昭和のおっさんタロウの異世界物語は東の国から

うしさん

文字の大きさ
32 / 33
第3章 西の大陸

第26話 安全な移動

しおりを挟む
 冒険者ギルドに着くと、すぐにアラハンを呼び出してもらった。
 冒険者ギルドの職員も慣れたもんで、私の顔を見るとすぐにマスタールームへと案内してくれる。アラハンさんからも頼まれているのだろう。

「挨拶は後だ。前置きも省かせてもらう。大至急で緊急で大事な相談がある」
「なるほど。たしかに急を要するようですね」

 私の態度で分かってくれたようで、すぐにアラハンさんから席を勧められ、本題を促された。

「たしか、タロウさんは魔の……西の森の探索とレッドワイバーンの捜索に行ってましたね。誘拐犯に繋がるとおっしゃってましたか。どんな進展があったのですか?」
「誘拐された子供達を保護しました」
「おお! それは凄い! よくやってくれました」

 手放しで喜びを見せるアラハンさん。だが、次の私の言葉でその表情も陰りを見せた。

「まだ保護したばかりなのです。場所は森の中央付近。子供達はダンジョンの中で囚われていました」

 途端に難しい顔になるアラハンさんだったが、私は話を続けた。

「ダンジョン……魔の森の中にダンジョンがあったとは……」
「人攫い共はダンジョンの最下層にアジトを作り、そこに潜んでいました。首魁である二人は倒しましたが、人攫い共はそのままにしています」
「それは当然でしょう。子供達優先なのは誰の目にも明白です。本来なら処分してしまっても問題は無いのですが、タロウさんにそこまでは申しません。このギルドから今の状態の森を抜けられる冒険者は降りませんが、人攫い達も今の魔の森の状態なら逃げる事もできないでしょう。それこそ自殺行為です。もう少し森が落ち着いたらこちらで対処しましょう」

 ダンジョンに置いてきた人攫い達は冒険者ギルドに丸投げでいいようだ。情報料も支払われるようで、なんだか申し訳ない気がするが、冒険者ギルドに属する冒険者なら当然の報酬らしい。
 アジトの情報だけでいいところを、私達は監禁までしてきたのだから優秀な部類だという事だった。
 ただ、今すぐ行けるわけでもなく、その間に逃げられる可能性もあるので、捕縛ではなく難易度の下がる居場所の特定の報酬が得られるようだ。

「アラハンさん、今は報酬の話より、子供達の保護の話を進めさせてもらっていいでしょうか」
「そうでした、そうでしたね。状況は大体分かりました。ダンジョンに囚われていた子供達を保護したところまでは聞きましたね。ダンジョンからは脱出できたのですか?」
「はい、現在はダンジョン入口で保護しています。それで、この町に一旦子供達を連れてきますので、子供達を保護する環境の確保をお願いしたいのです」

 食事ぐらいは面倒見れるが、流石に住む場所や親元の場所の特定や帰る面倒までは見切れない。途中で放り出すようで申し訳ないのだが、さすがに七〇人からの子供の面倒は厳しい。

「それならレムンドン伯爵のところがいいでしょう」
「レムンドン…伯爵?」

 むぅ…貴族か。貴族には当たりハズレがあるようなイメージだが、そのレムンドン伯爵はどうなのだろうか。
 しかし、七〇人からを保護するとなると、それなりに広い場所や権力も必要だろう。当然の選択なのだろうな。

「はい、この町の権力者で、この領の領主様からこの町を任されている方です。口が堅く信用のおける方です。顔も広く大きな屋敷も持っています。人選としては最適かと思いますが」

 ふむ、人選としては問題無さそうだが、問題は私の方だな。

「実は、新しい力を手に入れたのですが、その力を使って子供達をこの町に送ろうと考えています。私自身、その力が有用だとは思っているのですが、広めていいかどうか分からないのです。もし、秘密にしないといけない場合、そのレムンドン伯爵にも見られたくない。その場合は、レムンドン伯爵も含め、誰も来ないように人払いはできませんか?」
「うーん…それは難しいですね。交渉はしてみますが、あまり期待はしないでください。なにせ彼の屋敷を使わせてもらうのですから」

 確かにそうだな。それに、転送魔法陣はあまり秘密にする必要はないのかもしれないな。
 ダンジョンにはあるようだし、ここまで話してるのにアラハンさんも慌てた様子が無い。ある程度予想はつくだろうに、何も言及して来ないのだから。少し慎重になりすぎだったのかもしれない。

