【完結】それぞれの贖罪

残酷な現実

ある大雨の朝、
侯爵家の令嬢が若くして
この世を去った。

その令嬢の名前はアマリリス。

第一王子の婚約者で生きていれば
次期国母になる人間だった。

その日の昼、王宮の広間には
多くの貴族たちが集められた。

陛下は周りを見回したあと
重い口を開いた。

｢皆も知っている通り今朝、
アマリリス嬢が亡くなった。
第二王子の婚約者として
教養も気品も兼ね備えた彼女を
喪うことになったのはとても残念だ。
最後の餞として
彼女の願いを叶えようと思う。｣

彼女の願いとは何なのか？と
貴族がザワザワと騒ぎ出す。

｢ミカエル、クリス、ローラ
お前たちは一歩前に出ろ。｣

第二王子、第二王子の側近、
第二王子の幼馴染の名前が呼ばれた。

三人は困惑しながら陛下に礼をする。

｢ミカエル、ローラ。
お前たちを夫婦として認める。
それにより今日から
北の塔で生活を共にしてもらう。
クリス、お前は二人の生活を補助しろ。
それと同時に
ミカエルから王位継承権を剥奪する。｣

陛下からいきなり告げられた決定事項に
三人は勿論のこと周りの貴族も
黙って聞いていることが出来なかった。
その中の一人の貴族が
罰せられるのを覚悟で異議を唱えた。

｢なぜ、第二王子から
王位継承権を剥奪されるのでしょう？｣

この質問に対して
陛下は目を鋭くしながら答えた。

｢ミカエルは何の罪もない
侯爵家の令嬢を五年間虐げた。
人として許される行為ではない。
そんな者が次期王などの
認めれるはずもなかろう。
それでもアマリリス嬢は
最後までミカエルの幸せを祈ったのだ。
自分が亡き後、
ミカエルとその想い人であるローラを
結婚させて欲しいとな。
慈悲深い令嬢の最期の願いは
叶えてやりたいのだ。｣ 

｢陛下ｯ！僕はリリーを
虐げたりしていません！
僕が愛しているのはリリーです！｣

クリスはすぐに反論をした。

｢ほう、アマリリス嬢を
虐げていないと言うのだな？
お前はこの五年間何を見てきた？
ことある事に
たかが幼馴染であるローラを優先させ、
学園でも婚約者ではなく
ローラを連れて歩き
流れる噂も否定しなかったではないか。
わしや王妃がそれに苦言を呈しても
お前は聞く耳を持たず
アマリリス嬢を追い詰めたのだ。
そんなお前がアマリリス嬢を
愛しているだと？片腹痛いわ。
お前には今もお前の隣に立っている
泥棒猫がお似合いだ。｣

これ以上、
話す必要は無いと判断した陛下は
貴族たちに解散するように声をかけ
広間から去っていった。

残された三人は
周りの貴族たちから
嘲笑われたり罵られたりしたが、
陛下の言葉を噛み砕く事に必死だった。

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翌日、アマリリスの葬儀が行われた。
国中から多くの貴族が訪れ
若すぎる死を悲しんだ。
アマリリスを陥れる噂を流した者の親は
棺の横で土下座をして許しを乞うた。
それでもアマリリスの両親は許さず
付き合いのある家でも
絶縁を突きつけた。
その話はすぐに王都を駆け巡り
多くの貴族が社交界から追放された。

それと同時に五年に渡って
アマリリスを苦しめた三人が
北の塔へ幽閉されたことも知れ渡り、
貴族の親は政略結婚の重要性を
子が幼い頃から叩き込むようになり
ことの真相を知らない平民たちは
王子と美しい令嬢が
純愛を貫いたと語り継いでいった。