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第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み
165.女子高生(おっさん)と妹と小泉いずみと。。。
しおりを挟む「──へ?」
思わずすっ頓狂な声を出してしまう。
それはそうだろう──この脳内に響く声の持ち主はあろうことか俺自身の名を騙ったのだから。
「どうかされましたか……? 御姉様……」
「どうしたの?お姉ちゃん」
様子がおかしい俺を見て、マナもいずみちゃんも心配そうに声を掛けてきた。
とりあえず『何でもないよ』と誤魔化して脳内で語りかけてみる。
(えーと……【アシュナ】は私なんですが……)
──『え……と、私もなんですが……』──
(いやいや……意味がわかりませんけど……)
──『……ですから……私も【アシュナ】なんですよ』──
(………そ、そうですか……どちらの【アシュナ】さんでしょうか?)
──『……普段は異様に呑み込みが早いのになんでこんな時は鈍感なんでしょうか……』──
(………普段……?)
──『ですから、私はあなたが乗り移る前の【波澄アシュナ】です』──
「………………えええええええええっ!!?」
「どっ、どうされたのですか御姉様!?」
「大丈夫お姉ちゃん!?」
思わずリアル声で驚いてしまいとても心配される。
どんなタイミング!?
今、夏休みの日常回だよ!?
ギャグ回の最中にラスボスが突然意味もなく訪ねてきたみたいな感じなんだけど!?
こんな日常回に登場したらダメな人でしょ!?
──『そんな事をわたしに言われても……こちらからしてみれば一年かけてやっと声が届いたんですから………』──
モノローグにまで反応してくる阿修凪ちゃん。これは心の声みたいなものだし当たり前だけど。
阿修凪ちゃんの話によれば……阿修羅が乗り移ってからも常に意識はあったらしく──ずっと声をかけていたらしい。
全く聞こえなかったし、そんな伏線みたいなものもなかったし、こちらからしてみれば完全なる後付け設定だ。
──『なんですか後付け設定って……それより……私あなたの行動をずっと見てたんですよっ!?』──
(そ……それはどうも……リアル『脳内におっさんが入ってきて私の行動を乗っ取り応援しています』だね……あはは……)
──『なにをわけのわからない事を言ってるんですか……』──
「お姉ちゃん本当に大丈夫……? ずっと黙ってどうしたの……?」
現実にマナから問われ、心の中で阿修凪ちゃんと話す──そんな器用な真似を出来るはずもなく、おっさんのキャパシティは限界を迎える。
漫画でよく見る設定が、まさかこんなにも難しいなんて思ってもみなかった。
このままでは絶対いらん事を口にしてしまう──テンパったおっさんは前世で視聴していたアニメの設定を借りて難を逃れる事にした。
「あははっごめんっなんか私っ幽霊が見えるようになっちゃってさー」
「幽霊っ!!?」
その言葉にいち早く反応したのはいずみちゃんだ。
武の精神を培(つちか)った彼女だが──意外にも幽霊が苦手なようで俺に密着して震えている。
「ぶ……物理攻撃が効かないなんて卑怯すぎる相手は苦手なんです……」
「そーいう問題なの……?」
──『あなたには言いたい事が山ほどあるんですっ、私自身の身体はともかくとして……マナを変な道に引き込むのは止めてくださいっ!』──
「ちょっと、わかったから今は止めて。新設定がいっぱい出てきたらおっさん混乱しちゃうから」
「お姉ちゃん……おっさんって……?」
「ああごめんごめんっ! そこにいるのおっさんの幽霊なのっ!!」
──『誰がおじさんですかっ!? おじさんはあなたですよっ!』──
「だからいっぺんに話しかけないでっ!!」
カオスと化した道場ではもはや武の道を学ぶどころではなく……怖がらせてしまったお詫びに、置いてあったカメラでめっちゃえっちな写真を撮らせてあげた。
──『ぅぅ……恥ずかしい……』──
阿修凪ちゃんは自分のえっちな写真が後世に伝わるのをとても恥ずかしがっていて……その葛藤を感じてご飯が物凄くすすんだのはさておき──その夜、改めて阿修凪ちゃんとの話し合いとなる。
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