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28、男子-スペア

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「もちろん、お願いする立場だから、報酬割合を決めてもらってもいい」
「それは魅力的なお誘いだけれど、残念ながら人違いよ」
ノートに『話は明日10刻ギルドで』と書き見せると、荷物をまとめる。 
「あっ、えっ、人違いだったのか、ごめん」
「いえ、では、ごきげんよう」
そう合わせてくるギルマスの息子が頷くのを確認して、移動する。
人払いしたとはいえ、ここで話す内容ではない。
それに、これで先生に星だとバレるのは得策とは言い難い。
次の教室へと向かいながら、眼鏡の故障もあり得る、ならスペアと交換した方が身の安全ではないかと思い立つ。
小指に装着している指輪型魔法具を起動させ、『眼鏡のスペアを』とメッセージを送る。
対の物を装着している相手とメッセージ交換を可能にする優れもの。
スマホやメールとは違い、一対でしかないのが不便ではあるが、従者関係には必要不可欠。
ちなみに従者関係者しか購入、装着出来ない。
これを一般販売に先駆けて行ったプレで、片思い相手にメッセージを送りまくり、生活に支障きたす事例があり、結局従者関係のみとなった。
半年の試用期間後、正式購入となり、試用中や年一のメンテナンスでも使用頻度が一定数を超えてると資格なしとみなされる。
基本は口頭で、ということが念頭にあるらしい。

次の教室と寮への別れ道に近付くと、寮の方角からシェルが歩いてくるのが見えた。
歩くのを止め、シェルを待つ。
近く付くに連れ見えてくるのは、手に持っているは二つのメガネケース。
「早いわね」
「不具合でしょうか」
「念のためよ」
何も入っていない開かれたメガネケースに眼鏡をしまい、もう一つのスペアをつまみ上げ、装着。
「ゴツメン受付、ギルマスだと知っていた?」
「はい」
「その息子が同学年にいることは?」
「いましたね」
「その息子にパーティー組んで欲しいと言われたわ」
「そうでしたか」
「どうしましょ」
「フリは結構ですよ」
「ふふっ。このタイミングでパーティのお誘いって、試験かしら?」
次星への条件の一つに、下星メンバーとパーティ依頼を、とあり困っていた。
「本人に確認してください」
「息子は知ってると思う?」
「どうでしょう」
「シェルはどうクリアしたの?」
「その条件はありませんでした」
「いいわね。そうそう、夕食はシェルの好きな牡蠣メインで貝たっぷりのクラムチャウダーよ、よろしくね」
磯の香りが似合わないけど、シェルは無類の貝好き。
二人で出かける時のメニューは、必ず貝を選ぶ。
だからか、シェルを見るとごくたまに無性に貝を食べたくなる。
「かしこまりました」
夕食も決まり、眼鏡の憂いもなく、次の教室へと向かった。
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