世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク

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 口から覗く小さな牙と、小動物特有の可愛らしい円らな瞳。
 自分の体格よりも大きな鎧のようなものを見に纏った姿は、服に着られた幼稚園児のよう。

 そんな二足歩行型ウリ坊達は、木々の影から堂々と姿を現わすと

「整列ーっ! みんな、綺麗に集まってーっ!」

「「はーいっ!」」

 何とも和やかな雰囲気で敵前にて整列を始めた。

 まるで、運動会の開会式。クラスのリーダー的ポジションの子の幼げな指揮で、どうにかこうにか形だけは並べましたみたいな。
 そんな、見ていて微笑ましい整列模様だ。

「……絶滅したとは言え、流石はオーク。他の魔物にはないあの統率力は厄介だな……」

「……!」

 だが、どうやらそうして和やかなムードで観察出来ているのは俺だけのようだ。

 オークの群れを見据える二人には余裕が感じられない。ゾイトに限っては、引き攣った笑みに加えて冷や汗をかいている。
 二人からすれば、あの幼稚園児の整列が軍隊にでも見えるているのだろうか。

 そうこうしているうちにも、オークたちの整列は順調に進む。
 幼稚園児とは言ったけれど、整列する速さはその比じゃない。数舜のうちにも、乱れていた隊列が見事というほかないほど綺麗な列へと変化。

 そして、そんな隊列の戦闘に立っていたオーク――さっきから、指示を飛ばしていた子が一歩前に出ると

「整列終了ー! それでは、改めまして、お兄さん、お姉さん、こんばんわー!」

「「「……」」」

「あれー? 聞こえていないのかなー? こんばんわー!」

 困ったように笑うオークは再度挨拶してくるのだが、当然俺たちが返す言葉など存在しない。
 相手はあんな可愛らしい姿ではあるが魔物だ。

 仕草や言葉遣いが子供のようではあるが、それ故に感じる危険さというものもある。
 何せ、子供というのは好奇心旺盛なかつ残忍な生き物だからな。善悪が定まっていない状態の子供は、本当に何をするのか分かったものじゃない。

 子供っていうのは、『面白いから』とか、『気にくわないから』という理由で平気で生き物を殺すのだから。

「むぅー、無視は酷いと思いまーす」

 ぷくーっと頬を膨らませて、不愉快さを示すオークたち。

「あんなこと言ってるぞ?」

「あどけない仕草や言葉に騙されるな。奴らはあれでも凄まじい力を有している。――数千年前、世界中の人間を殺して回り、一番被害をもたらしたとされる化け物だ」

「マジで……!?」

「大マジだ。油断したら、死ぬぞ……?」

 小さな体格と、申し訳程度の鎧に身を包んだ魔物。
 姿だけを見れば大したことのなさそうな存在だが、ゾイトやフィーリネが警戒するような相手だ

 ゾイトの言うように、油断するとまずいのかもしれない。

「とにかく、プランは変わらん。ボクたちでオークを倒す。それだけだ」

「わかった」

「……!」

 ゾイトの言葉に頷き返して、いつでも動けるように身体の力を抜く。
 昔、テレビで見たことだが、変に身体に力を入れた状態だと一つ一つの動作に力みが生じて、動きが遅くなるらしい。

 そうならないようにするには、適度な脱力――つまり、力を抜いてリラックスしておくことが大事なのだそうだ。 
「さて……ボクたちは、貴様らと馴れ合うつもりはない。一応、冒険者として雇われた身なんでな。出てきてもらったばかりで悪いが、早々に退場してもらおうか!」

「……お兄ちゃんたち、冒険者だったんだぁ! どうりで力が増さないわけだね!」

 ゾイトの低い口調に全く動じていないオークは、笑みを浮かべたまま明るく言ってのける。

「じゃあ、僕達を見て怖がってくれたり、怒ってくれたり、泣いてくれたりする協力的な村人さんは、お姉ちゃんたちの後ろかな~?」

「……さて、どうだろうな? 知りたきゃ、俺らを倒して行くんだな」

「……!」

 拳を掲げて臨戦態勢。
 いつでも動けるように腰を落として準備していると

「うんっ、わかった!」

 聞き分けの良い子供のような返答をして、リーダー格のオークは踵を返す。
 それから、自分の後ろに控えていた他のウリ坊集団に向けて手を伸ばして

「みんなーっ! 戦いごっこの時間だよ! 獲物はねぇ……目の前のお兄さんたちと、その後ろにいるはずの村人さんたち!」

「「「「おぉー!」」」」

「殲滅だっ! みんな惨たらしく殺して、力を蓄えちゃぉーッ!」
 
 まるで、仲間を鼓舞する演説のようだ。
 そう思ったと同時に、オークが振り向く。その手には、いつの間に用意したのか体格に似つかわしくないこん棒が握られている。

 それをこちらに向けて振り下ろすと

「突撃ー!」

 遊び感覚で幼稚園児が言うように、軽い感じで言い放った一言。
 それを皮切りに、それまで後ろに控えていたオークたちが、雪崩のように押し寄せてきた。

 傍から見ればウリ坊の集団移動。
 しかし、二足歩行なうえに手には武器。楽しそうに笑みを浮かべているけれども、その目はギラギラとした手の付けられないほど危険な肉食獣を思わせる瞳をしていた。

 そんなウリ坊たちを迎撃するようにフィーリネが走る。
 ゾイトもそれに続いて走り出した。

 ならば、俺もと地面を蹴ってウリ坊の集団へ突っ込もうとした俺だが、そんな俺の良く手を阻むように眼前に迫るこん棒。

「――うぉッ!?」

 慌ててのけぞって回避。
 そのまま地面に手をついてバク転。距離を取り、先程自分がいた場所を見据える。

 そこには

「ぶー。そこは当たってくれても良かったじゃない!」

 ふくれっ面をしたウリ坊のリーダーが、肩にこん棒を担いで立っていた。
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