おっさんの俺が美少女になって高校生からやり直したら人生クッソチョロかった件

司真 緋水銀

文字の大きさ
178 / 268
第5節 女子高生(おっさん)の日常と、いとも愛しい夏休み

166.女子高生(おっさん)と波澄阿修凪

しおりを挟む

〈自室〉

 ──自身と向き合う。
 字面にするととても格好良く感じるが、俺の場合は文字通り……自分の中に目覚めた新たな人格──もとい、この身体の元の持ち主【波澄阿修凪】ちゃんとの会話である。

 隣でカザカちゃんが寝ているため、起こさないよう心の中だけで会話ができるのは非常に捗(はかど)る。
 みんな寝静まった深夜帯……カーテン越しに漏れる月灯りと、脳内に心地良く響く女子高生の声がおっさんを神秘的な空間へと誘(いざな)う。まるで安眠ボイスCDだ。

 改めて……はじめまして阿修凪ちゃん。

──『あ、はい。はじめまして……阿修羅さん……』──

 彼女はとても丁寧に、けれども人見知りしてるかのような小さな声でおっさんの挨拶に返答する。
 とても真面目で思慮深く、奥手で恥ずかしがり屋──彼女の印象はそんな感じだ……そして、きっとそれは的を射ているだろう。

──『あぅぅ……全然そんないい子じゃないです……』──

 考えが筒抜けなので、彼女はモノローグに照れる。
 なんて可愛らしい……妄想でもなんでもなく、女子高生が脳内に住んでいるという現実に、おっさんの股関は熱くなった。

──『こかっ……あのっ、私もイメージを共有してるのであまりえっちなこと考えるのは……』──

 ごめん、できるだけ前向きな検討をするよう善処します。

──『………それで、ですね……おじさん。これまでの一年間……意識はあったのでおじさんの行動を全部見てきたんですけど……』──

 本当にごめん、マジでごめん。

──『……? どうして謝るんですか?』──

 いや……だって、謝るような事しかしてないから……

──『いいえ……逆なんです。お礼が言いたかったんです……ずっと。確かに際どい場面も何度かありましたけど……』──

 ……お礼を言われるようなことをした覚えの方がまったく無いんだけど……

──『ぅうん、おじさんはずっと私がしたくてもできなかった事を簡単に叶えてくれたんです』──

 できなかったこと?

──『……私、こんな顔で産まれてきたことがずっと嫌でした……』

 お嬢さん、それは贅沢な悩みというもので……イヤミにしか聞こえないんだけど……あ、続けてどーぞ。

──『……周りからは可愛いだとか綺麗だとかずっと言われ続けて……私は全然そんなんじゃないのに……まるで「綺麗な人なんだから綺麗な生き方しかしない」みたいな勝手な羨望を押し付けられて……周囲の評価に縛られてるみたいで…………全然、自由じゃありませんでした』──

……………

──『「あの子は可愛いから私なんかが友達になっちゃダメだ」とか「高嶺の花すぎて近寄り難い」とか周りは勝手に私を避けていきました。おじさんの評価の通り……私、人見知りなので自分から声もかけられなくて……友達ができた事はありませんでした。勇気の無い私が悪いんですけど……もうちょっと普通の顔だったら違ったのかな──なんて毎日思ってました』──

 ……それで、アニメやゲームの世界にはまって中二病を発症した?

──『どうしてわかるんですかっ!? 凄いですおじさんっ!』──

 『自分』のことだからね。おっさんの過去もそうだったから……やっぱり、どんな世界でも『自分』はそうそう変わらないもんだ。

──『──高校では変わろうと中二病にかこつけて男の子っぽく振る舞ったりしたんですけど……それでも【氷の女帝】なんてかっこいい名称つけられただけで結局なにも変わりませんでした』──

 ごめん、それをかっこいいと思えるセンスだけは全然違うようだ。

──『それをおじさんが簡単に打ち破ってくれたんです……破天荒だしえっちだしすぐ寝ようとするし他人との距離感狂ってるしセクハラするし鼾(いびき)うるさいし男の子の前で裸になろうとかして倫理観が欠如してるとしか思えないですけど……』──

 罵詈雑言!? 呪詛みたいな羅列がとめどなく溢れてきてるよ!? 本当に恨んでない?!

──『……最初の頃は本当にわけがわからなくて嫌でした。でも今は……おじさんのことが…………おじさんが来てくれて良かった──って思うようになりました。だから……これからも私の身体、使って下さい。けど、たまには私にも使わせてくださいね……? できれば週一くらいで……』──

 そんなシフト表みたいな感じで本当にいいの……?元々キミの人生なのに……

──『だって、今いる友達はおじさんの事が好きで、今いる場所はおじさんが築いたものじゃないですか。きっと私に戻ったらみんな離れていくに決まってますし……小説なんか私書けませんし……』──

 う~ん……このネガティブガール……おっさんの学生(いんキャ)時代の女性verなんだから納得といえば納得なんだけど……きっと「そんな事ないよ」なんて上から目線の同情にしか聞こえないだろう。『自分』の事だからよくわかる。

──『いいんです本当に……素敵な学生生活を私も共有できてるんですから……私じゃ絶対できなかった……夢みたいな生活を……』──

 そんな共有アカウントみたいな……うーん……キヨちゃんに元に戻してもらうにしても、確かに今じゃない方が良さそうだ。

──『』──

…………

──『だからもう……アシュナはおじさんのものなんです』──

 …………もっかいそのセリフ言って貰っていいかな?

──『……なんかえっちな感じがするのでイヤです……それとっ……あのっ………も、もう1つ言いたいことが……』──

 うん、何でも言って。

 しかし、ふと時計を見ると時刻は22時を回ろうとしていた。
 脳内でいい感じに会話を繰り広げていたから段々と眠気が襲ってきた……まったく寝る前の妄想が捗ってしょうがない…………

──『夏休みなのに寝るの早すぎますよ!? これから重要なこと話すんですから聞いて下さいっ』──

 仕方ない、おっさんも寝ながら女子高生の精神体と話すなんて滅多になくて楽しいから付き合おう。

 と、いうわけで就寝時脳内活劇はちょっとえっちな後半戦へと突入する。

──『しませっ………えーと、しないはずです……』──
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

処理中です...