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008.森での生活(トマトとチェリー)
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「今日は暖かいわね」
冬に近い秋だけど、まだ雪は降っていない。
だから、風がなくて、陽が射している日は、それなりに暖かい。
「そうね。でも、夕方になると急に寒くなるから、気をつけてね」
モモが昼食の準備をしながら、相槌を打ってくる。
私がここにいる理由は、モモの手伝いをするためだ。
お皿を出したり、野菜を運んだり、そんな簡単な手伝いをするためだ。
けど、そんな簡単な手伝いでも、少しは身体を動かす。
私の体力は少しずつ戻ってきていた。
「もうすぐ、お昼よね。トマトとチェリーを呼びにいってくるわ」
私がそう言うと、モモが料理をする手を止めて、こちらを向いてきた。
「私が行くから大丈夫よ。白雪姫は身体が弱いんだから……」
「外を歩くくらい大丈夫よ。モモは料理をしていて」
私はモモにそう言い残して、建物から外に出た。
少し冷たい、でも冷たすぎない空気が、肺の中に入ってくる。
まるで、身体の中が洗われるようだ。
やっぱり、新鮮な空気は気持ちがいい。
「モモは心配性なんだから」
心配してくれるのは嬉しいけど、ちょっと心配しすぎだと思う。
私に体力が無いのは、毒で寝込んでいたせいで、身体が弱っていたからだ。
別に病気というわけじゃないんだから、毒が抜けて目覚めた後は、体力も戻ってきている。
むしろ、どんどん身体を動かした方が、体力も増えて体調もよくなっていく。
「さて、トマトとチェリーは、どこにいるのかしら。そんなに遠くには行っていないはずだけど」
怒りっぽい男の子、トマト。
恥ずかしがり屋の女の子、チェリー。
二人は一緒にいることが多い。
トマトの後ろにチェリーが隠れるように。
チェリーの前にトマトが立って庇うように。
二人は一緒にいることが多かった。
孤児院は森に囲まれている。
森の中に孤児院が建っているとも言える。
その森は孤児院で暮らす子供達に恵みを与えてくれる。
春は野草や山菜。
夏は狩りで獲った獲物。
秋は木々に実る果実。
冬は火にくべる薪。
そのどれもが、森がもたらしてくれるものだ。
孤児院の子供達は、今の季節は薪を集めている。
冬に凍えてしまわないように、秋の終わりから冬の始めにかけて、少しずつ集めるのだ。
子供の身体では一度に大量に拾い、運ぶことはできない。
だから、毎日、森を歩いて、少しずつ集めるのだ。
その役目は、トマトとチェリーが担当していた。
二人を呼びにいくとは言ったけど、別に呼びに行かなくても、お腹が空いたら自分達で戻ってくる。
ただ、腹時計だと誤差があるので、食事の時間が近づくと呼びに行くというだけだ。
そうしないと、他の子供達が待ちきれなくなってしまうのだ。
孤児院の食事は、必ずみんなで食べることになっている。
「川がある方かな」
二人は薪を入れる籠を持っていっただけだ。
他の荷物は持っていない。
冬とはいっても、森の中を長時間歩けば汗もかくし、喉も渇く。
喉を潤すために、川の側を歩くことが多いだろう。
その程度の推測だったけど、私は二人が川の近くにいると考えて、そちらに向けて歩き出した。
「ぁ……」
「……っ」
私の推測は当たっていた。
長い時間、歩き回らなくても、私はすぐに二人を見つけることができた。
「……ぁあ~~~!」
「……っと、……」
二人は薪の入った籠を地面に置いていた。
どうやら休憩中のようだ。
身体を寄せ合っている。
今日は風がなくて暖かい方だけど、それでも気温は低い。
長時間、森の中を歩いて、身体が冷えたのだろう。
二人で身を寄せ合って、互いを温め合っている。
トマトがチェリーを温めるように、激しく身体を動かす。
チェリーがトマトを温めるように、強く相手を抱きしめる。
二人は、まるで一つになったかのように、互いが互いを温め合っていた。
「もっと、強く行くぞっ!」
「あああぁぁぁあああ~~~!」
普段は恥ずかしがり屋のチェリーが大きな声を出している。
トマトと二人きりのときは大胆になるのだろうか。
身体を震わせながら、大きな声を出して、悦んでいる。
そして、トマトの方も、チェリーのそんな声を聴くと、より激しく身体を動かす。
悦ぶチェリーを、さらに悦ばせようとしているみたいだ。
体力が持つのか心配になるくらいに、狂ったように動き続けている。
チェリーが声を上げれば、トマトの動きが激しくなる。
トマトの動きが激しくなれば、チェリーがさらに声を上げる。
それが繰り返されて、どこまでもどこまでも、高く昇り詰めていく。
でも、それにも限界がある。
トマトの身体がひときわ強く震えて。
チェリーの身体がひときわ強く波打って。
それを最後に、二人の動きが止まる。
それまでの騒がしさが嘘のように、辺りに静寂が訪れた。
静寂が訪れてしばらくすると、二人は気だるげに身体を起こし、側にある川に向かう。
「冷たい」
川の水を手ですくって、チェリーが呟く。
「我慢しろよ。このままじゃ、戻れないだろ」
トマトがその横で、川の水を使って自分の身体を清め始める。
「お腹空いたもんね。早く戻らなきゃ」
「いっぱい動いたからな」
「ふふっ。そうだね」
トマトが身体を清め始めたのを見て、チェリーも同じように自分の身体を清めていく。
「……」
私は少し離れた木陰から、そっと立ち去る。
声をかける必要はないだろう。
