【R18】Melting Room Stories ―密室で溶け合う、僕らの本能―

くすのき紬

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Case.4 慎と澪 第1話:二十歳の再会と、狂わされる計算

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地元の成人式。
懐かしい顔ぶれが並ぶ市民ホールの前で、俺は一際輝く「白」を見つけた。

清楚な白い振袖に、少し背伸びをしたようなアップヘア。
中学、高校と同じクラスで、俺、蓮山 慎(はすやま しん)がずっと……それこそ狂うほど追いかけてきた椎野 澪(しいの みお)だ。

美しい彼女に、思わず目を奪われる。

「慎ー! 何ぼーっとしてんだよ、次行くぞ!」

地元の悪友たちに肩を叩かれ、俺は「分かってるって」と微笑み返して、彼女から視線を外した。

俺は、地元の仲間はもちろん、大学の同級生にだって、見た目通りのチャラ男だと思われている。

それでいい。
そうでもしてないと、彼女と同じ大学に合格するために、ガリ勉して必死に追いかけたなんて……重すぎて引かれるに決まっている。


彼女が法学部の1号館によくいることも、学食ではうどん派なのも、全部知っている。

中高時代は、クラスメイトとして、それなりに親しくしていたと思う。
でも、大学では一度も話しかけられていない。


***


「……椎野、それ以上飲むな。お前、酒初めてだろ」

二次会の居酒屋。
チャラついた仲間の輪から抜け出し、俺は一人でカクテルを空けている彼女に声をかけた。

真面目な椎野のことだ。
どうせ今日が「酒解禁」の日なんだろう。

「……ん、……はすやまくん? ……ひさしぶりぃ……」

ふわっと笑った彼女の頬は林檎のように赤く、瞳はトロンと潤んでいた。
「あ、蓮山くん! 澪と同じ大学だよね?」

隣にいた女子グループの一人が、俺に気づいて声をかけてきた。

「この子、このまま都内のアパートに帰るって言ってるんだけど、かなり酔ってて……。悪いんだけど、一緒に送ってあげてくれない?」

「え、実家に泊まるんじゃないのかよ」

俺が訊き返すと、「なんか明日、どうしても外せないバイトがあるらしくてー」と困り顔で返された。

偶然……いや、必然か。
俺ももともと実家に泊まる荷物を持ってくるのが面倒で、大学近くの部屋に戻るつもりだった。

「……分かった。俺も向こう戻るから、見ておくわ」

「ありがとー! 助かる!」

女子たちが去り、俺は改めて目の前の「酔っ払い」を見下ろした。

「え、何それ。……お前、一口でそれかよ」

「……しんくん、お酒、おいしいねぇ。……みて、ふわふわするの……っ」

椎野が、無防備に俺の腕に抱きついてくる。
密着した場所から伝わる、柔らかい感触と甘い香りが、俺の理性をじりじりと削っていく。

おい、周りの男たちがこっち見てんぞ。自覚あんのか。

「……帰るぞ。都心まで二時間半、このままじゃお前、絶対駅で潰れる」

俺は、自分の上着を椎野の肩に無理やりかけ、もう帰るのかよーと悪態をつく友達を振り切り、彼女を店から連れ出した。

各駅停車の長い帰り道。

ガタゴトと揺れる電車内で、俺の肩に頭を乗せ、太ももを無自覚に撫でまわしてくる椎野。

「……しんくんのにおい、……落ち着くぅ……」
「……椎野。……いい加減にしろ。俺、お前が思ってるほど善良な奴じゃねーから」

俺の低い声さえ届いていないのか、椎野は俺の首筋に熱い吐息を吹きかけ、メロメロに甘えてくる。

終着駅まで、あと二時間。
俺の、人生で一番長い「介抱」が始まった。

***

ようやく辿り着いた、都心の最寄り駅。

二時間半の「拷問」のような電車移動で、俺の理性はすでに風前の灯火だった。

「……椎野、歩けるか? ほら、住所言え。送ってやるから」

「……んん、……しんくん、……だっこ……」

「……はぁ? ふざけんな、重てーよ」

口では毒づきながらも、フラフラと線路に落ちそうな彼女の細い腰を抱き寄せる。

柔らかい身体の感触がダイレクトに伝わってきて、心臓に悪い。

だが、何度問いかけても椎野の口から住所が出ることはなかった。
挙句の果てには俺の胸元に顔を埋めて、すやすやと寝息を立て始める始末だ。


「……クソ。マジでどうしろってんだよ」
放置するわけにもいかず、かといって泥酔した彼女を連れて夜道を彷徨うわけにもいかない。

俺は結局、最寄り駅から徒歩五分の自分のマンションへと、椎野を連れ帰るしかなかった。


「……よっと。……ほら、着いたぞ。ここ俺の家。とりあえず寝ろ」

ベッドにそっと横たわらせ、せめて窮屈そうな上着だけでも脱がせてやろうとした……その時だ。

「……っ、……いかないで、……しんくん……」

ガシッ、と。
寝ていたはずの澪の手が、俺の首にしがみついた。

そのまま力任せに引き寄せられ、俺の視界は彼女の白い肌と、甘い酒の香りでいっぱいになる。

「……椎野、お前、……これ以上はマジで……」

「……しんくん、…なんで大学で、話しかけてくれないの?」

「……っえ?」

驚きで動きが止まった。
隠し通してきた俺の執着。

追いかけていたのは俺だけだと思っていたのに。

無防備に俺を求める瞳と、潤んだ唇。

俺の中で、数年分の理性が音を立ててぶち切れた。

「……あー、もう……。……知らないからな。明日、泣いて謝っても許さねーぞ」

俺は、自分を誘うように見つめてくる彼女に覆いかぶさり、その唇を強引に奪った。



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