「ところで、どうやって子供達を運んで来るのですか? まさか、空を飛ぶわけでは無いのでしょう? 森を切り拓いて道でも作るのですか?」

 んん? 予想外の言葉が帰って来たな。転送は当たり前すぎて選択肢に選ばれなかったか。

「森を切り拓く?」
「違うのですか?」
「ええ、転送しようかと思ってるのですが……」
「ほぅ、転送ですか……」

 やはりよくある手段だったようだ。
 最近では、龍だったり魔犬だったりと自重知らずのように見られていたから自重したつもりで隠したのだが、常識的な力だったようだな。こういうのは結構恥かしいもんだな。

「ところでタロウさん、転送とはどういうでしょう。中継地点を設けるのですか?」

 ああ、配送などの転送でそういう言い方があるか。言い方が悪かったな。

「いえ、そうではありません」
「では、何度も往復して運ぶ事ですか?」

 それは転回? それとも回転? いずれにしても言葉の使い方が違う。

「んー、何と言えばいいでしょうか……転移、でしょうか」
「引越しされるのですか? たしかにダンジョンからの引越しでしょうが、タロウさんは引っ越さないでくださいね」

 それは転居や移転だな。わざと言ってるのか?

「転送魔法陣と言えば伝わりますか?」
「転送!? ですか!」
「さっきからそう言ってるつもりですが」
「ありえない…そんなのありえません! 転送魔法陣など、ダンジョンを創ったいにしえの神々の業前としか伝わっていません! ダンジョンから発見されたアーティファクトにそういった力の籠った魔道具があると聞いてはおりますが、自分で発動できる人間を私は知りません!」

 おぅ、またやってしまったようだ。【那由多】が勝手に覚えてくれただけなのだがな。だがしかし、今回の目的は子供達の救出だ。遠慮はしない。

「知らなくとも結構です。ただ、子供達をあの場所から安全にこの町まで運べる手段なのです。協力願えますか」
「……嘘…ではないのですね。とても信じられませんが、子供達を放っておくわけにも行きません。できなくとも場所は確保しますので、安全に子供達を運んでください」

 信じてはもらってないようだが、場所は確保してもらえるようだ。今はそれでいい、これで次の段階に進める。
 アラハンさんが馬車を手配してくれ、そのまま同乗して場所を提供してくれるであろう、レムンドン伯爵の下へと向かった。交渉はアラハンさんの役目だ。
 どうやって説得してくれるかは知らないが、交渉はアラハンさんに任せて私はなるべく見つからぬように魔法陣を設置する方法を考えた方がいいだろう。どうやらアラハンさん情報では転送魔法陣は人の手に余る力のようだから、あまり人目に付かない方がいいだろうからな。


「では行ってまいりますので、少しの間ここで待っていてください」

 大きな大きな屋敷というか、宮殿の門で馬車が止まると、アラハンさんが降りて門に向かって歩いていった。私は留守番のようだ。
 皆を待たせているので気が急くが、受け入れ先が決まらなければ連れても来れない。ここは大人しく待つしかないな。

 馬車の中からアラハンさんを見ていると、門番と一緒に遥かに遠い大きな大きな屋敷へと歩いて行った。

 あれは、往復するだけで結構な時間が掛かりそうだ。それでも待つしかないのだろうな。

 待つ事、二時間。アラハンさんの声で起こされた。あまりにも暇過ぎて眠ってしまっていた。もう昼時だろうか、ココア達に食材を置いて来なかったが、昼食はどうしただろうか。
 もっと早く段取りできると思っていたが、私の考えが甘すぎだった。ここからは少々強引でも早く決めたいところだ。

「お待たせしました。条件付きですが、伯爵が協力してくださります」
「条件…ですか?」
「はい、伯爵も立会います。それに伴い、数名の護衛が伯爵に付きます。伯爵に協力を求めるのですから、こればかりは飲むしかありません」

 確かにその通りだな。魔の森から子供達を連れて来るから保護しろ、送り届けるまで面倒を見ろ、経緯は教えるが連れて来る方法までは教えられん。では通らんか。
 今度はこちらが妥協する番だな。個人情報の保護を求めて、了承が得られれば見せてもいいだろう。

「分かりました。レムンドン伯爵は秘密を護れる方でしょうか」
「それは私が保証しましょう。伯爵にはこの町の冒険者ギルドの後ろ盾になって頂いてますし、冒険者の秘密主義にも深く理解をされています。私と個人的に付き合いも長く、人となりもよく存じ上げていますし、気心の知れた方です。他に情報が流れる事は無いでしょう」

