幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第1章

驚愕

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「それは本当ですか!」
凄い勢いで聞かれてレナードは困惑した。
ヘルマンさんの時にも驚いたが、ギルド長ほどではなかった。
「はい。うちにいるコッコのルゼが言うには、庭にいた魔物であるミミズもどきを間違えて食べたところ、身体が楽になったとか。
他の魔物の虫も食べた時も同じだったため、普通の虫より素早いから捕まえるのは大変だったが、食べ続けたら自分だけ変異種で成体になれたというので試してみました。
ちょうど幻獣の幼体を保護して、養い親の幻獣がいるため、魔物の肉や魔性果物を用意していたのでその日から毎日少しずつ食べさせました。
鳴き声も強くなり、食事の勢いも良くなり、調子を崩すことも減りました」
「エドウィン、素晴らしい発見だと思いませんか!!」
「あぁ、変異種は伝書屋以外でも、無事成体になれば賢く強い個体になるため重宝するが、生存率が著しく低かった。
だが、養殖業のように変異種が要らない業種の方が生存率が高いのがネックだったが、まさかその理由が放牧にあったとは!」
「でもギルド長、あくまでもうちのコッコと鷹の雛に効果があるように感じただけで、それが正解なのかはわかりません」
「それはこれから検証はするから大丈夫です!
それよりこのことが本当だったら、変異種が欲しい産業にとっては画期的な革命です。
ヘルマンさんのところ以外にも、ギルドが懇意にしている業者で極秘裏に検証を始めましょう!」
興奮状態で目を爛々とさせて熱弁する様子にレナードは引いていた。
「私のところは許可が下り次第、餌を変えれるように手配しております。
流石に民間の仮親さん達にはまだ頼めませんが、施設内の雛達は直ぐに実践します。
そうだ!冒険ギルド長にも話しをして、魔物の虫の採取依頼もしないと!」
「ヘルマンさん、今から冒険ギルドへ行きましょう!
これは冒険ギルドにとっても有用な情報ですが、依頼から検証が終わる前に漏れてはいけない!
副ギルド長、誰か冒険ギルドに使いを!
そして協力してくれる業者や個人のリストアップに必要な資料を直ちに集めてくれ!」
慌ただしく副ギルド長が部屋を飛び出して行く。
ギルド長とヘルマン氏は計画に必要な情報を書き出している。
副ギルド長以外にも何人かが資料を持って入室し、専属担当を決めたり、リストアップしたりと、レナードを置いて次々と進んでいく。
 冒険ギルドから在室の返事が来ると、ヘルマン氏と共にレナードも冒険ギルドへと連れて行かれて、あっという間にギルド長の部屋へ通される。
そして商業ギルドと同じ説明を繰り返す。
商業ギルド長ほどではなかったが、冒険ギルド長も興味津々で、養殖業者からの変異種の引き取りを強化すると宣言。
魔物の虫を採取する理由を考えなければと、乗り気だった。
「いやー、レナードにコッコの変異種を引き取ってもらったのがこんな結果になるなんて驚いたが、これが本当なら魔物の虫駆除関連の依頼も塩漬けにならずに済むし、危険が少ないから未成年の冒険者の仕事も増えるな」
その後ギルド長同士で何やら相談していて、『あいつも巻き込もう』などといった怪しい単語も漏れ聴こえて来た。
「あの~、魔物の虫じゃなくても魔物や魔獣の肉や魔性果物でも良いらしいです。
あとある程度大きくなれば、魔性果樹園や幻獣が食事する場所などに連れて行って、魔素や精気などを吸収させても良いみたいです」
「誰か魔性植物園の園長を呼んで来い!」
「えっ「はい!」」
レナードの声に被せるように職員が返事をして部屋を飛び出していった。
 結局魔性植物園の園長も加わり、商業ギルドと冒険ギルドの3者協定が結ばれ、秘密裏に変異種育成計画の検証実験がその日の内に決まった。
魔性植物園は魔物の虫の駆除と、人族には売れない果物の処分と、増え過ぎると困る魔素の管理が出来ると大喜びだったし、変異種の益虫にも応用出来るかも知れないと、専属職員も用意すると意気込んでいた。
 元気に育った報告も兼ねてのちょっとした情報のつもりが、大ごとになって呆然と冒険者ギルドのソファに座るレナードだった。

しかし後にこのことにレナードが深く関わることになるとは想像もしていなかった。

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