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二章
17
しおりを挟む城へ到着するとセドから夕食までの散歩の誘いを受けたが、明日までの課題を取り組まないといけないことを伝えると「課題なら……………仕方ない」と残念そうに自室へ戻っていった。
本当に申し訳ないが、練習しないといけないのが現実だ。
「でも、もう内容は覚えている訳ですよね。これ以上何をするんですか?」
自室に戻り練習室へ向かうことを告げると、キナは不思議そうに聞いた。
「ここからが大事なのよキナ。内容を覚える、いわゆる振りをわかってはい終わりじゃないの。演目の理解を高めて、表現方法を考えないと」
「表現?」
「キナ、舞台は見たことある?劇とか」
「ありますよ!」
「その役者さん達は真顔で演じないでしょ」
「はい。役に入り込んでますね」
「それと同じ。舞踊も表情が大切だし、言葉を使えない分動きで表現しないといけないから」
「なるほど……奥が深いんですね」
舞踊という文化をまだ振れたことのないキナにとっては未知の世界だと思う。
集中する為に、部屋で一人になる。
演目についての理解はある程度できているが、それを表現へ移行するのが至難の技だ。
ジェシカ先生が相当実力のある人だから、怠ければすぐ見抜かれるだろうし演目への理解が不十分だったり、練習不足であることもわかるだろう。
今回の課題で失敗したら「留学生だから」と言われてしまいそうで怖い。留学生でもできることを示したいし、国は違えど舞踊という文化を愛する気持ちは同じことを課題を通して伝えたい。
気合いをいれて、練習へと取り掛かった。
頭のてっぺんから足の爪先まで神経を尖らせて、一つ一つの動きを入念に確認していく。そこに表現を乗せながら調整していく。音楽を聞いて頭を悩ませながら数時間、練習に没頭した。
「ここはこうで……」
ノートに書き留めながら練習を進める。
「こっちの方が良いか」
「いや、前の方が良かったよ?」
不意に声がして、そっちの方を向けばニナ先生が立っていた。
「先生!どうしてここに?」
「シンが仕事関係で王城に来たんだけど、付き添いを頼まれてね。シンは忙しくて会うことが叶わなかったんだけど、たまたま陛下にお会いしたらシーナが今練習してて、時間があれば練習室に顔出ししてはどうかと提案されてね。まさか陛下からそう言われると思わなかったから驚いたんだけど、ありがたく提案を受け入れたというわけ」
「わざわざありがとうございます」
「いやいや。元々シーナに会えるかなと思ってシンについて来たから」
「そうだったんですか」
「うん。まだ入学式だけど、大丈夫か心配で」
優しく笑うニナ先生にお礼を告げ、練習に付き合ってもらうことになった。
「先生、そう言えば」
「どうしたの」
「舞踊で有名なジェシカさんをご存知ですか」
「もちろん。生きるレジェンドだから」
「その方が担任でした」
「え、詳しく」
そこからジェシカさんが担任になった経緯を話すと、今度はニナ先生によるジェシカさんについての話……最早講座が始まった。
一日で、ジェシカ先生に関する凄い情報量を得られた気がする。
その後しっかりと練習にも付き合ってくれた先生には感謝しかない。
応援ありがとうございます!
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