルキーは知っていたような感じだ。
 ノアは龍で主でもあったし、ミルキーは群れの長だから使えていたのかもな。

 まずは周辺探索サーチで魔物が近くに居ない事を確認した。
 だが、子供達の誘導に気を取られていると魔物が近付いても気付かないかもしれない。もう一人欲しいところだな。

『ソラ、こっちへ来れ……』
「わかったー」

 もう来ている……。まだ言い終えていなかったのだが。返事も念話ではないしな。
 送り出しはココアとノアに任せ、ミルキーには子供達の纏め役をしてもらい、私が誘導してミルキーの下へと進ませる。ソラには近くで警戒してもらうとしよう。

 子供達の移動はすんなり終わった。
 ダンジョンから出て眩しがる子が多かったが、私が声をかけるとすぐにミルキーの下に向かってくれた。
 眩しさも治まり、ようやく解放されたと実感したのか、ミルキーの下でははしゃぐ子が多くいたが、ミルキーが上手く抑えてくれていた。
 最初に子供達の捕らえられていた建物を解放したのもミルキーだったし、料理担当でも子供達と身近にいた事が良かったのだろう。子供達はミルキーの言う事を良く聞いてくれているようだ。
 時折聞こえて来る「必殺技、弐号ー」という声は聞こえなかった事にしておこう。

 最後にココアとノアが出て来ると、再点呼を取って人数確認をする。問題は無いようだ。
 さて、ここからどうするか、だな。
 周辺探索サーチで確認する限り、一番近い森の切れ目でも何事も無く行けたとして三日以上は掛かるだろう。
 私達だけなら半日も掛からないだろうが、子供の足だと三日は掛かると見た。しかも魔物も襲って来るだろうから、安全面も考えると倍は見ておかないといけないか。

 ふむ…何かいい案はないか……さっき覚えた転送魔法陣はどうだろうか。
 一度試してみるか。何でもやってみて、ダメなら次の策を考えればいいだろ。今は時間が惜しいからな。

「ココア、少し試したい事があるから手伝って欲しい。ノアとミルキーは子供達を見張っててくれ。ソラは……森の中の警戒だ」

 本当は三人で見張っててほしかったのだが、ソラは嬉々として森に入って行ったな。二人がいれば大丈夫だろ。

「何をなさるのですか?」
「少し試したい事があってな。ココアはここで見張っててくれるか?」
「畏まりました」

 ココアの目の前に覚えたての転送魔法陣を置いた。
 そこに『出口の転送魔法陣を設置』と念じると、【那由多】補正で転送魔法陣が現れた。地面からズズズズという感じで浮かび上がって来た時には、ココアも警戒して一歩跳び退いた。

「すまん、私がやった。警戒しなくていい」
「は、はい……」
「もし、上手くできれば私がここに現れるから、邪魔が入らないようにこの魔法陣を見張っててくれ」
「転送…魔法陣…ですか……さすがはご主人様です!」

 いつも通りのさすごしゅも頂いたので、急いでその場を離れた。
 そこから走って一キロほど離れた場所に『入口の転送魔法陣』を設置した。
 そして、魔法陣に乗ってようやく分かった。

「これは意外と魔力を食うな。私一人で消費する魔力がMP100ほどか。一キロ程度しか離れてなくてこれだけ掛かるのなら、もっと離れた町ならどれだけ食うのか……」

 そう、転送魔法陣を用いて、子供達を森から脱出させようと考えたのだが、初めての事だし上手く出来るかどうか分からないので実験をしているのだ。
 転送自体は上手くできそうだが、その転送に掛かる魔力が問題だ。ダンジョンの転送魔法陣はダンジョン自体が魔力を補っていたのだろうが、自分で描いた場合は私が補充しなくてはならないようだ。
 当たり前と言えば当たり前なのだが、その消費魔力が足りるかどうかが問題なのだ。

 恐らく距離が伸びると消費魔力も増えるだろう。子供達は七〇人いるのだ、私の魔力が足りるだろうか。
 だが、まずは試してみないと本当に出来ないかどうかも分からない。魔力不足なら日数を分けてもいい。森の中を通るよりも、ここで纏まって野宿する方が遥かに安全だしな。

 入口の魔法陣に入りココアのいる出口の魔法陣に現れる。
 魔力を通す前に出来る事は分かっていたが、実際に出来ると分かると自然と笑みが零れた。
 子供達を安全に移動させる手段を確保できた事も嬉しいが、瞬間移動を出来る力を持てた事が素直に嬉しかった。
 子供の頃からSF好きだったから、こういうのは楽しい。つい『ワープ』とか『リープ航法』とか『テレポーテイション!』だとか口から出そうになる。
 さすがに恥かしいのでやらないが、一人ならやってたかもしれん。
 当然、出口側に居たココアからは、またさすごしゅを頂いたよ。今なら分かるが、普段の会話で『さすごしゅ』と言われても意味が分からなかっただろうな。
 ふふふふ、これで私も若者の仲間入りに、また一歩近付いたな。

 出口側の転送魔法陣を消して、ココアと共に子供達のところに戻った。
 入口側の魔法陣はそのままにしておいたが、今回会得した転送魔法陣は一対で初めて効果がある。入口側だけ残して置いても何の問題も無い。
 別の所に出口を作っても、残している入口と意識して繋いで作らない限り行き来する事はできない。片方だけあっても何の効果も無い魔法陣なのだ。

「ノア、手伝ってほしいのだが」
わらわかえ?」
「そうだ。今から町まで私を乗せて飛んでほしい」
「我が主だけをかえ? 皆はどうするのじゃ?」
「子供達を安全に移動させる方法が見つかったのだ。そのためには私が町まで行かなければならないのだ」
「そうなのかえ? わらわは一向に構わんのじゃが」
「その間はココアとミルキーで子供達を纏めて護ってやってほしい。ソラは…森の中を警戒して、魔物がいるようなら退治してほしい」

 転送魔法陣は二つで一対だ。こちら側から出口を設定する事はできない。町に出口を作る必要はあるが、出口さえ作ってしまえば安全に子供達を移動させられる。
 そのためには、私が出口を作りに行く必要があるのだ。

「こちらの事はお任せください」
「はい、ココアさんと子供達を護ってみせます」
「まかせてー」

 約一名、不安な者もいるが、ココアとミルキーに任せれば大丈夫だろ。
 この場をココアとミルキーに任せ、少し離れた場所に入口の転送魔法陣を描いた後、ノアと森の中に入って行く。
 さすがにこの場でノアが変身をしたら子供達に見られてしまう。なので少し森に入ってから馬に変身してもらって馬車を牽いて飛んでもらう予定だ。
 私が走ってもいいのだが、森の中だと樹が邪魔で時間を食う。更に魔物までいるのだからノアに飛んで運んでもらう方が格段に速い。

 森を出発してから約一時間、ロンレーンの町に着いた。やはりノアに運んでもらったのは正解だ。私の足だと半日でも辿り着かなかっただろう。
 いつも通りノアには町から見えないように近くに来たら低空飛行をしてもらい、町から見えないように迂回してもらって街道に出て降りれば、後は街道を走る馬車の出来上がりだ。

 さて、出口を何処に設置するかだが、やはり町中がいいだろう。
 安全に移動ができて、その後の保護の事もある。ここはやはりギルマスであるアラハンさんに相談するのがいいだろうな。

 そう結論付けると即座に冒険者ギルドを目指した。
 アラハンさんがいい場所を知っていてくれればいいが。

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