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第二章 ウチのダンジョンに冒険者パーティがやって来た!

第九話 Sランク冒険者パーティーがやって来た

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 テーブルのお醤油差しに手を伸ばしたら、アーサーが取って渡してくれた。

「ありがと。――Sランクパーティってさ、すごく数が限られてるじゃん。Sランクまで上り詰めたら、国から騎士爵を与えられて、貴族の仲間入りなんでしょ?」

「そうだね、一代限りの継承なしだけど。平民が貴族位を得る数少ない手段のひとつが、Sランク冒険者になることだけど、容易い道ではないよ」

「あの騎士はどのパーティが来るのかまでは、言ってなかったの?」

「うん、残念ながら。……ねぇ、ディーンてば、さっきから海老と卵ばっかり取ってない?」

 オレ達は手巻き寿司を食べているんだけど、つい好物の海老と卵ばかり食べてた。

「寿司パーティにしようって言ったの、ディーンなんだからね!」


 Sランクパーティ……って、何かスシパーティと似てない……? つい、食べたくなっちゃったんだよ。


「色々考えたんだけどさ。やっぱ、Sランクともなれば、オレが直接対決するしかないんじゃないかな……」

 サーモンとイクラを取って海苔を巻くアーサーの手が止まった。

「確かに。新規に強力なモンスターも召喚出来ないとなると……。ここで一番強いのは、ミノタウルスだけど、Sランクパーティなら問題なく倒せちゃうだろうし」

 チラっとこっちを見て、手巻きを醤油につけて、パクリと頬張るアーサー。

「ディーンを本気で倒しに来るなら、きっと竜殺しドラゴンスレイヤーも装備して来るよね」

「えっ?! マジかよっ……」

 ドラゴンの鱗を抉りながら突き刺すのに都合の良い形状をした、竜殺しドラゴンスレイヤー。想像するだけで、身体がガタガタと震える。


「――い、嫌だっ。イタイのヤダッ!!」


 竜殺しドラゴンスレイヤーでオレを突き刺すだと……?! なんて人族は、残酷な種族なんだ。ひどい。


「落ち着いて! ほら、お茶飲んで」

 目の前が真っ暗になって、気が遠くなる。アーサーに背中をさすられながら、お茶をごくりと飲んだ。


「直接対決するにしても、最下層に到達までに出来るだけ、戦力を削って置きたいところだよね」

「やだ、やだっ、戦わずにお引き取り願いたい!」


 フローリングの上に大の字になって、ジタバタするオレをヤレヤレ、と肩をすくめて見ているアーサー。


 ……Sランクパーティに、なんとか穏便に帰っていただく方法はないのか?



◆◇


「ディーン、来たよっ」


 ついに、来ちゃったのか。Sランク冒険者パーティがっ……ガクガク、ブルブル。


「毛布被ってないでさ、ちゃんとモニター見てよ」 

「誰にだって、苦手なものがあるだろ? オレにとっては竜殺しドラゴンスレイヤーがそれだっ」


 あれからオレとアーサーが練りに練って立てたのは、コードネーム:マーケットガーデン作戦。

 うまく行けば、オレが戦わずして勝てるはず。

 おそるおそる毛布のすき間からモニターを見ると、5人組の冒険者たちがダンジョンの入り口に立っていた。


「騎士と魔法剣士、あれは賢者だね。それに聖女と暗殺者アサシンか……。さすがSランク、上位クラスだね」
 
「なんだよ、あいつら。オレを殺しに来たくせに『蘇りのミサンガ』を購入する気でいたのかよっ」

「まぁ、まぁ。あれがディーンの善意だってこと、人族たちは知らないから……」

「くっそ。自販機、品切れにして置いて正解だった!」

「情報収集もしたいから、会話も聞こう」


 アーサーはリモコンを手にすると、音量を上げた。


◆◇


「『蘇りのミサンガ』が品切れになっているな」

 自販機の前で、 暗殺者アサシンの男が舌打ちした。

「ったく、肝心な時に。ローランド、どうする?」

 魔法剣士の男が、このパーティのリーダーらしき、騎士を見る。

「アールはどう思う? みんなの安全を考えれば、『蘇りのミサンガ』を装備して攻略したい」

 パーティメンバーの中で一番年嵩の壮年の男、賢者が口を開く。

「資料によれば、このダンジョンの再ポップは24時間後だ。一日待っていれば『蘇りのミサンガ』も手に入るだろう」

「じゃあ、今日はいったん帰って、明日出直しますか?」

 白の法衣服を着た聖女が、訊くと騎士ローランドが首を振った。

「村人や他の冒険者に、ギルドを通じてダンジョンの立ち入りを禁じて来たから、このまま何もせず帰るわけにも。一階層のセーフエリアで宿営しよう。ここは、ボスモンスターから食料がドロップするし、携帯食の多少のロスは大丈夫だろう」

 一行は『蘇りのミサンガ』なしで、ダンジョンの入り口から中へ入って行った。
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