 ならばいいか。

「分かりました。しかし、護衛の方はどうでしょう。信用できるのですか?」
「護衛も伯爵家に長く仕える方ばかりです。私も長く付き合いがありますので、口は堅いと断言致しましょう」
「分かりました、信用します。時間も惜しいですし、すぐに用意したいのですが、何処に行けばいいですか?」
「納得頂きありがとうございます。では、まずは伯爵に挨拶に行きましょう」

 アラハンさんに連れられ、遠くに見える大豪邸を目指した。


「この者が?」
「はい、+sの冒険者、タロウさんです。タロウさん、こちらがレムンドン伯爵です」
「タロウです。この度は無理なお願いを聞き届けて頂きありがとうございます」
「なるほどの。さすがは+sと言えばいいのだろうか。儂の知っておる+sとは大分違うようだが、実力はあるのだろうな」
「ええ、それは実証して頂きました。それで、先ほどお願いした場所なのですが」

 何がさすがなのかは分からないが、+sとは冒険者ギルドカードに勝手に付けられたランクCの横の小さな文字の事だな。
 私と同世代―――五〇歳前後に見える伯爵だが、身長は低めで160ちょいだろうか、体型はメタボと言っても差し支えないレベルの小太り体型だ。髪の毛も寂しくなってるな、折角の金髪なのに残念な感じだ。

「ふむ、場所を提供するのは吝かではない。この国の子供達の保護のためらしいからの。だが、儂の屋敷で得体の知れぬ魔法を使わせるわけには行かぬ。先に安全かどうかの確認だけはさせてもらわねばな」

 どうせ子供達を転送する時に見られるのだ。先に見せても構わないだろう。

「分かりました。ではレムンドン伯爵にも体験して頂きましょう」

 そうして庭に案内されたが、伯爵だけではなく護衛も付いて来ている。口は堅いという事だったが、希少な魔法だと聞いているので、あえて振れ回るものでもない。

「護衛の方には遠慮して頂きたいのですが」

 護衛が同伴するのはアラハンさんに言われ了承はしている。だが、見られない方がいいというのは当然の選択肢である。ダメ元で言ってみた。
 アラハンさんも眉を顰めているが、私の考えも分かっているのだろう。何も言わずに控えてくれた。
 だが、私の言葉に対して明らかに気分を害した護衛の二人がズイっと前に出て来る。ガタイが大きいので迫力はあるが、もっと大きな魔物も相手取って来た今の私には大した威圧にはならない。
 表情を変えずに護衛を見ていると、伯爵が護衛を手で制した。

「よい。ここにはアラハンもおる。それにアラハンが推しておる冒険者なのだ、無法な事はせんだろう。下がっておれ」

 伯爵に言われ、護衛たちが退散した。
 伯爵はそのまま右手を上げ、手首をクルっと返すと、屋根や垣根などの影から人が移動する気配がした。
 周辺探索サーチで確認してみると、十ほどの緑の点がこの場から遠ざかって行く。緑か…中立の色だな。味方ではないという事だが、敵でも無いのだな。
 それでも、本当に人払いをしてくれたようだ。
 ならば私も応えねばなるまい。

「ありがとうございます。では準備をしますので、ここで少々お待ちください」

 用意された庭は広く、陸上競技場ぐらいのスペースがあった。周囲には生垣が巡らされており、外からは庭の様子が見えないようにされている。
 庭の対面の垣根前まで走り、出口用の転送魔法陣を描く。描き終えるとまた走って戻って来て、入口用の転送魔法陣を描いた。

「準備が整いました。まずは……ん?」
「は…速い……」
「タロウさん…貴方の実力を疑ってはいませんでしたが、速さもとんでもないのですね」

 直線にして三〇〇メートルあるなしぐらいの距離を行って帰って来ただけなのだが、少し急ぎすぎたか。軽く走ったつもりなのだが。

「ありがとうございます。本題はこちらですので、よく見てください」

 今描いた魔法陣を示し、転送魔法陣に注目してもらった。会社員時代からあまり褒められるのには慣れてない。蔑まれる事は度々あったがな。
 最近ではココアやミルキーが止め処も無く褒めてくれるので少し耐性は付いたようだが、それでも褒められるのは居心地が悪い。

