絆物語

藤原葉月

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大切な人との別れ

第56話

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「そこにいるのは誰だ!」

ヨシが叫び、振り向くと、そこに居たのは・・・

「・・・・・」

「・・・・・!?」

「ヨシ・・・・」

「・・・・えっ」

なんと、レイナだった。

まさか・・・


「レイナ、なぜ君がここにいる」

「ヨシこそ何故ここに?」

「・・・・レイナ、やはり君は・・・・」

「邪気の近くに僅かな光を感じる」



「君がこんなことをするなんて・・・」

「えっ?ヨシ?何を言ってるの?私がそんなことするはずは無い」

「君は力を使って!」

なぜかヨシはこの村を襲撃したのはレイナだと言っているのだ。

「巫女の力を使ってこの村を襲撃したんだな?」

「えっ?」

「そうなんだよな?」

「ちがうわ、ヨシ!私はついさっき・・・(ヨシ、何かに取り憑かれてる?)」
「やはり君は敵の国の者!!」

「ちがうわ!ちゃんと聞いて!あたしの顔をちゃんと見て!」

レイナは、ヨシの頬に手を当て、

「信じて?お願いだから・・・・」

真っ直ぐに目を見た。
その目を離さずにいる。

「あなたの村を助けたくて私は・・・・」

だが、聞く耳間を持たないヨシはレイナの手を振り払い、
「嘘だ!もうお前の言うことが信じられない!!」

「えっ?」
「信じない」

踵を返して、背を向けてしまい行ってしまおうとして
 「待って!」

ヨシの腕を掴み、
「お願いだからヨシ、こっちを向いて私の言うことを聞いて?信じて?私はやってない・・・・」


「悪いがもう、顔を見たくない」

「ヨシ・・・・」


そう言って掴まれた腕も振り解き、歩き出していた。

「ヨシ・・・・お願いだから・・・・」

「(何故だろう。レイナの顔を見るとイライラする)」

「・・・・お願いだから、こっちを向いて・・・・ハァハァ」

レイナは力尽きてしまい、動けなくなってしまった。


ヨシは振り返ることはなかった。



「・・・・・」

「レイナ様!!」

アルフとミナミは、膝まづいて動かないレイナを発見し、
「レイナ様、大丈夫ですか?」

「・・・アルフ・・・、ミナミ・・・・」

「これはひどい・・・。」

「ここから、去らなきゃ。次の村へ行くわよ」

レイナはふらつきながらたちあがった。

「レイナ様、ヨシにお会いしましたか?」

「・・・・えぇ」

だが、なぜか悲しそうに笑う。
「なぜ、彼はいないのですか?お話をされたんですよね?」

「・・・・この村の状態を見て、私がやったと言っていたわ。違うと言ったけれど聞いてくれなかった」


「そんなはずありません」

「そうですよ、レイナ様。貴方様は村人を救ったのに」

「・・・・いいのよ、もう・・・。それより次の村へ」

と、またふらつき、それを抱きとめたミナミ、
「レイナ様、どうか無理はなさらないでください」

「・・・・できるだけ沢山の人を救わなきゃ・・・・」



ヨシに信じて貰えようになるなら・・・・この身はどうなっても・・・。

「レイナ様、やはりあなたは(全ての力を使い切るおつもりじゃ・・・・)」

「1度お休みになってください。お願いします」

「いいのよ、アルフ、ミナミも・・・私の心配などしないで・・・・」
「レイナ様、ここにいて休んでいて下さい。ヨシを連れ戻しに行ってまいります。」

「アレフ、やめて。もう、いいのよ?」

「いえ、私は貴方様には幸せになって頂きたいのです。」

「・・・・・」

「私とミナミに言ってくれた言葉をそのまま返します。そうしなければ私の気持ちが納得いきません!!」
なぜか、叫ぶアルフ。
「・・・・アルフ」

ミナミは少し驚いていたが、察したようだ。

「すまないミナミ・・・こんな時に・・・」

「私も同じ気持ちです。レイナ女王様」
ミナミは、レイナの手を握り、

「アルフ、ミナミ・・・・」

レイナは涙が止まらずにいた。


「きっと・・・きっとアルフなら大丈夫。あのお方を連れてきてくれるはずです」