あの様子なら、直に戻ってくるはずだ。
そう判断して、私はモモが待つ孤児院に戻っていった。
冬に近い秋だけど、まだ雪は降っていない。
だから、風がなくて、陽が射している日は、それなりに暖かい。
「そうね。でも、夕方になると急に寒くなるから、気をつけてね」
モモが昼食の準備をしながら、相槌を打ってくる。
私がここにいる理由は、モモの手伝いをするためだ。
お皿を出したり、野菜を運んだり、そんな簡単な手伝いをするためだ。
けど、そんな簡単な手伝いでも、少しは身体を動かす。
私の体力は少しずつ戻ってきていた。
「もうすぐ、お昼よね。トマトとチェリーを呼びにいってくるわ」
私がそう言うと、モモが料理をする手を止めて、こちらを向いてきた。
「私が行くから大丈夫よ。白雪姫は身体が弱いんだから……」
「外を歩くくらい大丈夫よ。モモは料理をしていて」
私はモモにそう言い残して、建物から外に出た。
少し冷たい、でも冷たすぎない空気が、肺の中に入ってくる。
まるで、身体の中が洗われるようだ。
やっぱり、新鮮な空気は気持ちがいい。
「モモは心配性なんだから」
心配してくれるのは嬉しいけど、ちょっと心配しすぎだと思う。
私に体力が無いのは、毒で寝込んでいたせいで、身体が弱っていたからだ。
別に病気というわけじゃないんだから、毒が抜けて目覚めた後は、体力も戻ってきている。
むしろ、どんどん身体を動かした方が、体力も増えて体調もよくなっていく。
「さて、トマトとチェリーは、どこにいるのかしら。そんなに遠くには行っていないはずだけど」
怒りっぽい男の子、トマト。
恥ずかしがり屋の女の子、チェリー。
二人は一緒にいることが多い。
トマトの後ろにチェリーが隠れるように。
チェリーの前にトマトが立って庇うように。
二人は一緒にいることが多かった。
孤児院は森に囲まれている。
森の中に孤児院が建っているとも言える。
その森は孤児院で暮らす子供達に恵みを与えてくれる。
春は野草や山菜。
夏は狩りで獲った獲物。
秋は木々に実る果実。
冬は火にくべる薪。
そのどれもが、森がもたらしてくれるものだ。
孤児院の子供達は、今の季節は薪を集めている。
冬に凍えてしまわないように、秋の終わりから冬の始めにかけて、少しずつ集めるのだ。
子供の身体では一度に大量に拾い、運ぶことはできない。
だから、毎日、森を歩いて、少しずつ集めるのだ。
その役目は、トマトとチェリーが担当していた。
二人を呼びにいくとは言ったけど、別に呼びに行かなくても、お腹が空いたら自分達で戻ってくる。
ただ、腹時計だと誤差があるので、食事の時間が近づくと呼びに行くというだけだ。
そうしないと、他の子供達が待ちきれなくなってしまうのだ。
孤児院の食事は、必ずみんなで食べることになっている。
「川がある方かな」
二人は薪を入れる籠を持っていっただけだ。
他の荷物は持っていない。
冬とはいっても、森の中を長時間歩けば汗もかくし、喉も渇く。
喉を潤すために、川の側を歩くことが多いだろう。
その程度の推測だったけど、私は二人が川の近くにいると考えて、そちらに向けて歩き出した。
「ぁ……」
「……っ」
私の推測は当たっていた。
長い時間、歩き回らなくても、私はすぐに二人を見つけることができた。
「……ぁあ~~~!」
「……っと、……」
二人は薪の入った籠を地面に置いていた。
どうやら休憩中のようだ。
身体を寄せ合っている。
今日は風がなくて暖かい方だけど、それでも気温は低い。
長時間、森の中を歩いて、身体が冷えたのだろう。
二人で身を寄せ合って、互いを温め合っている。
トマトがチェリーを温めるように、激しく身体を動かす。
チェリーがトマトを温めるように、強く相手を抱きしめる。
二人は、まるで一つになったかのように、互いが互いを温め合っていた。
「もっと、強く行くぞっ!」
「あああぁぁぁあああ~~~!」
普段は恥ずかしがり屋のチェリーが大きな声を出している。
トマトと二人きりのときは大胆になるのだろうか。
身体を震わせながら、大きな声を出して、悦んでいる。
そして、トマトの方も、チェリーのそんな声を聴くと、より激しく身体を動かす。
悦ぶチェリーを、さらに悦ばせようとしているみたいだ。
体力が持つのか心配になるくらいに、狂ったように動き続けている。
チェリーが声を上げれば、トマトの動きが激しくなる。
トマトの動きが激しくなれば、チェリーがさらに声を上げる。
それが繰り返されて、どこまでもどこまでも、高く昇り詰めていく。
でも、それにも限界がある。
トマトの身体がひときわ強く震えて。
チェリーの身体がひときわ強く波打って。
それを最後に、二人の動きが止まる。
それまでの騒がしさが嘘のように、辺りに静寂が訪れた。
静寂が訪れてしばらくすると、二人は気だるげに身体を起こし、側にある川に向かう。
「冷たい」
川の水を手ですくって、チェリーが呟く。
「我慢しろよ。このままじゃ、戻れないだろ」
トマトがその横で、川の水を使って自分の身体を清め始める。
「お腹空いたもんね。早く戻らなきゃ」
「いっぱい動いたからな」
「ふふっ。そうだね」
トマトが身体を清め始めたのを見て、チェリーも同じように自分の身体を清めていく。
「……」
私は少し離れた木陰から、そっと立ち去る。
声をかける必要はないだろう。
あの様子なら、直に戻ってくるはずだ。
そう判断して、私はモモが待つ孤児院に戻っていった。
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