「これは?」
「はい、転送魔法陣の入口です。向こう側に出口を用意しました。魔力は描く時に込めてますので、使用者が魔力を使う事はありません」

 これも何とか工夫をしたいところだ。初めに込めた魔力が切れれば転送できなくなる。そうすると、魔法陣が使用者から魔力を奪って発動させるのだ。それも結構な量を奪われるようだ。
 今の私はレベルも上がり(元々多めの魔力量だったようだが)魔力も多くなり、私も含め仲間たちなら問題無いだろうが、一般人だと事故が起きかねん。
 今はいいが、その内常設も視野に入れた場合、何か対策が必要になって来るだろう。
 あと、魔物対策も必要だ。
 高ランクの魔物は魔力量も多いから誤って入口側に入ったとしても、平然と出口側から現れるだろう。管理の難しいところだ。

「これが…そう、なのか?」
「はい、まずは実演してお見せしますので、私の後に続いてください」

 そう告げて魔法陣に足を踏み入れる。
 すると一拍置いて魔法陣が起動し、シュッ! っと私の姿が掻き消えた。一瞬で出口側の魔法陣に姿を現す。すぐ魔法陣から出て、次に来る人の邪魔になら無いように備えた。
 しかし、伯爵もアラハンさんも、私が魔法陣で姿を消した事に動揺し、出口側に目を向けてくれない。私の消えた入口側から目を離さないのだ。

「アラハンさん! こっちです!」

 大声でアラハンさんを呼び、手を大きく振って存在を主張した。
 なんとかこちらに気付いてくれたので、同じように魔法陣に入るように大声で促した。
 二人でどうぞどうぞと譲り合ってるようだが、最終的に二人同時に入る事になったらしい。おっさん二人が手を繋いでいるのは見た目的にアレだが、不安な気持ちも分かるので見なかった事にしてあげよう。

 無事、出口側の魔法陣に現れた二人だったが、周囲をキョロキョロと見渡し、入口側の方を見て、ようやく納得してくれたようだが、夢見心地のようで暫くポーっとしている二人だった。
 声は掛けたが反応が薄く、我を取り戻すまで暫し待つしかなかった。無駄な時間だが叩いて正気に戻すわけにも行かず、苛立ちながら待っていると、ようやく正気に戻ってくれたようだ。

「こ、これは…凄い! これは凄いぞ! のぅアラハン!」
「は…はい……確かに転送魔法陣でした。しかし、本当に……」

 興奮気味の伯爵に対して、テンションの低いアラハンさん。何か問題でもあったのだろうか。

「アラハンさん? どうかしましたか?」
「い、いえ。これは…この魔法はあまり表に出さない方がいいでしょうね」
「何故だアラハン! こんなに素晴らしい魔法があれば遠くにある土地、例えば王都にでも早く、しかも安全に行き来できるのだぞ! どんどん使わんでどうする!」

 推進派の伯爵に対して、アラハンさんは否定派のようだ。
 アラハンさんならダンジョンで転移経験もあるはずだ。だからこその意見なのだろうな。

「転移をするにあたって、魔力を消費していますよね?」

 自問自答のように俯いたまま話しているが、これは私に対する質問だろう。
 一度の体験で見抜くとは、アラハンさんが優秀な証だな。

「はい、魔力を消費しています。魔法陣を描く時に魔力を込めていますが、転送の度にその魔力を消費するようです」
「その込めた魔力が無くなれば?」
「使用者から消費されます」

 既に欠陥を見抜かれたか。凄い観察眼だな。

「かなりの魔力を消費するようですね。もちろん、距離や質量に応じて魔力量も変動するでしょうし、便利な半面、危険な魔法ですね」
「ふーむ…それは問題だな。だが、このタロウがおれば解決する問題なのだろう? ならば、子供達を安全にここへと運べるわけだ。まずは、子供達の事を優先して考えよう」
「そうですね。伯爵の仰るとおりかと」
「ありがとうございます。では、ご納得頂けたようなので私は準備に入ります」

 出口の転送魔法陣を消し、新たにダンジョン前の転送魔法陣と連動する出口の転送魔法陣を描いた。
 後は向こうの転送魔法陣から子供達を送るだけなのだが……

『ココア、聞こえるか?』

 この距離で届くかどうか、果たして……念話は届いた。

『ご主人様!? はい! ご主人様の素敵なお声は私の心に届いております!』

 なんとも会話の続け難い回答だが、届いているようで安堵した。

『んんー…そちらの状況は? 子供達は泣いたりしていないかい?』
『はい、こちらに問題はありません。何かご用でしょうか』
『こちらの準備が整ったので、そちらから順序良く子供達を送り出してほしいのだが……』

