絆物語

藤原葉月

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第21話

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安全な場所へと移った6人は・・・
「あの、カナさんって?」
体調がすっかり戻り、起き上がったケンはヒロに聞いた。
「見苦しいところをお見せしました」
ヒロは、動揺を隠していた。

「まさかあの人がヒロさんの?」
マサは、勘づいたみたいだ。
「まさか操られているなんて・・・・」
そして、ヨシも口を開いた。
「みんな、すまない。気づいていたのに・・・・知らせなくて・・・」
「あっ!もとのヨシさんに戻ってる!良かったぁ」
「えっ?よかった?」
「さっき、すごい顔していたよ?」
「すごい顔・・・・」
「なんて言えばいいかな?その剣に支配されそうな顔かな。」
ジュンは鋭いことを言った。
近くで見ていたからだろう。

「みんなが無事ならそれでいい。じゃあ」
と、踵を返して歩き出した。

「照れてるな、あの人」
「だよな」
きっと言葉にできない心をもっているとみんなはこの時思った。

「どうしてさっきのことを覚えていないのだろう」
独り言を呟いたヨシの言葉を、ゴウはしっかり聞いていた。

しかも目の前にいてヨシにこう言った。
「それは、あんたが人を信じないのと一緒でその腰の剣に力を試されてるのかもな」
「力を試す?なぜお前にそれがわかる」
「あんたの父親、タネヨシ様がつい最近まで使っていたものだ。それくらい読める。それを受け継ぐものとしてまだ、タネヨシ様の力にあんたが追いついてないからだ」
「子供が偉そうに」
「あんたも子供だろ!」
「あの人がいなくなったから、俺は1人だ。子供でもなんでもないただの青年だ」

「まだ、言ってるのかよ」

と呆れるゴウ。
「まぁまぁ、ゴウ君。ムキにならないで」
と、話に入ってきたのは

「ヒロさん・・・」
「・・・・・」
「ヒロさん、あなたの恋人なのか?さっきの《カナ》って女は」
「わかりません。名前は《カナ》でしたが・・・。ただ、僕たちの力を狙っているカナの名を借りた女なのかもしれません」
「・・・・たしかに、ヒロさんのこと知らない感じだったし・・・・」
「ねぇ、この世で1番手に入れたいものってなんなの?」
ジュンが聞くと、
「それは彼女は探してるってこと?」
「人間が手に入れたいものってことか」


「この世の全てか、それとも命?」

冗談っぽくゴウが言うと


「永遠の命・・・だと思います」
とヒロさんは答えた。

「えっ・・・・」

戸惑うヨシさん。

「そんな命があったら俺たちはこうして出会うことはないだろ?かつての戦士が生きているってことだから」
「じゃあ、こうして巡り会ったのは僕たちの父さんや母さんが、育ててくれたからだし」
「もう一度平和な未来を作るために集まったというのもあるよな」
「ヨシさん、あんたはまだその力を使いこなせていない。だからこそ一緒に旅して欲しいんだ。あんたの力がいま、必要なんだよ」

と、ゴウは真っ直ぐにヨシさんに向かって話した。

「・・・・・・」

「そうですよ。ヨシさん、あなたはもう既に僕たちの仲間なんですよ」
と、ジュンも言った。

「・・・・・」

ヨシさんは考えていた。

「忘れなくてよかったでしょう?一緒に旅をしようよ!いい事あるからさ!」
ケンは明るく言う。

「そんないい事ばかりではないだろ?」

ヨシさんはまだ、否定的だ。

「そんな悲観的な考えばっかりしてると幸せが逃げるぞ?」

「・・・幸せ・・・」

「あー!あの綺麗な女王様、ヨシさんのこと気に入ってるみたいだったよね!」
と、急にレイナの話を出されたので、
「レ、レイナはただの・・・・」
と、ヨシさんは言いかけたが・・・


「ほら行くぜ?ミュウも行くって言ってるし」

「ちょっとミュウ!」

ミュウは、いつのまにかヨシの胸から出ていて走り出していた。
まるで、みんなに「こっちだよ」
と言ってるみたいに。

6人の旅はこれから過酷となるだろう。
傷つけあうかもしれない。
もしかしたらまた、逃げ出すこともあるかもしれない。
でも、彼らの心は少しずつひとつになろうとしていた。
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