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第二章 ウチのダンジョンに冒険者パーティがやって来た!
第八話 選択
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1LDKのリビングの壁に取り付けられたモニターに、少年剣士姿のアーサーと、その前に跪いている緋色の騎士服に白いマントを着た、金髪碧眼の青年騎士が映し出されている。
それを食い入るように見る、魔王城のダンジョンマスター、火竜のフラウ。
アーサーが佩帯しているのは聖剣エクスカリバーだ。この剣を使えるのは勇者しかいない。
あいつが勇者とバレたらヤバい。今のオレはそれだけで頭が一杯で。
「あ、あのっ。フラウさん! オレっ!」
「ディーン?」
なんとか、モニターからフラウの注意を逸らさなければ――!!
「前に頂いたエロ本、じゃなくて教本『竜と薔薇色の性生活』でっ、質問したいことがっ」
「……ああ。何でも聞いて?」
「ええっと、あのぅ、そのぅ、あの教本を使用するところに持ち込むには、どうすればっ。フラウさんは、どうやってユリウスさんを堕としたんですか?!」
冷や汗をダラダラ流しながら、こんな時だというのに変な質問をしちゃったよっ。
「僕の体験談を、聞きたいのかい?」
戸惑いながら微笑むフラウに、コクコクと頷いた。
「実は――ユリウスは昔、勇者だったんだ」
「え――――っ?!」
腰が抜けるほどびっくりして、開いた口が塞がらない。
「昔、先代の魔王さまと一緒に旅をしていた時、たまたま勇者になったばかりのユリウスと出会って。それで、戦って勝ったんだ。隷属の首輪を負けたユリウスにつけて、そのまま僕のものに……」
フラウは、悪そうな顔でニヤリ、と笑った。
「そ、それで……?」
「もちろん、その後は、堕としてなし崩しだ。当たり前だろ」
な、なんて悪どいんだ……。
「だから、さ。ディーンの勇者くんも、さっさとヤっちゃいなよ」
ギクゥッ……バレてるっ。アーサーが勇者だって、バレてるよっ!
「ディーンの勇者くんの場合、Lvはまだ高くないんだけど、危険な聖剣エクスカリバーを手に入れちゃってるからね。幸いにも、ディーンのダンジョンに取り込めたから、良かった。人族側に、聖剣も勇者も渡してはならないよ」
フラウは言い聞かせるように、ゆっくりと話す。
「いいかい? 聖剣エクスカリバーを勇者から取り上げて、君に隷属させるんだ。その後は勇者君を、ディーンの好きにしていいと、魔王様は言って下さった」
そんな……魔王様の命令は絶対だ。だけど、友達を裏切るようなことは……。
「君が出来ないのなら、魔王様がおやりになる。どちらがいいか、なるべく早く答えを出して」
ソファから立ち上がるとフラウは、ポンと俺の肩を叩いた。
「魔王様の得意なのは闇魔法だ。勇者君がどうなるのか……わかるでしょ?」
火竜のフラウが立ち去った後も、しばらくオレはその場で呆然と立ちすくんでいた……。
◆◇
「ディーン? どうかしたのか?」
ソファに座ってぼーっとしているオレに、アーサーが心配そうな顔をして声を掛けた。
「あっ、ああ。……なんでもない。そっちはどうだった?」
金髪碧眼のキラキラした聖騎士は、もうすでにダンジョンを去っていた。
「うん、そのことなんだけど。ランスロットが言うには、もうすぐSランク冒険者パーティがここに送り込まれて来るんだって。しかも、国からダンジョンマスターを倒せと、命じられているって言うんだ」
「なん、だって?!」
これまでオレのダンジョンは、国とギルドから有用指定されて、保護対象だった。いい魔石や貴重な薬草が取れるし、『蘇りのミサンガ』のお陰で死に戻りも出来るから安全だと。
人族はアーサーが言っていた通り、本気で俺達魔族と戦争する気なのか?