 入り口用に描いた転送魔法陣の場所を伝え、ミルキーと協力して子供達を転送魔法陣に送るように伝えた。
 すぐに子供達を集合させ行動に移ると答えてくれた。
 因みに、この念話は従者であるソラ、ノア、ミルキーにも同時に伝わっていた。個別の念話ではなかったようだ。
 その証拠に……

「ご主人様ー」

 出口用の転送魔法陣からシュッ! っと一番に現れたのはソラだった。

 何故お前が一番なのだ! ここは子供達が優先だろう!
 でも、まぁ長距離転送は初めての試みだ。率先して実証試験をしてくれたのだと、ポジティブに捉えておこう。

『ココア……』
『ご主人様…ソラさんが勝手に』
『あー、分かってる。ソラは無事にこっちに来てるから、子供達を順番に送り出してくれ』
『……かしこまりました』

 ココアも納得行かないような返事だったが、役目は果たしてくれるだろう。それぐらいココアの事は信用している。
 で、こっちに来たソラだが。

「ソラ、順番に子供達が送り出されてくる。私が誘導するので、ソラは少し離れた場所に子供達を集めてくれ」
「わかったー」

 笑顔で片手をあげて答えるソラ。

 不安だ……。

 アラハンさんと伯爵は庭の入口付近(さっき入口側の転送魔法陣を描いた場所)にいて、二人でこちらの様子を伺っている。
 私達は庭の奥の垣根の傍(さっき出口側の転送魔法陣を描いた場所)にいて、受け入れ態勢を取っていた。
 すぐにココアから送られた子供達が現れて来る。一度に二~三人ずつを送ってくれるので、私が出口の魔法陣が混み合わないようにソラの方へと誘導する。
 子供達もダンジョンで経験しているので心得たもので、素直に誘導に従ってくれる。
 ソラは何もしていないが、目印として立ってくれているだけで役立っている。
 途中、アラハンさん達を見てみたが、三〇〇メートル離れたこちらからでも分かるぐらい大きく目を開いてた。
 何も無い空間からワラワラと沢山の子供達が現れるのだ。事情も知っていて、転送も先程体験して分かっているとはいえ、驚愕ものだろう。

 最後にココアとミルキーが現れ、全員が無事に転送終了した。

「ご苦労様。向こうに何か残して来たものはあるか?」
「あの…すみません、簡易家だけはどうしようもなく。一度魔法陣に乗せたのですが、簡易家の方が大きく魔法が発動しませんでした」

 乗せたのか……いやいや私にはその発想はなかったな。そこまでしてくれたのなら何も言う事は無い。逆に褒めてあげよう。

「そこまでしてくれたのか。ココア、ありがとう。時間のある時にでも見に行くとしよう。もし無くなってたり壊れたりしててもそれは仕方の無い事だ。必要ならまたニーベルトさんに作ってもらえばいいだろう」
「そんな…至らぬばかりで申し訳ありません。でも、私とソラさんとミルキーさんの三人で、強力な結界を施して来ましたので、壊れる事は無いと思います」
「そ、そうか……いや、ありがとう」

 たかが簡易家に三重結界を施したのか。ソラの結界だけでも森の中で野営するのに十分なのに三重とは。過剰すぎだな。
 という事は、あとは入口の転送魔法陣だけが残されただけか。残しておくのも気掛かりではあるが、こちらの出口側を消しておけばすぐに問題になる事も無いだろう。

「おなかすいたー」
「僕もー」
「私もなにか食べたーい!」

 口々に腹が減ったと訴える子供達。
 そうかそうか、そういう事が言えるようになってきたか。うんうん、いい傾向だ。これはすぐに用意してやらねばな。

「ようし、ちょっと待っててくれ。すぐに用意してやりたいんだが、ここは他所の土地なんだ。ここで料理を作っていいか確認して来るから少し待っててくれ」


 すぐにアラハンさんの下に向かい、一緒にいる伯爵に許可を願った。
 屋敷で用意するにしても時間が掛かるとの事で、許可はすぐに貰えた。
 他にも急いで手配する事があるとの事で、伯爵はその場から去って行き、アラハンさんは子供達の名簿作りのために一旦残った。
 名簿が出来次第、伯爵と合流して対応に走るそうだ。
 その間の子供達の面倒は私達で見てくれと頼まれた。

 それは頼まれるまでも無く、子供達を保護した私の責任だ。
 ココア達に料理の支度を手伝ってもらい、子供達に昼食を振舞うのだった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...