世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

文字の大きさ
33 / 43

4ー4

しおりを挟む
 結局、その後も葬儀は続いた。
 というのも、今回の襲撃で亡くなったのはタンザの娘だけではない。他にも村を守るために戦い、散っていった若い衆がいたからだということだ。

 一人一人を綺麗に土葬というわけにはいかないが、それでも全員を埋めて送りたいという村人たちの頼みを聞き入れた結果だ。

「……良いのか? もうすぐオークが来るというのに、葬儀を続けさせて」

 平原から少し離れた場所に生えていた大木。
 それに背中を預けて葬儀を見ていると、ゾイトがいつの間にか傍にやって来ていたゾイトがそう聞いてくる。

「良いんだ。あの人達の意思だしな。それに、殺されたまま村に放置されてたんじゃ、死んだ人も浮かばれないだろうし」

「だから、あぁしてフィーリネに浄化魔法を使わせてるのか?」

「村人たちも、自分たちを守って死んだ奴に殺されたくないだろうしな」

 この世界での死者は
 いや、正式には魔物に生まれ変わるといった感じだろうか。

 魔物や病によって倒れ伏した者は、満足のいく生を全うできなかったことに対して、悔しさや寂しさを覚える。

 そして、その感情が自分より長く生を受けている者たちへの妬みや、憎しみへと変貌し、死した身体が生者を襲うアンデットと呼ばれる魔物へと生まれ変わってしまうのだそうだ。

 死者の魔物化を防ぐ方法はただ一つ。
 この世への未練を無くさせて、無事にあの世へと送り届けてやるだけ。それが、今フィーリネがやっている浄化魔法だ。

「オークと戦う前に敵を増やすわけにもいかない。かといって、コーラルに頼んで遺体を全部焼き払わせるわけにもいかない。だから、フィーリネちゃんには悪いけど、少し頑張って貰わないと」

「……それだけか?」

「……」

 片目を開けてこちらをジト目で見据えるゾイト。
 そんな彼女に肩をすくめ、苦笑して見せると

「あそこに埋まってるのは、親より先に死んでしまった子供達だ。中には成人しているやつもいるだろうが、大半は親より歳は下だと思う」

「そうだな……」

「そんな子供達を見送ってあげたいって、親心を尊重してあげたかっただけだ。知らない美少女に送られるのは良いが、親が全く顔を見せないんじゃ浮かばれないだろうし」

「ふん。貴様は甘いな」

「そういう甘い考えの人達が住む場所が故郷なもんでね。そればっかりは仕方ない」

 そう言って、俺は視線を葬儀を行う村人の方へと向けた。

 穴を見下ろし涙を流す者。膝をついて泣き崩れる者。親の膝に抱き付いてブルブルと震える年端もいかない子供の姿。
 視界に映る全ての人に共通するのは、亡くなった若い衆たちの死を嘆き悲しんでいるということだ。

「俺が死んだ時も、母さんや父さんは泣いてくれたのかな……」

 思い出すのは、独り立ちする前に俺を見送ってくれた両親の顔。

 一人で生きていくことを心底心配してくれた母さん。そんな妻に対して『暁人は大丈夫だ』と信じて疑わず背中を押してくれた父さん。

 そんな二人は俺が死んだ時、どんな顔をしていただろう。

 あの村人たちのように涙を流してくれたのだろうか。それとも、子供を救って死んだ息子のことを誇りに思ってくれたのだろうか。
 少なくとも悲しませはしただろうが、両親は俺の死をどう思ってくれたのだろう。

 そんなことを考えていると、辛く悲しい気分になった。

「どうした?」

「いや、なんでもない……」

 どうやら思考の渦に浸っていたらしい。
 ゾイトの声に短く答えて誤魔化すと、流れ出ていた涙を拭うと前を見据える。

 そこには、フィーリネが神妙な表情を浮かべて立っていた。

「暁人さん。大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だよ……。ちょっと、あの人達を見てるとさ、自分の親のことを思い出してしまって……。それより、フィーリネちゃんは大丈夫か? 結構魔力を消費したろ?」

 ワザと明るめに言ってみれば、彼女は胸に抱いたコーラルを強く抱き締める。
 瞬間、コーラルから『グェ!?』という何ともおかしな悲鳴が聞こえてきたが、彼女はそれに気づかないままに

「すごく……辛いです……」

「悪かったな、無理を言って……」

「いえ、魔力は全然残ってるんです。だから、身体は大丈夫、なんですけど……心が……辛いです」

「そっか……」

 苦しげに口にするフィーリネ。
 浄化魔法は言ってしまえば、死者に語りかけてあの世への道を示す魔法だ。言葉ではなく、心を使って……。

 そして、おそらくフィーリネは心を通して死者の声を聞いたのだろう。
 辛さ、苦しさ、怖さ。そして、親と別れる悲しさを……。

「皆さん凄くあっさりと逝ってしまったんです……。まだ、生きたがっていたのに……やりたいことだってたくさんあったのに……。自分の死を簡単に受け入れていきました……」

「そうか……」

 彼らは、おそらく自分たちの行動に後悔などしていないのだろう。

 例え自分が死んだとしても、親を悲しませたとしても。自分の選択が間違っていたとは思わない。
 だからこそ、彼らは本当にあっさりと逝ったんじゃないだろうか。

「暁人さん。今回の依頼、絶対に達成しましょう……。初依頼だからというわけではなく、あの人達の想いを無駄にしないためにも!」

「あぁ。そのつもりさ」

 目端に涙を浮かばせた彼女は、強い眼差しでそう口にする。
 俺はそんな彼女に強く答えると、それから苦笑して指先を彼女の胸元へ。

「それより、コーラルを放してあげたら? 凄く苦しそうだけど?」

「……あぁっ!?」

 それまで強く抱きしめられていたコーラルは、豊富に実ったフィーリネの胸に締められ泡を吹いていた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...