絆物語

藤原葉月

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第20話

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「誰だ、あんたは!」
ヨシの通行を邪魔しているように見える。

「へぇ?あなたはまだ気付いていない。それとも気づいているのか?」
「な、何の話だ」
その女の目が赤く光り、
「まさか・・・・」
「戦士の証拠の剣を持っていると言うのに使いこなせないなんて・・・・」
と、冷たい目で見る。

「お前たちが作り出した世界なのか?」
「あーら。気づいていたの?あんたがすぐに報告しないから、仲間が捕まっちゃったわよ?」
「なっ・・・・」

「きっと数分後、火の海ね。残念よね?いい男ばかりなのに」
その女は残念がっていない。
むしろ楽しんでいる。

「みんな!行っちゃダメだ!!」

だけど、僕の声は聞こえていない。
「ざーんねーん!あんたの声は一生届かないわよ?」

そう言って女はにやりと笑った。

その頃

「ったくなんで、捕まらなきゃならねぇんだよ!無実なのに!」

「仕方ありませんね・・・・」

「ちょっとまて、なんか焦げ臭くないか?」
なぜか小屋に閉じ込められた5人。
「まさか、放火?」

「火の匂いがする」

「どうしてだ?どうしてこんなことをするんだ!」
ヨシは必死に訴える。
・・・・だが
「あははははは。あなた、あの人たちのことを仲間だと思ってないんでしょう?死んだとしても何とも思わないでしょう?」
女は、ヨシの顎を掴み、
「だったらさー、私たちの仲間にならない?」
「えっ!?」

なぜか見つめられ・・・・
「あんたのこと、気に入ったわ」

「・・・・・・」

なぜか目が離せない。


すると・・・

「ヨシさん、俺たち守りたいものがあるんだ」
「強くなって必ず戻るって約束したから」

「ヨシ、あなたはきっといい戦士になる。きっと・・・・・」

色んな人の言葉が脳裏に浮かんだ。

そしてヨシの心に落ちてきた。


「・・・・ない」
「えっ?」
「あんたの言いなりにはならない」
「なんですって 」
「誰の仲間になるかは僕が決める!!」

ヨシは立ち上がり、剣をその女へと向けた!!



おなじころ・・・・・

「ゴホゴホ、みんな、縄は切れましたか?」
「ゴホゴホ、な、なんとか」
「凄い火の周りが早い・・・・ゴホゴホ・・・」

「ダメだ、出口がわからない・・・・ゴホゴホ」

「ぼくたちは、このまま死ぬのかな・・・・・ゴホゴホ」

煙を吸い込んでしまい、倒れてしまったケン。
「ケン!大丈夫か?しっかりしろ」
「・・・・・」

そして・・・・

「すごい火・・・・この中に・・・」

みんなが?

そこに現れたのはヨシだった。
「誰だテメェは。この中のやつはもう丸焦げだぜ?」
「あんたたち、クリスタルはどうしたんだ!必要なんだろ?」
「ふん、そんなもの始めからなかったんだ。あんたの仲間たちはまんまと騙されたみたいだな」
「騙された?騙したのはあんた達の方だろ?早く火を消せよ!!本当に必要なクリスタルならあんたたちは必死になって探すはずだろ?」
「お前はなんで無事なんだよ!まさかお前1人逃げたのか?」
「えっ?逃げた」
だが、
「ある意味そうなのかもしれない。でも彼らは・・・・少なくとも僕を救ってくれた。だから、恩返しはする!」
と、剣をかざした。

「仲間を大切にしろ!」
父さんが最後に言ってくれた言葉。

「父さん、僕はまだ、彼らのことはよくわかりません。でも・・・人が死ぬのをこれ以上見たくはありません!!彼らのことを僕なりに信じてみようと思います」
そう言って目を瞑った。
「こいつ、なに独り言言ってんだ?」

ドクンと、脈打つ剣。


『風神の舞』

ヨシは、そう唱えた。
すると、辺りが静かになったと思ったら、風がひと吹きした。
【なっ】
すると、不思議なことに、火は一瞬で消え去った。
「あれ?火が消えた?」
小屋も消えている?
「ヨシさん」
ヨシさんだ!

