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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD

230.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム⑪~異変3~

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「──はぁ……はぁ……」
「あ……あの、ヒマリさん……んっ」

 人が『欲情』するのは果たしてどんな時だろうか──勿論、人に依りけりだし体調や気分にも左右されるハ●ターハンターの『念』みたいな一筋縄ではいかない厄介な概念ではある。
 満月の時、生理前の時、酔っ払った時……一般的にはこんなところだろうか……おっさんにも数多く存在する。
 女子大生を見た時。
 人妻を見た時。
 雪見だいふくを見た時。
 そして、女子高生という単語を見た時など欲情スイッチは何気ない日常の中に多岐に潜んでいるのだ。

 では──うぶな女子の高校生が突然、同じ女子高生の友達に『おじさん』と言いながら迫ってくるタイプの欲情にはどんな可能性が込められているのだろうか。

①その友達が実はおじさんの時
②そーゆー疑似プレイの時
③幻覚を見ている時
④特殊性癖(とくしつけい)

 ──などと、先程神様の国で絞り取られて超賢者モードになっている俺は冷静に物事を見つめていた。
 やはりどう考えてもおかしい、ヒマリさんは(知る限りでは)こんな積極性のある子じゃないし、トイレで厭らしい事をしてはいけないと弁えている分別のある娘だ。

「あの……ヒマリ、何かあった……?」
「ふぇ……?……うーん……なんだろう……アシュナちゃんを見てたらなにか……ふわふわした気持ちになって~……」

 おじさん呼びしていたのに既にアシュナ呼びに戻っている。混乱の状態異常にでもかかっているのだろうか。

「なんか…………アシュナちゃんに救(たす)けられたような……守ってくれて好きになってから想いを抑えきれなく……あ、あはは……これ夢の中のお話だった~」
「………え?」
「あ、あのね……おかしな夢だったんだけど……アシュナちゃんが男の子でぇ…………ナイトみたいにわたしを助けてくれて………『また、救いに来る』って言ってくれてぇ~……」


 ヒマリの発言に、私は虚を突かれる思いがした。
 ネットでよく使われる意味じゃなく──自分の愚かさに、どれだけ自分が馬鹿野郎か気づいた。

 そうだ……俺は約束してたじゃないか、別の世界のヒマリと。
 何故、別の世界の記憶をこの世界のヒマリが有しているのか──なんてこの際どうでもいい。

『必ず、君をまた、救いに来るから』

 VRで高原からヒマリを助けた時………あの時は何度でもヒマリを助けるつもりだったのに。
 たとえどんな世界線だろうとVRという特別な能力を使えば運命は変えられると意気込んだはずなのに。

 それが何だ……消えると神様が決定したからしょうがないと簡単に諦めた。
 足掻くのはみっともないから──足掻いてもどうにもならない人生を送ってきたから……理解の良い振りをして、『おっさんだから』とかこつけてカッコつけて格好つけた。
 約束もなにもかも忘れて無責任に悟った。

 だけど、俺が消えたら無数の可能性のヒマリはどうなる?
 仮に阿修凪ちゃんに能力が残るとしても、彼女に全てを託して消えていいのか──いいわけがない。
 約束したのは俺自身なんだから。
 これは、俺の物語で、俺が交わした誓いなんだから。

 もう消えると言われて、それも神様から、だからどうしようもなくて──だったら何だっていうのか。
 格好悪くたって、無様だって、みっともなくたって、恥知らずと言われたって、冷たい目線を向けられたって、どっちつかずと非難されたって、最低最悪と罵られたって、泥を啜(すす)ったって、這いずりまわったって──なんとなくでも念のためでもなんでもいいから生きようと模索してみろよ。諦めた振りしないで。

 そんな生き方──得意技だろ。
 卑しく雑でゴチャゴチャした下品で品の無い品位に欠ける猥雑で尾籠で尾篭で粗野で下劣で野蛮で下種で低俗で卑しい下卑た卑俗な品の悪い品性が卑しくはしたなく下等で俗で下衆っぽく野卑でいやらしく悪趣味で美しさの欠片も無い──おっさんなんだから。


「………………………めらぎ、ヒマリ……俺……やっぱり消えるわけにはいかないみたいだ。本当は……消えたくなんかないみたいだ。……気づかせてくれてありがとう」
「………ふぇ?」
「どうなるかわからないけど……精一杯もがいてみるよ。それで、また……必ず戻ってくるから」
「……………」

 まずはあのダメ神夫婦となんとかして話しをつけなければ。呼び掛けても応答がなければ……沖縄のマジメさんやミシェルちゃん達に連絡して神の社に出向いてもらって何とかならないものか……阿修凪ちゃんが起きて身体の主導権すら無くなる前に手を打たなければ。

「………やっと、本音を口にしたどん。それが必要だったんだドリュー。新しい世界が、今、拓かれたよ」

 決意を口にした途端、ヒマリがバグった。

「あ、ちなみにヒマリちゃんじゃなくてキヨちゃんだよ~。【娚人】の能力は他人の意識をずらして誰かに成り代わる事もできるんだよ~。さ、行こう」

 ヒマリだと思っていた人物が急に姿を変え、俺の手を引いて光の中へと導く──様子が変だったヒマリは奥さんのキヨちゃんが化けた姿だったらしい。

 て、いうかまたトイレから何処かに連れてかれるんかい──色々と巻き起こってる混沌な展開に脳が混乱するが……おっさんが人妻と唇を重ねたという事実により、のじゃロリキヨちゃんの脳も破壊されていることだろう。
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