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平日3

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「劇ですか」

 部長の提案に、私は考えます。
 演技というのは経験がありません。
 けれど、ポーズを取るのは得意です。
 特に魔女っ子ポーズは長年練習してきました。
 プロになるわけではないのですから、練習すれば文化祭の劇くらいはできると思います。
 それに――

「劇かぁ。キララさん、どうする?」

 ――劇であれば、おっぱいお化けがもたらす被害も限定的になるのではないでしょうか。
 不特定多数がおっぱいお化けの胸囲、もとい、脅威にさらされるのは変わりませんが、時間は劇の間だけなので限定的になります。
 なるほど。
 同人誌の売り子をするより、安全かも知れません。
 私は部長の提案に納得します。
 ただし、ひとつだけ懸念があります。

「劇だと激しい動きをする場合もありますよね? ストリップショーにならないでしょうか?」
「キララさん!? さっき言ってた紐を着せる気!? 着ないよ!?」

 私の言葉を聞いて、おっぱいお化けが叫びます。
 どうやら、紐が不満のようです。
 被害を減らすためには、おっぱいお化けに紐を着せるのは必須なのですが、どうしましょう。

「ま、まあ、衣装はおとなしめの方がいいかな」

 部長にも言われてしまいました。
 部長はおそらく、おっぱいお化けの圧力に屈してしまったのでしょう。
 おっぱいお化けの脅威は、弾力も凄そうなので無理もありません。
 しかし、困りました。
 劇にして時間を限定的にすることで、被害は抑えられるでしょう。
 ですが、もう一声欲しいところです。
 私は考えます。
 そして、案を思いつきました。

「おっぱ……加藤さんを主役にしたヒーローショーなんてどうでしょうか?」
「ヒーローショー?」
「ええ。全身を覆うようなヒーロースーツを着れば、ポロリも無いと思います」
「もともと、ポロリするような衣装を着るつもりはないよ!?」

 私の案は、ヒーロースーツで全身を覆い、闇の波動を抑え込むというものです。
 ヒーロースーツを、本来の力を抑え込むための拘束具として利用するのです。
 以前見たアニメで似たようなことをやっていたので、効果はあるはずです。
 ただ、あのアニメでは、ちょくちょく暴走していたので、油断はできません。
 そこは、おいおい詰めていくことにしましょう。
 まずは、おっぱいお化けに、この役を引き受けてもらわなければなりません。

「それに、私に主役なんか無理だよ」

 私の提案に、おっぱいお化けは乗り気ではないようです。
 これはいけません。
 ヒーロー以外の役でおっぱいお化けが似合う役といえば、悪の女幹部です。
 ですが、悪の女幹部といえば、色気過多と相場が決まっています。
 それでは被害が拡大してしまいます。
 なんとか、おっぱいお化けをその気にさせなければなりません。
 私は説得にあたります。

「そんなことないわ。加藤さんはヒーロー役に向いていると思うわ」
「そ、そうかな? 私、運動神経もよくないけど……」

 おっぱいお化けは尻込みしているようです。
 でも、私が『向いている』と言ったら、少し満更でもなさそうな顔をしました。
 このまま煽てればいけそうです。

「運動神経がよくなくても、加藤さんには必殺技があるじゃない」
「必殺技?」
「加藤ちゃん、必殺技なんて持ってるの?」
「そんな妙なもの、持ってないですよ」

 私はおっぱいお化けの優れているところを褒めますが、本人は心当たりがないようです。
 部長もなんのことかわかっていません。
 もう少し詳しく説明することにします。

「必殺パイスラッシュで悪の構成員を倒しまくれば、観客の目は加藤さんに釘付けよ」
「パイスラッシュ!?」
「あー……まあ、たしかに、観客の目を釘付けにできるかも」
「部長さん!?」

 アレの破壊力は胸囲、いえ、脅威です。
 たぶん、選ばれし者しか抜けない伝説の剣とか、そういうものと同じくらいの威力があると思います。
 魔法を疑似的に再現することができる私でも、再現は不可能なのです。
 おそらく、伝説の盾とか、そういうものがなければ防ぐこともできないでしょう。
 いずれは対策を講じなければなりません。
 ですが、それは今ではありません。
 今はおっぱいお化けを説得することが最優先です。
 そして、これだけ褒めちぎれば、あと一歩だと思います。
 そう思って、おっぱいお化けを見ると、なぜか彼女はジト目でこちらを見ていました。

「絶対やらないよ?」
「なぜ!?」

 おかしいです。
 これだけ褒めたというのに不思議です。
 理解できません。

「文化祭まで時間はあるし、ゆっくり考えよっか」
「むぅ」

 部長はおっぱいお化けの味方のようです。
 世界の平和を護るために頑張ったのに残念です。
 やはり、正義の味方は孤独ということなのでしょうか。
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