目の前の幻覚が消えて、ただの草原になっていた。
「まさかまやかし?」
「そうです。この村はこいつらが作った偽の世界だったみたいです」

「ヨシさん?」

今までの顔とは違う顔に戸惑う5人。

【フン(╬ ˘̀^˘́ )バレちゃおしまいだ】

村人たちはみるみる魔物へと姿かたちを変えいった。

そのすぐあと

「あれ?・・どうして僕は・・・」

正気を戻したヨシは、背後から襲う魔物に気付かずにいて、

「ヨシさん、危ない!!」
「えっΣ(゚д゚;)」
間一髪、ジュンがヨシの前に来てその魔物を見事切りつけた!

「!?」
「ジュン、ヨシさん、大丈夫か?」
「ヨシさん、さっきの鋭さはどこにいったんですか?」
「えっ?僕がそんな顔していたのか?」
「してましたよ?明らかに」

そして
【ふふふ、仲間割れか?】
「それにしても、僕はなぜここにいるんだろう?」
ヨシは自分がなぜ外に出たのか覚えがないようだ。
【ふふふ、まだ弱いな】
「くそ!」
ジュンは、切りつけたはずの魔物に強い力で押さえつけられていた。

「ヨシさん、背後にタネヨシ様が」

ヒロは、ヨシの近くに行き、耳打ちをした。
ヒロには見えていたのだ。

まだ力が未熟なヨシに、タネヨシ様の魂が宿っていると。
いや、もしかしたらヨシではなく、授かった剣に!

「ヨシさん、その剣にあなたのお父さんの魂が・・・・」
「えっ?この剣に?」
「まだ、自分の力でその剣を使いこなせてません」

ヒロは、敵を倒しながらヨシに伝えていた。
なんて器用なお方。

「あなた自身でその剣を使うことに意味があるのです」

そう言い放ち、そこにいた敵を見事やっつけた。

もちろん、ゴウやマサも参戦した。



「ケン、大丈夫か?」
「うん、休んだから。あれ?火が消えたね・・・」
「ヨシさんが消し去ってくれたんだ。でも、これでも未熟な力なんだってさ」
「えっ?そうなの?」
「・・・・・」
「じゃあ、僕と同じだね。こんなことで倒れちゃうんだからさ」
「ケン・・・・・」
「・・・・・」

そして


「ヨシさん、力を貸していただけませんか?ほんの少しでいいんです」
「でも僕は・・・」
君たちを見捨てようとした。

「俺たちがひとつにならないと意味がないんだ」
「僕は君たちに教えなかったんだ。この村が偽物かもしれないと気づいていたのに・・・」

ヨシさんがそう叫んだあと・・・・

「あーら、6人揃ったのね」
「あ、あんた!?」
先程ヨシの元にいた女が姿を現した。

「あーら。幻覚が消えちゃって面白くないじゃない」

「カナ様。こやつらをいかがいたしますか?」
「ふふふ、まとめて始末しちゃうわ」
その会話が聞こえていたのか・・・・

「今、その女の名前を《カナ》と言いましたか?」

その《カナ》という名に異常な反応を示したのは、ヒロさんだった。

「【へぇ?あんた私の事知ってるの?】」

その女は、ヒロさんに近づき不気味に笑う。

「カナ・・・・まさか操られて?」

「ヒロさん?!」
「【ヒロね。そう、あなたヒロっていうの】」
「カナ!めをさますんだ!お前の仕事はこんな事じゃ無いはずだ!まさかこの村の幻覚を作っていたのか?」

「【察しが早いわね。その通りよ。でも、わたしは知ってしまったの。この世で1番手に入れたいものの存在を】」

「手に入れたいもの!?」

「【今日はここまでにしといてあげるわ。また、会いましょう】」

そう言うと稲妻と共に颯爽と消えてしまった【カナ】という名の女。

「カナ・・・・」

ヒロさんの切なげな声が響いていた。



    
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