「ディーン、Sランク冒険者パーティの襲撃に備えよう!」
「分かった」
ギルドによって冒険者は、S、A、B、C、D、E、Fと7つにランク分けされている。
Sランクパーティなら、メンバーはSからA、Bが一人くらい混じっているかもだけど。最高ランクの強者が、派遣されることになる。
うちは、初心者から中級者向けダンジョンなのに、ひどい!!
「落とし穴は6階層から作ったけど、高ランクの冒険者は5階層まで一気に来てしまうのが、ランスロットで証明されてしまったよ。足止めにしかならないかもだけど、2階層から罠を仕掛けた方がいい」
「そうだけど、落とし穴だけというのも単調だよな」
タブレットでダンジョンの上層階の見取り図を表示させると、アーサーがオレの隣に座って覗き込んだ。
サラリ、とアーサーの艶やかな黒髪が揺れて、シトラス系の花の良い香りがした。ここに来てから少し伸びた髪は、肩に届きそうだ。
アーサーを隷属させて、オレのものにするように――さっき、フラウに言われた言葉を思い出し、オレの心臓はバクバクと音を立て始める。
「DPはどれくらいあるの? 罠より強力なモンスターを召喚できるなら、した方がいいけど」
「そ、それは。えっと。ないんだ……」
「えーっ?! ないって全然ないの? どうして?」
「村里で、出産ラッシュだったから、DPで交換したベビー用品とか、お祝い品も嵩んじゃって……」
鬼の子供は、妊娠期間一ヵ月で生まれちゃうんだよ~。しかも、双子や三つ子もざらだから、一気に村里の人口も増えている。
「ゴブリンやオークは成長も早いから、すぐに戦力になってくれると思うけど……」
「お嫁さんがハーフエルフだったお陰で、上位種の子供が生まれたんだよね。ゴブリンナイトやメイジ、ビショップ、ホブゴブリン。ハイオークは、将来有望だけど、襲撃に間に合うかなあ」
3か月もあれば、鬼たちは成人する。Sランク冒険者パーティの襲撃には、間に合わないかもだけど。
オレとアーサーは、またDPを節約した罠や対策に頭を絞ることになった。
それを食い入るように見る、魔王城のダンジョンマスター、火竜のフラウ。
アーサーが佩帯しているのは聖剣エクスカリバーだ。この剣を使えるのは勇者しかいない。
あいつが勇者とバレたらヤバい。今のオレはそれだけで頭が一杯で。
「あ、あのっ。フラウさん! オレっ!」
「ディーン?」
なんとか、モニターからフラウの注意を逸らさなければ――!!
「前に頂いたエロ本、じゃなくて教本『竜と薔薇色の性生活』でっ、質問したいことがっ」
「……ああ。何でも聞いて?」
「ええっと、あのぅ、そのぅ、あの教本を使用するところに持ち込むには、どうすればっ。フラウさんは、どうやってユリウスさんを堕としたんですか?!」
冷や汗をダラダラ流しながら、こんな時だというのに変な質問をしちゃったよっ。
「僕の体験談を、聞きたいのかい?」
戸惑いながら微笑むフラウに、コクコクと頷いた。
「実は――ユリウスは昔、勇者だったんだ」
「え――――っ?!」
腰が抜けるほどびっくりして、開いた口が塞がらない。
「昔、先代の魔王さまと一緒に旅をしていた時、たまたま勇者になったばかりのユリウスと出会って。それで、戦って勝ったんだ。隷属の首輪を負けたユリウスにつけて、そのまま僕のものに……」
フラウは、悪そうな顔でニヤリ、と笑った。
「そ、それで……?」
「もちろん、その後は、堕としてなし崩しだ。当たり前だろ」
な、なんて悪どいんだ……。
「だから、さ。ディーンの勇者くんも、さっさとヤっちゃいなよ」
ギクゥッ……バレてるっ。アーサーが勇者だって、バレてるよっ!
