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暴走する「反差別」。

5.女装男を女性と言わなければ差別。

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「LGBT先進国」では、手術を受けずとも性別を変更できる。結果、身体的に男性の「女性」や、身体的に女性の「男性」が次々と生まれることとなった。

女性を自認するを「トランス女性」と呼び、男性を自認するは「トランス男性」と呼ぶ。「トランス〇〇」の「〇〇」は反対の性別なので注意しなければならない。身体が男性でも「トランス女性」であり、身体が女性でも「トランス男性」だ。

性自認に即さない扱いを性別錯誤ミスジェンダリングという。「彼」「彼女」という代名詞も性自認に基づかなければならない。女子トイレや女性用シャワー室・女子更衣室・女子刑務所などの女性スペースを「トランス女性」に使わせないことも性別錯誤ミスジェンダリングだ。

イギリスでは、二〇一五年から二〇一九年のあいだに性犯罪が八十四パーセントも増えた――「トランス女性」の行なった性犯罪が加算されているからだ。

越境性差トランスジェンダーに配慮した特別な言葉も遣われている。

二〇二〇年のこと――あるメディアが、「意見:月経のある全ての人にとって、新型コ ロナウィルス以降の世界がより公平なものになるために」という記事を載せた。

「月経がある人」も越境性差トランスジェンダーに配慮した言葉だ――「トランス女性」に月経はないのだし(射精する人はいるが)、逆に「トランス男性」の中には「月経のある人」がいるのだから。

これに対し、『ハリー゠ポッター』の原作者・J゠K゠ローリングがツイッターでこう反応する。

「『月経のある人』ね。以前はこの人たちを指す言葉があったと思うんだけど、何だっけ? 誰か教えてくれない? ウンベン? ウィンパンド? それとも、ウーマッド?」(女性ウーマンをもじった言葉である)

このツイートは、「越境性差トランスジェンダーに対する差別」として炎上する。マスコミは、「ローリングが反トランス発言を行なった」と集中砲火を浴びせた。

ローリングはこう反論する。

「もし性別が現実じゃないなら、同性同士で惹かれることだってない。もし性別が現実じゃないなら、世界中の女性たちがこれまで生きてきた現実が消し去られてしまう。私はトランスの人たちとも顔見知りだし、愛している。けれど性別の概念を消し去ってしまえば、自分の人生について有意義に議論する機会を多くの人から奪ってしまう。真実を語ることは悪ではない。」

しかし、炎上は止まなかった。

ハリー゠ポッターを演じたダニエル゠ラドクリフは「越境性差トランスジェンダーのアイデンティティや尊厳を踏みにじっている」とローリングを批判、ハーマイオニーを演じたエマ゠ワトソンも「越境性差トランスジェンダーの人々は自分の性別を正直に述べたまでだ」と批判した。

二〇二一年――ローリングのつぶやきは再び炎上する。

あるサイトが、「レイプ犯を警察が女性として記録することの不条理さ」という記事を載せた。それを紹介する形でローリングはこうつぶやく。

「戦争は平和である。自由は隷属である。無知は力である。あなたをペニスで犯した人間は女性である。」

言うまでもなく、ジョージ゠オーウェルの『一九八四』のオマージュだ。作中に登場する独裁国家は、「自由」や「平和」といった言葉の意味を捻じ曲げて民衆を支配している。

ローリングには再び非難が殺到した。

加えて、陰湿な苛めが始まる。

『ハリー゠ポッター』には「クィディッチ」というスポーツが登場する。これを、現実世界で作ってプレイしていた人々もいた。だがローリングの発言を受け、現実の「クィディッチ」は名前を変更する。

また、イギリスの中学校は、ローリングの名にちなんだハウス名を変更した。映画版『ハリー゠ポッター』二十周年を記念した番組ではローリングに出演の出番はなかった。

このようなことは、地球の反対側のことばかりではない。

昨年十一月、ある人物がツイッターでこうつぶやいた。

「うーん、これ強制的に消さないとアカウントロックするよーって対応された。ペニスがある人も女湯オッケーって Twitter では言わないとダメらしい」

ツイートには、削除を求められたツイートのスクリーンショットも載せられている。


これが、「性同一性を理由に暴力を助長したり脅迫・嫌がらせを行なう行為」として認定されたのだ。

ツイッター本社は、アメリカのカリフォルニア州にある。カリフォルニア州法の基準で「差別」となることは、日本で行なわれたツイートでも「差別」として認定されるのだ。

「LGBT先進国」では、「性別」の定義は既に変わった――「身体」ではなく「自認」のことになったのだ。

当然、日本のLGBT活動家も歩調を合わせている。

一年ほど前のこと――私のTLに次のツイートが流れてきた。

「娘氏がやってる文章題に『10人中2人が女の子です。男の子は何人いますか?』って言う問題が出てきて娘氏は分からなかったんだけど、確かにこれはアメリカではまず出てくることはない問題だなあと思った。教え方が難しい。」
https://twitter.com/nobu_k/status/1385695496933543938?s=21&t=4-uOnud16J1XFn6s061y3Q

何人だと答えるのが正解だと読者あなたは思うだろうか。

これに対して、ある人物がこう引用RTする(現在は削除)。

「これは果物に置き換えたら、『10個中2個が🍎です。みかんは🍊いくつありますか?』という問題だよね? 『みかんは8個』で正解。10人中2人女性なら8人男性なのでは?
身体性別で考えて良いよね。これが違うなら医療の統計も取れなくなるし意味がなくなる。なぜリプ欄も引用も混乱しているのか。」

ところが、そんな彼の意見を批判する人々が次々と現れたのだ。




彼らの考える「正解」とは、「男の子が何人いるか分からない」だ。

性別が「自認」であり、自己申告で決まるものなら、身体など関係がない――中性だろうが両性だろうが無性だろうが、「性別」は無数に存在する。

「そんな性別は科学的に存在しえない」と言う人もいるだろう。だが、「LGBT先進国」では、「射精する女性」という科学的に存在しえない存在が生まれた。

性別自己申告制は日本でも提案されている。賛同しているのは、立憲民主党・共産党・社民党などだ。

しかし、市井の女性たちの反撥は激しい。何しろ、「女と言ったら女」となり、「男と言ったら男」となるのだ。当然、男女で使い分けられてきたスペースや女性保護政策も崩壊する。社会が混乱するばかりか、女性にとって著しく不利となり、安全が脅かされてしまう。

ところが、ここ三、四年、危機感を覚えて声を上げている人々に対し、「LGBTへの差別」を口実とした執拗な攻撃が続いている。

反対派を罵る言葉に「TERFターフ」がある――これは Trans-Exclusionary Radical Feminist(トランス排除的ラディカルフェミニスト)の略だ。たとえば、「ペニスのある人は女湯に入るな」という言葉も、「トランスフォビア」であり、「過激派フェミニスト」による差別発言である。

ある活動家はツイッターでこのように言っていた。


また、ある人物は、ツイッターで議論の最中に次のように言っていた。

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