「約束です。レイナ様、無理はなさらないでくださいね?ヨシに会うまでは」

「わかったわ。でもアルフ、気をつけてね」

「任せてください。ミナミ、レイナ様の援護を頼みましたよ?」

そう言って馬に乗り走り出した。


「アルフ、必ず連れ戻してきてね?」

ミナミはそう呟き、アルフが見えなくなるまで見守っていた。


そしてヨシはと言うと・・・


「ヒロさん」

「あれ?ヨシさん」

「気が変わった。村は大丈夫だ。あんた達の手伝いをさせてくれ」

と、なぜか怒っているように見える。
「ヨシさん?」

何故かマサも驚いていて?
「なぁ?女王様となんかあったのか?彼女はそちらにいると聞いたけど?」

「レイナのことは忘れることにした」

と、呟く。
なぜか、悲しげに言う。

「えっ?忘れる?」

「なんでそんな顔を?」

今までにない、いや?俺たちを信じていなかった頃の顔をされ、
「ちょっと、ヨシ!」

また、ヨシの友人がやってきた。
「お前なんで、ここに戻ってきているんだよ!」


「えっ?」

話が見えないマサとヒロ。

「すまない、ちょっと気が動転して・・・」

「そうか、ヨシにはトラウマだったな。こちらこそすまない」
「村のみんなは無事だったのか?」
「あぁ、ある女王様のおかげで命拾いしたそうだよ」

「女王?女王ってまさか」



マサとヒロは、同時に思った。

「えっ?どういうことだ?」
「自分は《光の国の者。しかしあなた方を助けたい》。そう言って強力なバリアで村人たち全員を爆風から、救ってくれたらしいんだ」


「えっ?・・・そんな」

「あの方が来なかったら俺たち粉々だった。危機一髪で、食い止めて下さったらしい。あの爆風のあとはそれを意味していたんだ」


「あの村を・・・・レイナが?」


そんな・・・・



「そうだよ、俺見たんだ!確かあの時にヨシと一緒にいたあの女の人だよ。あの後、ヨシは会わなかったのか?確かそっちに向かっていったはずだけど?」
彼の友人は嘘をついていない。

「・・・・・」
「ヨシさん?」

ヨシさんが放心状態なのにびっくりしたヒロ。
「彼女は、女王なんだな。敵の国の女王なのに、俺たちのことを守ってくれるなんてさ」

「・・・・タカ、レイナが敵の国の者でも許せるか?」

「あの人は、自分の正体をちゃんと証して助けてくれたらしいんだ。力を散々使ったのに、村人達の手当もしてくれたらしい。許すも何も素晴らしい人だよ。何故かお礼をいいそびれた」

「・・・・・」

さっきから様子がおかしいヨシを心配したマサは思わず、
「ヨシさん?大丈夫か?」
と声をかけた。

「・・・・・・・」

「かなり顔色が悪かったみたいだ。もしかして力を使ったせいか?」

「・・・・・」
「ヨシ、女が苦手だって言ったくせに、あんな綺麗な人としりあいになったんだなぁー羨ましいよ。お礼を言っといてくれないか?お前からも」
「・・・・・」
ヨシは、きいていなかった。
「ヨシ?聞いてんのか?」



レイナじゃなかった。

レイナは守ってくれたんだ。

なのに俺はなぜあんなことを!


俺が悩んでいたその時だった!
「ヨシ!!」

「・・・!?」


そこに現れたのは、アルフだった。

「アルフ・・・・」
「アルフさん」



「今すぐレイナ様に会いに行ってくれ!」

「えっ?誰?」

タカは戸惑っている。

アルフはヨシに伝えに来たのだ。


ヨシに大事なことを伝えるために!!





「えっ?」

「あのお方にはもう力が残っていないのです!あんたのために力を使ったんだ」

「・・・えっ?俺のため?まさかそんなはずは・・・・」

「まだわからないのか?レイナ様は、生命の法をあんたが望むだろうと言う形でお使いになろうとしているんだ!!」

「えっ?」
「まさか」

「あのお方に村を破壊する力なんてない!あるわけありません!」

「話が読めないんだけど」
「タカさん、ここはいいから戻ってください」

「わかった。ヨシによろしく」

タカは、村にもどって行った。

「あのおかたは、あの体で他の村に行こうとしているんだ。止めないともう、二度と・・・・」

「アルフ、だめだ。俺は彼女に酷いことを言って突き放した。だから、会う資格などない」

(何故だろう。あの時だけ操られてしまったのだろうか?)