「ディーンの勇者くんの場合、Lvはまだ高くないんだけど、危険な聖剣エクスカリバーを手に入れちゃってるからね。幸いにも、ディーンのダンジョンに取り込めたから、良かった。人族側に、聖剣も勇者も渡してはならないよ」
フラウは言い聞かせるように、ゆっくりと話す。
「いいかい? 聖剣エクスカリバーを勇者から取り上げて、君に隷属させるんだ。その後は勇者君を、ディーンの好きにしていいと、魔王様は言って下さった」
そんな……魔王様の命令は絶対だ。だけど、友達を裏切るようなことは……。
「君が出来ないのなら、魔王様がおやりになる。どちらがいいか、なるべく早く答えを出して」
ソファから立ち上がるとフラウは、ポンと俺の肩を叩いた。
「魔王様の得意なのは闇魔法だ。勇者君がどうなるのか……わかるでしょ?」
火竜のフラウが立ち去った後も、しばらくオレはその場で呆然と立ちすくんでいた……。
◆◇
「ディーン? どうかしたのか?」
ソファに座ってぼーっとしているオレに、アーサーが心配そうな顔をして声を掛けた。
「あっ、ああ。……なんでもない。そっちはどうだった?」
金髪碧眼のキラキラした聖騎士は、もうすでにダンジョンを去っていた。
「うん、そのことなんだけど。ランスロットが言うには、もうすぐSランク冒険者パーティがここに送り込まれて来るんだって。しかも、国からダンジョンマスターを倒せと、命じられているって言うんだ」
「なん、だって?!」
これまでオレのダンジョンは、国とギルドから有用指定されて、保護対象だった。いい魔石や貴重な薬草が取れるし、『蘇りのミサンガ』のお陰で死に戻りも出来るから安全だと。
人族はアーサーが言っていた通り、本気で俺達魔族と戦争する気なのか?
「ディーン、Sランク冒険者パーティの襲撃に備えよう!」
「分かった」
ギルドによって冒険者は、S、A、B、C、D、E、Fと7つにランク分けされている。
Sランクパーティなら、メンバーはSからA、Bが一人くらい混じっているかもだけど。最高ランクの強者が、派遣されることになる。
うちは、初心者から中級者向けダンジョンなのに、ひどい!!
「落とし穴は6階層から作ったけど、高ランクの冒険者は5階層まで一気に来てしまうのが、ランスロットで証明されてしまったよ。足止めにしかならないかもだけど、2階層から罠を仕掛けた方がいい」
「そうだけど、落とし穴だけというのも単調だよな」
タブレットでダンジョンの上層階の見取り図を表示させると、アーサーがオレの隣に座って覗き込んだ。
サラリ、とアーサーの艶やかな黒髪が揺れて、シトラス系の花の良い香りがした。ここに来てから少し伸びた髪は、肩に届きそうだ。
アーサーを隷属させて、オレのものにするように――さっき、フラウに言われた言葉を思い出し、オレの心臓はバクバクと音を立て始める。
「DPはどれくらいあるの? 罠より強力なモンスターを召喚できるなら、した方がいいけど」
「そ、それは。えっと。ないんだ……」
「えーっ?! ないって全然ないの? どうして?」
「村里で、出産ラッシュだったから、DPで交換したベビー用品とか、お祝い品も嵩んじゃって……」
鬼の子供は、妊娠期間一ヵ月で生まれちゃうんだよ~。しかも、双子や三つ子もざらだから、一気に村里の人口も増えている。
「ゴブリンやオークは成長も早いから、すぐに戦力になってくれると思うけど……」
「お嫁さんがハーフエルフだったお陰で、上位種の子供が生まれたんだよね。ゴブリンナイトやメイジ、ビショップ、ホブゴブリン。ハイオークは、将来有望だけど、襲撃に間に合うかなあ」
3か月もあれば、鬼たちは成人する。Sランク冒険者パーティの襲撃には、間に合わないかもだけど。
オレとアーサーは、またDPを節約した罠や対策に頭を絞ることになった。
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