幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第6章

状況説明

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会議室の中には救助隊の服を着た人と、ギルド職員らしい人達が数人が顔を寄せ合う様にしていて、机の上に置かれた紙の様な物に書き込んだり、指差していたりしていた。
「ギルド長、救助してくれた方をお連れしました」
声を聞いてこちらに歩いて来た大柄の竜人族が目の前に立った。
「私がこのダンジョン支部の冒険者ギルド長だ。先ずはこの度は重傷の冒険者を救ってくれてありがとう」
「薬師で幻獣士ギルド長のレナードと申します。怪我人を助けるのは当然のこと、礼には及びません」
「なんと、今話題の幻獣士ギルドの方でしたか。しかし怪我人を保護することは出来る者は居ても、治療や救援を呼ぶまで出来る者はそう多くはありませんよ」
「私が薬師で、この子達幻獣と契約出来たおかげで、治療魔法が血止め程度まで出来る様になっただけです。
応急的な延命措置が出来ただけで、傷口を治せた訳ではありませんから」
「いや、直接の治療は仰る通りですが、大量の薬類も預かったおかげで、大変助かりました。実は少し前に事故があり、大量に使用してしまいまして足りない薬があったのですよ」
「なるほど、では全種類1つだけ残していただければ、必要なだけお譲りしましょう」
「かたじけない。
発注した薬類が届くまでに必要になりそうな分だけ売っていただきたい。
誰か薬の担当者を呼んで来い!」
机の方にいた職員らしき人が飛び出していく。
「ではこの場で帰還報告は処理します。後ほど買取担当者を寄越します。お話しを聞かせていただいても?」
「この国のダンジョンは初めてで、しかもこの子達と初めてのダンジョンでしたので入り口近くの3階層を1周したら戻る予定でした。
2階層までは問題なく進み、狼犬の兄弟と麒麟が勢い余って先に3階層に降りてしまい、救援を頼んだ鷹をストッパーとして追わせて、他の子とゆっくり進みました。
降りたところで待っている様に指示したはずなのに気配がなく、降りきった時に鷹が戻って来て異変のために居なかったと知りました。
先導されて駆け付けたところに巨大なスライムが居て何かを包み込んでいるのを発見しました」
「それがあの従魔のスライムだったと」

助けを求める念話が聞こえた麒麟と
異常事態に気付いた狼犬達が駆け付けた時はスライムと包まれた人だけだったこと。
重傷を負った理由は不明であること。
傷口からの出血を抑えるために従魔のスライムが主人を包んでいたと念話で聞いたこと。
治療中に周囲を幻獣達に探索させたが、それらしい報告はなかったこと。
スライムが傷口の表面を少しだけ溶かして大量出血を抑えてくれた上、意識を失わせて動かない様にしたと告げられたこと。
負傷の範囲が広くて一度では完全に出血を止めることが出来ずに、安全な場所を探して再度治療したことなどを順を追って話した。
「ではその場所では戦闘の跡などはなく、スライムが主人を眠らせたから意識がなかったから何が起こったかは不明で、ダンジョンが流れた血の跡を吸収したくらいの時間が経っていたという事か」
「担架もなく移動させると傷口が開いてしまうため、スライムに包んでもらって馬に乗せて移動しました。
移動後に4匹に周囲の警戒に出てもらい、私も少し休憩してからもう一度酷い部分の治療をして全員が戻って来るのを待ちましたが、
麒麟が呼んでも返事がなく他の子に探しに行ってもらいましたが見つからず。
そのため救援要請に鷹を飛ばして、安全と思われる2階層のセイフティエリアに移動して救援隊を待ち引き渡しました」
「その後に麒麟は見つかったのか?」
「いえ、借り受けた中精霊が闇の精霊の気配があり、別の場所に飛ばされたらしいというのでその後仕方なく帰還しました」
「…そうだったのか」
会議室は重い雰囲気が漂っていた。
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