白雪姫は処女雪を鮮血に染める

かみゅG

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004.回想(思春期)

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 私の身体の変化は止まらなかった。
 胸やお尻に少しずつ肉がついていき、身体が次第に丸みを帯びていく。
 それに伴い、周囲の人間が私を見ることが増えてきたような気がする。
 人とすれ違えば、後ろから視線を感じることが多くなった。
 けど私は、哀れみの視線を向けられていることを直視することが怖くて、後ろを振り返ることは無かった。
 それなのに、それだから、私の不安は少しずつ心の底に溜まっていった。
 まるで、ティーカップにスプーンで一匙ずつ紅茶を足すように、少しずつ。
 それは、並々と注いだ紅茶のように、ティーカップのふちを超えても、しばらくは耐えていた。
 でも、それにも限界はある。
 限界まで注いだせいなのだろう。
 私の中に溜まっていたそれは、溢れると同時に勢いよく流れ出た。
 心から溢れて、身体から溢れて、私の中から血となって流れ出た。

 私の中から流れ出る血を見ながら、これは罰だのだと思った。
 罪を犯したから罰を受けた。
 そう思った。
 私は自分がどんな罪を犯したのか分からなかった。
 けど、分からないこと、知らないことが、罪をより重くしているのだと思った。
 私は恥も外聞も忘れて侍女に泣きついた。
 それほど、親しい相手でも無かったけど、それでも他に頼ることができる人間がいなかった。
 父と母に相談することはできなかった。
 父と母が、罪を犯した私をどんな目で見てくるのか、想像するだけで怖かった。
 だから、誰にも言わないでと懇願しながら、侍女に泣きついた。
 それなのに、次の日には城中に私の身体の異変が広まっていた。

 なぜか城中、お祝いムードだった。
 私が罰を受けたから。
 そう思った。
 そう思ったから、涙が出そうになった。
 そんなに周囲の人間から恨まれていたのかと、悲しくなった。
 けれど、それは違った。
 なぜか、みんなが祝福してくれた。
 大人に近づいたのだと、教えてくれた。
 罪を犯したら、罰を受けたら、大人になるのかと、そう思った。
 だとしたら、私は大人になりたくない。
 ならなくていいと思った。
 だけど、そうじゃなかった。

 無知な私に、みんなが教えてくれた。
 胸が大きくなるのは、赤ちゃんにお乳を上げるためなのだと。
 お尻が大きくなるのは、赤ちゃんの部屋を作るためなのだと。
 股から血が流れるのは、赤ちゃんを産む準備ができたからなのだと。
 色々なことを教えてくれた。
 初めて知ることばかりだった。
 だから、私は色々なことを訊いた。
 知ることが重要なのだと、知っていることが大切なのだと、そう思った。
 そして、知らないことは罪なのだと、そう思った。
 だけど、私は知り過ぎてしまった。

 赤ちゃんを産むためには、男性と女性が協力し合うことが必要なのだと学んだ。
 赤ちゃんを産むためには、男性と女性が愛し合うことが必要なのだと学んだ。
 愛し合うためには、男性が女性を、女性が男性を、惹きつけることが必要なのだと学んだ。
 そして、赤ちゃんを作るための行為についても学んだ。
 まだ早いと、教えてくれない人もいた。
 けど、早いからこそ知っている必要があると、教えてくれる人もいた。
 正しい知識を持っていないと、正しい行為をしないと、正しく赤ちゃんが産まれてこないと教えてくれた。
 私は熱を出していたのだと思う。
 一気に知識を頭に詰め込んだせいで、熱を出していたのだ。
 熱は頭から溢れ、身体を火照らせた。
 学んだことが頭の中をぐるぐると回り、頭の中から消えてくれなかった。

 その夜、私は自分の指を口の中に入れ、丹念にしゃぶった。
 まるで、赤ちゃんの頃に戻ったように、丹念にしゃぶった。
 母の乳房に吸い付くように、丹念にしゃぶった。
 そこから甘いお乳は出てこなかったけど、指が甘い唾液にまみれた。
 大切なところなのだと教わった。
 繊細なところなのだと教わった。
 敏感なところなのだと教わった。
 だから、指を唾液にまみれさせた。
 誤って、傷付けないようにした。
 私はそこに、そっと触れた。

 まずは胸。
 赤ちゃんにお乳を与えるところだ。
 そこに、そっと触れる。
 すると、こそばゆいような、痺れるような、不思議な感覚が走った。
 次に足の間。
 赤ちゃんが出てくるところだ。
 そこに、そっと触れる。
 すると、力が抜けるような、蕩けるような、不思議な感覚が走った。
 同時に触れる。
 全身を感覚が走り抜け、意識が遠のいた。
 なのに、手が止まらない。
 私は朦朧とした意識まま、本能が求めるままに、両手を動かし続けた。

 私は覚えた行為を毎夜続けた。
 これは、赤ちゃんを産むための準備なのだと思った。
 だって、赤ちゃんにお乳を与える胸や、赤ちゃんの出てくるところを、ほぐすのだから。
 行為に慣れることで、赤ちゃんが安心して産まれてくることができるのだ。
 そう思った。
 だから、私がこれを止められないのは、仕方が無いことなのだ。
 朝に、身体に残る感覚を思い出し。
 昼に、無意識に手が触れそうになるのを我慢し。
 夕に、あと少しだと期待に胸を膨らませ。
 夜に、再び行為に耽る。
 これは自然なことなのだ。
 だって、必要なことなのだから。

 あるとき、ふと気付いた。
 まるで猫のようだなと。
 行為に慣れてきた。
 色々な工夫をするようになった。
 場所や触り方。
 緩急の付け方。
 思い浮かべる内容。
 意識が飛びそうになる合間に、ふと冷静になる瞬間がある。
 そんなときに気づいた。
 行為の最中に私が上げる声は、まるで猫のようだと思った。

 父の寝室から猫の声が聴こえてくることがある。
 母が訪れているとき。
 父に懐いている子供が訪れているとき。
 必ず、その声が聴こえてきた。
 もし私が父の寝室を訪れていたら、どうなっていたのだろう。
 私も猫の声を上げていたのだろうか。
 そんな疑問が頭をよぎる。
 そして、身体が震えた。
 それは、行為の最中に起こる震えじゃなかった。
 そんな気持ちのよいものではなかった。
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