絆物語

藤原葉月

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大切な人との時間

第30話

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「ナミ、これだけは言っておく。お前を幸せにできるのは俺しかいねぇよ。待っててくれ」
マサはそのとき、ナミにしたように彼女を抱きしめた。
「マサ・・・さん?」
そして離してからナミを見つめると、
「そしたら君はこう言ったんだ。『何を言ってるの?待ってないわよ!幸せになるんだから!あなたと違う人と幸せになるんだから!』って」

「・・・・・・!?」

「そして俺はこう言った」
その後、もう一度ナミを抱きしめたマサは、
「俺がナミにプロポーズしてるのがわからないのかよっ!」
「えっ・・・・」
ナミは、少し戸惑っていたが、抱きしめるては離さないでいた。

彼の声を聞きたかったからだ。

「俺が帰ってくるまで待ってろよ!ナミ!」

その言葉を待っていたかのように・・・・

「・・・・・マサ・・・・」

と、ナミは言った。
「えっ?今、マサって言ったか?思い出せたのか?」
「うん、温かいマサだ。あの時とおなじ温かいマサがここにいる」
ナミは、マサを抱きしめ返した。
「なんだよ、それ!!」
「生きてるマサ・・・・。生きていたんだね」

「・・・ばぁーか。そう簡単に死ぬわけねぇだろ!!」
ナミの頭を撫でるとふたりはもう一度抱き合った!!

「あれ?ラブラブになってる!!」
と、ケン。
「どうやら記憶を取り戻せたみたいですね」と、ヒロ。
「すごいね!!やったぁ」
「愛の力ってやつか」

「・・・・そうなんだ・・・」
ヨシが戻ってきたことに気がついたゴウは、

「ヨシさんもあの女王様といい仲だもんな!」
「いや、だからレイナとはそんな仲ではない」
「ふーん?でも、呼び捨てで名前呼んでるし?さっき、レイナさんに会ってすごく嬉しそうに見えたけど?」
ジュンが茶化した。

「なんだ、会ったんじゃん」
「なっ!?ジュン、君は見ていたのか?」
焦るヨシ。
「うん、見ていたというか偶然見たって言うか(笑)」
「うっそ!俺も見たかったぁ」
と、ゴウ。
「なんか満更でもなさそうだった」
「気のせいだろ?」
ヨシはなぜか恥ずかしくなりそっぽを向いた。

「なんかかわいい」
そう思ったのは、ゴウとジュンだった。

そして、

「もう、行ってしまうのね、マサ。」
「せっかく会えたに残念だね」
というケン。

「思い出せてよかった」
「俺は・・・・」
「思い出さない方がよかった?」
「そういうわけじゃないけど」
「シュウ、私を守って命を落としたのよね?まさか、傷ついたのがシュウの方だったなんて・・・・」
「・・・・わかるのか?言わないでおこうと思っていたが・・・」
「たぶん、私を傷つけないようにわざと記憶を消したのかも・・・・。聞こえたの・・・。彼の心の声が・・・」
「そうか。シュウはナミを守ろうとして・・・・」
「シュウはいつも言ってくれてた。寂しい時は俺がマサの代わりになるからなって。そう言っていてくれたから私もこうして生きてる・・・」
「そうか。ごめんな、ナミ。寂しい思いをさせてごめん」
「マサ迄居なくなったらわたし・・・・」
「俺は大丈夫」
「そんなのわからないじゃない!!」
「ナミのお守りが聞いている間は大丈夫」
「・・・・バカっ!」

ナミとマサが、最後に抱き合う姿を5人は黙って見ていた。

これから先は長い旅路になるって覚悟を始めていたからだった。

「いいなぁ・・・・僕も会いに行きたいな。今しか会えない気がする」
ケンはポツリと呟いたその声をヒロは聞いていて、
「では会ってきますか?」
と、ケンの方を向いた。
「えっ?」
「だって今会いたいって言いませんでした?」
「あっ、でも・・・名残惜しくなっちゃうし、やっぱり遠慮しようかな💦」
「ったくどっちだよ」
「ねぇ、ゴウはちゃんと思いを告げれたの?」
「えっ?俺の話?」
「兄さんは意地っ張りだもんなぁ」
と、話を聞いていたのはジュン。
「ジュン、余計なこと言うなよ?」
「今ちゃんと言わないと後悔するんじゃないんですか?」
「やっぱりそう思う?」

「サヨナラじゃなくて、ちゃんと《行ってきます》って言いたいなって思ってる」
「じゃあ、決定!」
と、ヒロ。
「決定って、何が?」

「みなさんそれぞれ今1番会いたい人に会ってくること!
そしてその人に《行ってきます》を言ってくること!後悔しない旅にするためにね!どう?賛成?反対?
特にヨシさん!どう思います?」
急に自分に振られ、
「えっ?僕?」
戸惑いしか感じない。

「ヨシさんにはまだ、恋人と呼べる人はいないけど・・・・あっでも、会いたい人はいるんだろ?」
と、ゴウに言い寄られる。
近いんだけど・・・・。
「いや・・・・別に」
と誤魔化す。
「ったくこんな時に嘘つくなよ」
「う、嘘なんかついていない!」

「ミュウ!」
「ほら、ミュウが言ってるぞ?」
「・・・・別にまだそこまでは・・・・」
「やっぱり、照れてる。素直に言えばいいじゃん」
「な、なんの事だよ」

「こら、ゴウ!あんまり茶化すなよ。ヨシさん困ってるじゃん」
マサが会話に入ってきて
「それにお前も人のこと言えないだろ?」
と、またくしゃくしゃと頭を撫でる。
「それやめろよ!痛いんだからー」
「お前もまだ子供だな」
「だって、あんまり長いこと会ってたら離れたくなくなるだろ?」
「・・・・・・」
「時なはさ、突き放すことも大切じゃん?」
「突き放す・・・・ね」
「時々でいいから、会えればいい。遠くから見て元気で生きていてくれればいい。必ず幸せに暮らせる時が来る。これ、俺の親が生きていた時にいつも言ってた言葉だ。だから俺もそうしようと思ってる」

「そうだな。その通りだ」
「まぁ?親がいなくなった俺にはそれを次の誰かに伝えていくしかないからさ。あっ、これ初めて話した話だわ。恥ずかしっ!」

「・・・・・・」

ゴウが見せた初めて見る悲しいひとみだった。
それをヨシは黙って見ていた。

ゴウの気持ちが痛いほどこの時になって初めて伝わってきたからだった。


「彼にもあんな表情する時があるんだな」

いつも明るく強いと思っていたゴウは弱さをみんなに見せなかったからだ。



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