上 下
47 / 87

痴漢退治12

しおりを挟む
 翌日は朝からソラの家を訪れました。
 リクは朝練に行くために、先に家を出ています。
 ソラも一緒に行くことが多いのですが、ソラ子になるために今日はいつもより家を出るのが遅いのです。
 これは、おっぱいお化けが通学する時間帯に合わせるためでもあります。
 おっぱいお化けと一緒に通学するのが目的ではありません。
 おっぱいお化けに痴漢をした人間を捜すことが目的です。

「はい、できたわよ」
「ありがとう」

 お化粧が終わり、ソラがソラ子になりました。
 あいかわらず、可愛いです。
 このまま押し倒してしまいたいくらいです。
 性別の壁を越えそうな可愛さです。

「じゃあ、行こうか」
「ええ、行きましょう」

 ソラ子と一緒に家を出ます。
 いつもより時間が遅いせいか、道を歩く人が多いような気がします。
 いつも見ている朝の光景に変化があって、新鮮な気持ちになります。
 けれど、浮つくわけにはいきません。
 痴漢の犯人を捕まえなければならないのです。
 私は気合を入れ直します。
 そして、いつもより混んでいる電車に乗り込みました。

「混んでるね」
「そうね」

 いつもなら人と人との間に隙間があるのですが、この時間帯は他人と触れそうなくらいです。
 高校に近付くほど人が多くなっていくのですが、最終的にはどうなってしまうのでしょう。
 圧し潰されないか心配です。
 ですが、それは他の人達の話です。
 私達の周囲は少し様子が違います。

「……私達のまわりだけ空いているわね」
「昨日と同じだね。きっと、キララが可愛いからだよ」

 ソラが昨日と同じお世辞を言ってくれます。
 昨日はそんなはずが無いと思いました。
 でも、今日はほんの少しだけ私が原因の可能性があると思ってしまいました。
 ただし、理由は可愛いからではありません。
 昨日のリクの言葉が頭をよぎったのです。

「……魔女っ子って、みんなの人気者よね」
「女の子はたいてい好きだよね。男の人も好きな人がいるみたいだよ」
「そうよね。みんなの人気者よね」

 そうです。
 魔女っ子は人気者のはずです。
 けっして、痴女扱いはされないはずです。
 実は少し不安になっていたのですが、私はソラの言葉に自信を取り戻しました。

 ガタンゴトン……ガタンゴトン……

 電車は私とソラを乗せて進みます。
 駅に着くたびに、サラリーマンや小学生が乗り込んできます。
 だいぶ、人が多くなってきました。
 それはつまり、死角が多くなってきたということです。
 痴漢が出るとしたら、そろそろでしょうか。
 そう考えた途端です。

「きゃっ!」

 隣で可愛い悲鳴が上がりました。
 見ると、ソラがふわりと舞い上がったスカートを押さえています。
 スカートめくりをされたのです。

「出たわね!」

 私は勢いよく振り返ります。
 けれど、そこに痴漢らしき人間はいませんでした。
 おっぱいお化けの言った通りです。
 痴漢をされたのに、痴漢らしき人間が見当たりません。
 どういうことでしょう。
 下から風が吹いたということもありませんでした。
 しかも、おっぱいお化けのときとは違い、私達の周囲には隙間があり、死角も少ないのです。
 見落とすことはないはずです。
 時間が経つほど痴漢が逃げる可能性は高くなります。
 駅に着いてしまえば、電車から降りてしまう可能性もあります。
 私は焦りますが、痴漢は見当たりません。
 せっかく痴漢が現れたのに逃がしてしまったと思いかけたときでした。
 少し離れたところが、ざわついています。
 そちらを見ると、見覚えのある顔がありました。

『こら! 大人しくしろ!』

 誰かを捕まえようとしているようです。
 女性に乱暴を働こうとしているのだとしたらお仕置きするところですが、そういう雰囲気ではありません。
 周囲の人達を見ても、様子を見守っているだけです。
 だとすれば、先ほどソラに不埒を働いた人間を捕まえてくれた可能性があります。
 彼らは次の駅で降りるようです。
 高校の最寄り駅よりも手前ですが、私とソラも降りることにします。
 結末を見届けるためです。
 自分の手で捕まえることにこだわりはありませんが、ちゃんと捕まったかは確認する必要があります。

「おはようございます」

 私が声をかけると、彼らは一列に並んで、そろって頭を下げてきました。

「姐さん! おはようございます!」

 そこにいたのは、私がお仕置きしたサッカー部の元悪人達でした。
 姐さん呼びは止めて欲しいですが、元気に朝の挨拶をするのはよいことです。
 すっかり、心を入れ替えてくれたようです。
 痴漢を捕まえてくれたのも、その一環でしょう。
 きっと、正義の心が芽生えたのです。

「姐さんのご友人のスカートをめくった人間を捕まえました」

 やはり、予想通りでした。
 しかし、彼らが私のお仕置きを受けたことを知らないソラは不思議そうな顔をしています。

「捕まえてくれて助かりましたけど、どうして先輩達がそんなことをするんですか?」

 ソラが尋ねると、彼らは青い顔をして答えてきました。

「俺達との出来事を知った店長が、学校でキララさんを護るように命令してきて……」
「キララさんに、もしものことがあったら、ゲイバーに就職させるって……」
「しっ! おまえら、それはバラすなって言われてるだろ! あのバケモノが来たらどうすんだ!」

 どうも、正義の心が芽生えたと思ったのは勘違いだったようです。
 でもまあ、形から入るのは悪くありません。
 最終的に正義に目覚めてくれたらよいのです。
 ただし、店長さんのことをバケモノと呼んだことは、伝えておこうと思います。

「それで、捕まえた痴漢はどこですか!」

 それよりも今は、問題の痴漢です。
 彼らと一緒に降りたはずですが、姿が見えません。
 まさか、逃げられたのでしょうか。

「こいつです!」

 そう思っていたら、彼らが捕まえた人間を出してきます。
 彼らの後ろに隠れていて、見えなかっただけのようです。
 けれど、出てきた相手は予想外の姿をしていました。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

お漏らし・おしがま短編小説集 ~私立朝原女学園の日常~

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:937pt お気に入り:12

domに無理やりおしっこ我慢させられちゃうsub

BL / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:136

美雨のひみつ日記

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:66

小スカBLシチュエーション集

BL / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:48

異世界でハーレム生活しています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:1,014

ちょっとエッチな執事の体調管理

mm
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:140

放尿見聞録

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:745pt お気に入り:11

処理中です...