「お願いだから、こっちを向いて!」

「あんな風に彼女を突き放してしまったから!」

彼女は何時でも俺を受け入れてくれたのに・・・

信じてくれていたのに!
「あのお方を止められるのはヨシ、お前しかいないのだ」

アルフは続けた。
「アルフ!俺は君の敵なんだぞ?なぜ・・・・」

「レイナ様には生きていてほしいのです」
「・・・・」

「ヨシ、お前と幸せになって欲しいのだ。それが私の願いだ。聞いてはくれぬか?」

アルフは、いつになく真剣な目をしてヨシを見つめた。
「・・・・・」

「ヨシさん、アルフさんがそう言ってるんだ。聞いてやれよ」

「ここは大丈夫ですから。行ってきて下さい」

マサとヒロはニコリと笑った。

「アルフ、いいのか?」

「レイナ様のためです。この馬を使ってください」

「しかし、お前も戻らなきゃならないんだろ?共に行かないか?」

「私は大丈夫だ。早く!レイナ様の元へ!」

2人のやり取りを見てマサは、
「あの人、ヨシさんのことをすげぇライバル視してたのにどうしちゃったんだろう」

「きっと、誰か大切な人を見つけたんですよ」

「そうなのかな」

「ほら、この前助けに行った時にいた子とか」
「そっかァ、なるほど」

「すまないアルフ、きっと借りは返すから」

と、ヨシは馬に乗ると

「・・・・・はい」

笑ってヨシに答えるアルフだった。

「笑った」

そして、馬が走り出し、

「(どうか、間に合いますように!)」

そう心で念じた。


(頼む!間に合ってくれ!)


ヨシもそう願っていた。


「間に合うでしょうか」

思わず呟くと、やり取りを見ていたふたりは、

「ヨシさんならきっと大丈夫です」

「あんたは信じてたんだろ?ヨシさんの彼女への想い。あの二人が心から愛し合っていると信じているから」

「悔しいが敵わなかった。レイナのヨシへの想いと・・」

「お前が幸せにしてやれよ」
などと言っていたあいつのレイナ様への深い愛情に・・・。


「・・・・・」


「ハァハァ、レイナ様、すみません」

熱を出したのはミナミだった。

「仕方ないわ。長旅で疲れが出たのよ」

「すぐ、元気になりますから・・・。レイナ様、どこにも行かないでくださいね?」

「えぇ 
そうにっこり笑うレイナだったが・・・・、


「!?」

(強い・・・この邪気は強いわ)

今までに感じた中で1番強い。


ゾクッ

「なんか近くにいる?」

「うん、今までにないかも」

ゴウやケン、ジュンも感じていた。


レイナは、ミナミに貰ったネックレスを見つめ・・・

「もう敵わないかもしれない。けど、行かなきゃ・・・・」

そう行って立ち上がり、

「レイナ様?」

『ミナミ、ありがとう。そしておめでとう。アルフと幸せにね?そして』


《さようなら》


「レイナ様!!」

ミナミは、ベッドから起き上がりふらつきながら部屋を出る。


「ミナミ様?起きてはダメです!あちらは危険です!!」

「レイナ様が!レイナ様がいなくなってしまったんです!ハァハァ・・・・・」

「えっ?レイナ様が?」

「私のせいです・・・ハァハァ。私が熱を出したから・・・・」

ミナミも意識を失い、倒れかけたところを抱きとめたのは!

「ミナミ!!」

アルフだった!!

「アルフ・・・・?」

「ミナミ、大丈夫か?」
「アルフ、ごめんなさい・・・・。わたし・・・・」

「早く、薬師を呼んでくれ!」

アルフは、ミナミを抱き上げると、

「アルフ・・・私のせいなの・・・私がレイナ様を・・・・ハァハァ」

「ミナミ、大丈夫だ。今はゆっくり眠りなさい」

(きっと、きっとあの二人は・・・・・)




レイナはある場所に着いた。
「ここだわ。ここから、感じる・・・・・」


「レイナ、教えてくれ!今どこに・・・・」



ヨシは、レイナを感じようとしていた。

「レイナ、お前に直接会って謝りたいんだ。そして・・・・・」




「・・・・・・」

レイナは渾身の力を込めていた。


「会ってちゃんと伝えたいんだ。
お前のことを・・・・・・」  





心から、愛していると!!









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