【R18】Melting Room Stories ―密室で溶け合う、僕らの本能―

くすのき紬

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Case.3 朔と遥香 第3話:アンコールはいらない

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「……っ、遥香先輩。……いいっすか? 俺、もう限界なんで」

濁った声で問いかけると、先輩は熱に浮かされた瞳をしばたかせ、小さく、けれど拒むことなく頷いた。

その肯定が、俺の中に残っていたわずかな理性を粉々に砕く。

「あの、でも……朔くん、待って……私、本当は……っ」

「ごめん、待つの無理」

何かを言いかけようとした先輩の唇を、強引なキスで塞ぐ。 

そのまま彼女の細い腰をがっしりと掴んで固定し、沸き上がる独占欲をぶつけるように、俺の熱を彼女の最奥へと一気に突き立てた。

「……っ!? ……痛、い……朔くん、……まっ、……っ!!」

繋がろうとした瞬間、先輩の身体がこれまでにないほど強張った。

ぎゅっと、壊れそうなほど強く俺の肩に爪が立てられる。 

その圧倒的な「狭さ」と、初めて踏み込まれた場所特有の抵抗感に、俺は動きを止めた。

「……嘘、だろ」

額に汗を浮かべ、苦しげに瞳を潤ませる先輩を見下ろす。

元カレがいたなんて、嘘だったのか。
いや、噂は嘘じゃなかったはずだ。だとしたら――。

「……遥香先輩。もしかして……」

「……ごめん、ね。……びっくり、させちゃった、よね……っ」


呼吸を乱しながら、先輩は申し訳なさそうに視線を逸らした。

経験豊富な「高嶺の花」だと思い込んでいたのは、俺の勝手な妄想だったんだ。

目の前にいるのは、俺の熱に当てられて震えている、ただの不器用で真っ白な女の子だった。

「……謝んないでくださいよ。……痛いなら、今日はもうやめます」

「え、……でも、朔くん……っ」

「その代わり。……俺の指で、めちゃくちゃにしていいっすか?」

俺の熱を抜くと、先輩は呆然とした顔で俺を見上げた。

嫉妬で乱暴になりかけていた頭が、一気に冷えて、代わりにどろりとした独占欲が湧き上がる。

俺は、震える彼女の足を優しく開き直すと、ピアノを弾くときよりもずっと繊細に、けれど執拗にその場所に指先を這わせた。

「あ、……ぁぁ、……っ、さく、くん、……そこ……っ!!」

「ここ、弱いんだ。……可愛い」

さっきまで感じていた痛みはなくなったようで。

俺が指を這わすたび、とろとろとした熱い愛液が、俺の指先を隙間なく濡らしていく。 

深い場所に指を滑り込ませれば、内側の柔らかな粘膜が吸い付くように震えて、俺を離さまいと締め付けた。

「……あ、……っ、……もう、……だめ、……さく、くん、……っ!」

先輩が俺の腕にすがりつき、のけ反るように背中を丸める。 
その無防備な最奥を、俺の指は容赦なく、執拗に突き上げた。

「あぁ……っっ!!」

先輩は激しく身体を震わせ、俺の指を強く締め付けたまま、甘い悲鳴を上げて絶頂に達した。 

指先に伝わる脈打つような痙攣が、彼女が俺の手で「壊れた」ことを生々しく教えてくれる。

「はぁ、……はぁ、……っ、さく、くん……っ」

力なく脱力した彼女の瞳は潤み、視線は宙を彷徨っている。 

俺の指一本で、聞いたこともないような高い声を上げてシーツを掴み、情けなく乱れている高嶺の花。

俺は、ぐっしょりと濡れた指を引き抜くと、それを彼女の目の前で見せつけるようにして口角を上げた。

「……あーやべ。先輩が可愛すぎて、ちょっとやりすぎました」

「……っ、……ひどい、……朔くん……」

顔を真っ赤にして睨んでくるけど、その瞳には熱い余韻が溜まっていて、ちっとも怖くない。 

指先の動き一つで、先輩の呼吸も、腰の動きも、俺の思い通りに操れる。

その支配感が、俺の胸をどろりと満たしていく。

本番はお預けだけど、その分、俺の指でしかイけない身体にしてやりたい。 外の雷鳴さえ聞こえなくなるほど、二人の密やかな旋律が、夜の部屋に響き続けていた。

「もう一回、いいっすか?」

まだこの甘い時間を、終わらせたくない。

絶頂後の熱と震えが残った先輩のそこに、俺は再び指を這わせた。

「ひっ……、や、待って……っ」

拒絶の言葉とは裏腹に、蕩けた瞳が俺を求めるように潤んでいる。 
その甘い肢体に、俺という印を深く刻みつけるように。

「……待てないっすよ。俺、欲張りなんで」

***
「……はぁ、……ぁ、……っ」

俺の指に翻弄され、何度も果てた先輩は、今は俺の腕の中で力なく呼吸を整えている。

乱れたシーツが、さっきまでの情事が現実であったことを物語っていた。

「……ねぇ、朔くん。……びっくりした、よね。その、私。……最後までしたこと、なくて」

先輩が、俺の胸元に顔を隠しながらポツリと漏らした。

「……元カレの人とは、どうだったんですか」

「……優しかったんだけど、身体が、どうしても受け入れられなくて。……濡れなくて、痛くて。……それで気づいちゃったんだよね、私たち、恋人じゃなくて、ただの友達だったんだなって」

悲しそうに笑う先輩を、俺は力強く抱き寄せた。

俺の指一本であんなに熱くなって、俺の名前を何度も呼んでいた彼女を思い出して、胸の奥が熱くなる。

「……じゃあ、俺のは痛くなかったんですか?」

「……朔くんの指、魔法みたいだった。……怖かったのに、気持ちよくて、……おかしくなりそうだった」

その告白は、どんな名曲の旋律よりも俺の心を揺さぶった。

「……あの、先輩。順番めちゃくちゃになりましたけど。……俺、遥香先輩のこと、ずっと前から好きなんです。サークルに入ったのも、先輩がいたからなんすよ。……だから、俺の彼女になってくれますか?」

先輩が驚いたように顔を上げる。

「高嶺の花」だと思って、勝手に嫉妬して、意地悪して。

でも、本当の彼女は、俺が思っていたよりもずっと純粋で、愛おしい人だった。

「……私、……可愛くないよ? 朔くんより年上なのに、何も知らないし……」

「そんなの、俺が全部教えるからいいっすよ。……っていうか、誰にも教えさせたくない。あと、世界一、可愛いから」

俺は、彼女の額にそっとキスを落とした。
ようやく手に入れた、俺だけの真っ白な鍵盤。

「……先輩。俺、本当は今すぐ続き、したいっす。……次は、指だけじゃ済ませないんで。……覚悟しておいてくださいね?」

「……っ、……ばか……」

真っ赤になって腕の中に閉じこもる彼女を、俺は一生離さないと決めた。

外の嵐はいつの間にか去り、雨上がりの静寂の中で、二人の新しい旋律が静かに始まりを告げていた。




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