5年A組の三学期。

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11 襲撃当日の事件

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今日は待ちに待った五年生の逆襲の日だ。
投げるのは豆ではない。顔や頭に当たると痛いし、片付けが大変だという理由で、豆は丸めた新聞になった。
前にも言った通り、一人でも鬼の面を作れていなければこの襲撃は中止になる。

が、事件は起きた。

えいと、安田、ランの面は未完成だった。
しかも全く手をつけていない状態である。
今は朝の8時19分。あと1分で作れるわけがない。
やがて朝の会が終わった。
先生はえいとと安田とランの顔を見て、みんなに話しかけた。
「言ったよね?前に『一人でもお面できてなかったら全員やらない』って」
重苦しい、嫌な空気が漂う。
先生は淡々と続けた。
「先生は言いました。一人どころか三人もいる!なので豆まきはやりません」
先生は主張を明かす。
「え!!本当にやらないの!?」
驚いてきはちが繰り返した。
それに続いて他の生徒も真逆の声をあげる。
「えーやりたい……」
「やりたいー」
それでも先生の気は変わらなかった。
子供が大人に逆らっても、最終的には大人が打ち勝つ。大人の言うことには従うというのは当然、更にこれは約束でもあるので尚更なおさらだ。
先生は列に目を合わせて言った。
「列さん、どうしますか?」
「え!?」
列は声を漏らす。列は学級委員の一人だ。
「どうしよぅ……」
列が小さな声で呟く。
私はやらないつもりでいた。
この状態で賛成が勝つわけがないと思ったからだ。
それに、やるとなっても私は嫌な気分のまま豆まきをすることになるだろう。
それだけはどうしても回避したかった。この日をずっと楽しみにしていたのだから。
嫌な気分のままするなら、やらない方がマシだと思った。
「じゅりさん。どうしますか?」
先生はじゅりにも目を合わせて同じことを発した。じゅりも学級委員だ。
「独身だと何なので二人で話し合って決めてください。その間に皆さんの意見を聞かせてください」
まず最初にりおが手を挙げた。
「えー、私は作ってない人は置いてって、作った人だけ行けば良いかと思います」
「行くんですか?」
先生が訊ねる。
りおは「行く」と頷いたが、先生は「嫌です」と返した。
本気で行かないつもりなのだろう。このままだと襲撃は潰れて、勉強になってしまう。
次にめいが手を挙げた。
「やめて、勉強をするんじゃなくて6送会の準備を進めたらいいと思います」
「6送会の準備も大事だね」
先生が納得の声を出す。
本当にやめてしまうのだろうか。
私は「やめる」より「やりたかった」の気持ちが山々だ。
私は手を挙げた。少しでも会話を進めなければ。
「……やらない」
私はそれだけ発した。
「うん。約束だからね」
先生はやはりやらないつもりだ。
そして、二人のやりとりが終わった。
じゅりが代表してクラスに告げた。
「やりたいです。面を作り終えてない子は今から作ればいいと思います。二年生も待ってるから……」
先生は黙り込む。
確かに二年生は私たちを待っている。
やめてしまったら、二年生はがっかりするだろう。
「やめたらがっかりするのはみんなだけじゃないよね?二年生もだよね」
先生も似たような発言をした。
そして―
「二年生も楽しみに待っています。……やることにしましょう」
ようやく先生は結論を告げた。
クラスに安堵の声が出る。
こうして、長い重い空気は去った。
その後咲希先生は少し話をした。
「さっき意見を言った人達は偉いよね。あんな空気の中で発言して」
改めて考えてみる。意見を言った子は、先生に説教されて嫌な空気の中、手を挙げて自分の意見を言った。
「でも意見を言わなかった人達は黙って、豆まきやりましょうってなって喜ぶのはちょっとおかしいと思います。授業でも言ってますよね?他人の意見は聞いて自分は言わなーいはズルいよって」
先生はこんな話を続けたが、やがて終わった。

私たちは配られた新聞を丸め始めた。
新聞が大きいので、丸めるのが大変だ。
教室中が音で埋まる。
やがて私たちは新聞作りを終えた。
私たちは鬼の面を赤白防止に貼り付け、体育館の靴に履き替えた。

そして、私たちは体育館へと向かった。
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