竜の血をひく婚約者に溺愛されています。

6

これまで婚約者であるわたししか
傍に置かなかったエル様が
メリーとも交流をしていることに乗じて
エル様の周りには
多くの令嬢が溢れるようになった。

エル様は毎日わたしに対して
愛を囁いてくれているが
自分の婚約者が令嬢たちに
囲まれているのを見るのは少し辛い。

今日も休み時間になると
エル様の机の周りには
たくさんの令嬢が集まっている。

その中の一人の令嬢が
エル様の腕に触れた時に
ついにわたしの堪忍袋の緒が切れた。

二人の間に入るように
エル様に話しかけ中庭に呼び出した。

｢なぜあの令嬢に腕を触らせたのですか…
エル様の婚約者はわたしですよね？
わたしは異性に身体を触らせる事は
今まで一度もありませんでした…
メリーも一緒に過ごすようになってから
エル様の周りには常に他の令嬢がいて
それを見る度に胸が苦しくなります。
愛してくださっていることは
重々承知の上ですが、
やはりエル様に触れるのは
わたしだけであってほしいのです…｣

するとエル様は口元を手で隠し
顔を背けてしまった。
やはりこのような気持ちは
伝えるべきでは無かったと
後悔をし始めた頃に
エル様が口を開きました。

｢イブ、君は嫉妬していたのかい？｣

その言葉に対してわたしは軽く頷く。

｢ごめんね。
今まで辛い思いをさせてしまって。
でも、それと同時に
イブが嫉妬してくれて嬉しいんだ。
僕はイブの事が大好きで
生涯添い遂げたいと思っているけれど
イブの気持ちを聞いた事がなかったから…
聞かせてくれないか？
イブは僕の事を愛してくれているの？｣

わたしは少し照れながらエル様に
｢エル様の事をお慕いしております｣と
小さな声で答えた。

その返事を聞いたエル様は
わたしのことを強く抱き寄せ
｢嬉しいよ。
これからはイブ以外の女性に
指一本触れさせないと誓うよ。｣と
言ってくれた。

二人で気持ちを確かめ合った後の
エル様の行動はとても早かった。
ノアとエスメを令嬢防御壁として
利用することに…
近付いてくる令嬢から
エル様を守るようにして立ちはだかると
その効果は抜群でエル様の周りの令嬢は
少しづつだが減っていった。
それに加えて教室の中では、
休み時間になる度に
エル様はわたしの机までやってきて
休み時間が終わると同時に
自分の席に戻るようになった。

このような行動を二ヶ月ほど続けると
令嬢たちも諦めたのか
無理に近付いてこようとはしなくなり
それとは反対に
わたしとエル様の関係は
甘いものとなっていった。

夏になる頃には
どこに行くにも手を繋いで歩き
別れの際には
お互いの頬にキスをするようになった。
そうしていくうちにエル様に
唇へのキスはしないのかと聞くと
｢結婚式の時に
君のファーストキスを貰うよ｣と言われて
赤面してしまったのはいい思い出だ。

時は流れて12月。
上旬に最上級生が卒業を迎え
下旬には進級試験があったのだが
エル様、ノア、エスメ、
メリーとわたしは
全員が優秀な成績を収めて
来年は同じクラスになることになった。
我が国の冬は厳しいことから
1月から3月までアカデミーは冬休みだ。

少しの間、
会えなくなる三人と挨拶を交して
いつも通りエル様と邸に帰ると
そこには兄たちが居た。

｢｢おかえり、エヴィ｣｣

久しぶりの兄との再会に頬が緩む。
少し挨拶を交わし
みんなで広間に集まることになった。

兄たちにこの邸に来た理由を聞くと
アカデミーが長期休暇に入ったから
領地に帰ってくるように
二人で迎えに来たそうだ。
婚約をする前であれば
喜んで領地に戻っていたはずだが
今はエル様と離れたくないという
気持ちが帰省するかを迷わせる。
すると兄たちは
お互いの顔を見合せて頷いた後
衝撃の発言をした。